日本代表の9月シリーズ、アメリカ戦で先発出場した久保建英は、新天地レアル・ソシエダでも出番を得ている。スペイン現地紙「AS」で精力的に取材する番記者にここまでの「タケ・クボ評」を記してもらった。(翻訳:工藤拓)

 タケ・クボはレアル・ソシエダ加入から2カ月も経たないうちに、イマノル・アグルアシル監督が重用する前線の“便利屋”となった。

 その間、彼は献身性や新たな環境への適応力、プレーのクオリティーといった要素だけでなく、試合展開に応じて監督から求められる様々な役割をこなすことで、我々を驚かせてきた。

ホームタウンにおける序盤の主役の1人に

 今季これまで出場したラ・リーガとヨーロッパリーグの8試合において、クボはあらゆる攻撃的ポジションで起用されてきた。メディアプンタ、インテリオール、左右のサイド、2トップの一角。これらのポジションで見せてきたプレーレベルの高さには、多くの人々が驚かされたはずだ。

 同じく新加入のモハメド・アリ・チョがそこまで目立っていないこともあり、クボはサン・セバスティアンにおけるシーズン序盤の主役の1人となっている。

 前回の記事でも書いたが、クボはプレシーズン中から非常に良い印象を残していた。練習試合を通してイマノルのプレーモデルをよく理解し、開幕に向けて万全の準備を整えただけでなく、開幕戦から先発の座まで勝ち取っている。

2トップの一角で結果…間違っていたのは我々だった

 ヌエボ・ミランディージャで行われたカディスとの開幕戦で、クボは誰もが予期せぬヒーローとなった。プレシーズンを通して好調を維持し、確かな自信を持ってデビュー戦を迎えたものの、試合前の先発予想に彼を含める者は多くはなかった。

 しかもこの試合でイマノルは、2トップの一角にクボを抜擢した。練習でも実戦でも一度も試しておらず、彼の特性には合わないと考えられていたポジションながら、指揮官は何らかの可能性を感じていたのだろう。

 実際、間違っていたのは我々の方だった。

 ぶっつけ本番での起用に応えたクボは、この試合で唯一のゴールを挙げた。ディフェンスラインにぽっかりと空いたスペースへ抜け出し、ミケル・メリノが送った縦パスを見事なコントロールからフィニッシュに持ち込んだあの日のゴールは、過去数シーズンに渡って伸び悩んできた彼を解放し、翼を与える重要なきっかけとなった。

 翌週のバルセロナ戦でもスタートからピッチに立ったクボは、試合には敗れたものの特筆すべきプレーを見せた。アレクサンダー・イサクのゴールに関与しただけでなく、レアル・ソシエダが良い攻撃を仕掛けたシーンには、ことごとく彼の両足が絡んでいた。

 再び2トップの一角としてスタートしたこの試合では、流れの中でメディアプンタとしてもプレーした。

 彼のユーティリティー性に気づきはじめたイマノルは、続くエルチェ戦でその確認作業を行っている。この試合で指揮官はストライカーを起用せず、“モモ”チョとクボの2トップを採用。2人の「チキティネス(ちびっこたち)」はエルチェの守備陣を混乱に陥れ、1-0の勝利に貢献した。

“便利屋クボ”の役割が確立されたマンU撃破

 第4節アトレティコ・マドリー戦では初めてベンチスタートとなったが、それは直後に控えるオールド・トラフォードでの一戦を見据えたローテーションだった。

 チームが同点に追いついて程ない後半半ばから出場したクボは、2トップにパスを供給するトップ下でプレー。オフサイドで取り消されたものの、テクニカルなパスでサディクのゴールをアシストしている。

 そして忘れがたきマンチェスターでの歴史的な夜に、クボの“便利屋”としての役割は確立された。

 オールド・トラフォードの一戦にて、彼は3つの異なるポジションで起用されている。前半はサディクと2トップを組み、左寄りの立ち位置でスタート。前線の相方がアレクサンデル・セルロートに代わった後半開始時は右寄りのポジションに移り、イマノルが4-1-4-1にシステムを変更した後は左サイドに張り出してプレーしている。

 クボが最も危険を作り出したのは左サイドに移ってからだった。ビクトル・リンデロフを何度も翻弄したスピーディーで質の高いドリブル突破は試合の均衡を破る鍵となり、ブライス・メンデスの決勝点となるPKを生み出した。

セルロートとの凸凹コンビは互いを生かし合う?

