カタールW杯に臨む日本代表。現地取材するスポーツライター飯尾篤史氏による“同時進行ドキュメント”で随時チームの内情・変貌ぶりを追っていく。

 初戦でイングランドに2-6の大敗を喫したイランが、ウェールズとの第2戦に2-0と勝利して息を吹き返した。

 彼らの素晴らしいリバウンドメンタリティは、日本代表の選手たちにとって改めて気を引き締めるきっかけになったようだ。

 コスタリカ戦前日となる11月26日のトレーニング終了後、汗をしたたらせながらメディア対応を行った相馬勇紀が警戒する。

「イランが初戦で2-6と大敗しても、次の試合にすべてを懸けてウェールズに勝った。そのシチュエーションが少し似ている。コスタリカはなんとしても勝ち点3を取りにくるはずなので、メンタル面でそういう敵に対しても優位に立って点を取るということと、向こうはカウンターで一発を狙っていると思うので、そこに注意しながら、逆にこっちがカウンターなどで点を取れたらいいなと思います」

 相馬が語ったように、コスタリカは基本的にしっかりと守備ブロックを組み、鋭いカウンターを繰り出してくるチームである。それにもかかわらず、その堅守をスペインにズタズタにされたのは、準備不足にも要因があっただろう。

 開幕直前の17日には、イラクとテストマッチを予定していた。ところが、イラク入国の際にトラブルが起きる。パスポートにイラク入国のスタンプがあると米国などへの入国に影響するため、特別ビザの発給を受けることで合意していたものの、入国審査でイラク側がパスポートへの押印を主張。コスタリカ側が拒否したため、試合が中止となる。

 それゆえ、国民的スターであるGKケイロル・ナバスを筆頭に国外でプレーする選手たちを加えたフルメンバーでの最終確認ができず、ぶっつけ本番でスペインとの初戦を迎えることになったのだ。

 だが、イランがそうだったように、コスタリカも第2戦に向けて必ずやチームを立て直してくるはずだ。

コスタリカは複数フォーメーションを使い分ける

 コスタリカはそもそも4-4-2や4-2-3-1、5-4-1、5-3-2など複数のフォーメーションを使い分けてくるチームであり、絶対に勝たなければならない日本戦で、どのような戦いを仕掛けてくるのか読めない。キャプテンの吉田麻也が言う。

「相手が前からプレスを掛けてくるのか、守備を固めてくるのか、正直、まだ分からない。両方に備えておかなければいけないなと。前から来るなら絶対に失点してはいけない。そこで勢いに乗らせてはいけないし、0-0の時間が長くなればなるほど、向こうはプレッシャーが掛かるので、そこで自分たちが得意とする形を出せればいいと思います」

 日本代表としても、ドイツに対しては9月シリーズ以降、かなりの時間をかけて対策を施してきたが、コスタリカ戦に向けた準備期間は圧倒的に短い。

 そこでモノを言うのは、チームとしての対応力だ。

メンバーを入れ替えて戦うプランを踏まえて考えると

 相手を見てサッカーをする。ピッチ上で起きている現象を素早く読み取り、必要とあれば、ピッチ内の判断でシステムを変える。この4年間、継続して取り組んできたことが、コスタリカ戦でも問われる。キャプテンが続ける。

「ベースのところはこの4年間、叩き込んできたつもりですし、特に9月、このドイツ戦の前は徹底してそこをやってきたつもりなので、ピッチの中で確認する時間が少ないのはそんなに心配してないです」

 では、どのようなメンバーがコスタリカ戦のピッチに立つのか。

 前回のコラム(#7)に書いたように森保一監督は、W杯では毎試合、メンバーを入れ替えながら戦うプランを温めてきた。

 現状、冨安健洋、酒井宏樹と負傷者が出ていること、中3日の試合間隔で2試合目はこなせても、3試合目は運動量や体力面に影響が出ること、会場となるアフマド・ビン・アリ・スタジアム内は冷房が効いているとはいえ、13時キックオフであることを考えれば、間違いなくメンバーを入れ替えてくる。

 GKはドイツ戦で好セーブを連発して勝機をたぐり寄せた権田修一で決まりだ。乗っている守護神をここで代える理由はない。

 ディフェンスラインは右から山根視来、谷口彰悟、吉田、長友佑都と予想する。

 酒井が負傷したため、山根のスタメン起用はほぼ確実だ。その山根との連係も考慮し、同じく川崎フロンターレ所属の谷口がW杯デビューを果たすのではないか。

 4バックのうち2人がW杯初出場となるため、残る2人は吉田と長友になると予想される。途中から23歳の伊藤洋輝を送り出し、W杯のピッチを踏ませることも視野に入れたい。

ボランチは柴崎と守田、ではトップ下は?

 2ボランチは初戦で出番のなかった柴崎岳と守田英正だろう。

 柴崎の出場は間違いない。守田も左ふくらはぎの違和感はすでに取り除かれたようで、ドイツ戦前日に「問題は心肺機能」と語っていた。試合に出場しなければ復調することもない。「行けるところまで」という条件付きだが、決勝トーナメントで大きな戦力になってもらうためにも、コスタリカ戦で先発起用しておきたい。

 右サイドハーフはドイツ戦での活躍が記憶に新しい堂安律。左サイドハーフと1トップには、ドイツ戦での出場がなく、フレッシュな状態の相馬と上田綺世が起用されるはずだ。

 悩