 直後のヘタフェ戦では今季初めて精彩を欠いたが、それも長いシーズンにおいては必ずあることだ。この試合でイマノルはシルバをベンチに温存し、クボにその代役を任せたが、激しい蹴り合いが続く中でプレーメーカーの役割を果たすことはできなかった。

 ハーフタイムに交代を告げられたヘタフェに続き、オモニアとのヨーロッパリーグでは2度目の先発落ちを経験した。だが選手として成熟し、精神的な強さを身につけた今季のクボがその程度の出来事に影響を受けることはなかった。

 それどころか、クボは途中出場したこの試合でも決定的な役割を果たした。

 右サイドを駆け上がり、絶妙なラストパスでセルロートの決勝点をアシストしたのである。

 まだ共にプレーして数試合ながら、クボとセルロートは早くもお互いを生かし合う関係性を築きはじめている。この凸凹コンビは今季、地元ファンに多くの喜びをもたらすことになるかもしれない。

節目のリーガ100戦目で好調ぶりを再び見せつけた

 実際、2人は続くエスパニョール戦でも再びゴールを生み出している。GKアルバロ・フェルナンデスのコントロールミスを見逃さず、素早く詰め寄ったクボがボールを奪い、再びセルロートのゴールをアシストしたのだった。

 クボは再びスコアの均衡を破っただけでなく、この試合でも“便利屋”としての役割を全うしている。2トップの一角としてスタートした後、左サイドに開いたポジションに移り、イマノルの指示通り相手ディフェンスラインの外側のスペースを何度も突いていた。

 このエスパニョール戦でクボは、ラ・リーガ・サンタンデールでの通算100試合出場を果たした。節目の一戦で見せた活躍は、彼がシーズン序盤を通して見せてきた好調ぶりを改めて印象づけるものだった。

ソシエダは彼の特性とぴったりマッチしている

 これまでクボを見ていて感じるのは、スビエタの環境が彼のチームへの適応に役立っていることだ。

 過剰な報道に晒されることなく、程よい緊張感のある落ち着いた雰囲気の中で、彼は何よりも重要な自身のプレーに集中することができている。

 自ら「タレントより努力」と繰り返してきた通り、クボは模範的な姿勢で新天地での日々に取り組んできた。さぼることなくハードワークに従事し、向上心を持ち続ける。それは日々のトレーニングを重んじるイマノルにとって極めて重要な価値観であり、だからこそクボは短期間のうちに周囲のリスペクトを勝ち取ることができたのだろう。

 しかもレアル・ソシエダは、クボにとって理想的なフットボールを実践するチームだ。ボールポゼッションを通したゲーム支配を目指すプレースタイルは、彼の特性とぴったりマッチしている。

 サン・セバスティアンでプレーした短い期間で残してきた印象は、極めてポジティブなものだ。早くも攻撃の核の1人となっている彼は、サイドであれ中央であれ、どこからでもプレーを創造できる非凡な能力を発揮し続けている。

今季のクボは全く別人のように見える

 1-2で敗れたヘタフェ戦を除き、クボはどの試合でも何らかの形で決定的な役割を果たしてきた。自ら記録したゴールやアシスト以外にも、時に驚くべきテクニックで局面を打開し、時に途中出場で流れを引き寄せてきた。

 試合から消えることなく、常に輝きを発し続ける今季のクボは、我々が過去数シーズンにわたって目の当たりにしてきた選手とは全くの別人のように見える。

 ようやくクボは、ラ・リーガの強豪チームでも違いを作り出せる選手になった。カタールのワールドカップに臨む日本代表は、着実に調子を上げ、自信をつけている彼のプレーを享受することになるだろう。

文=ロベルト・ラマホ/ディアリオ・アス

photograph by Daisuke Nakashima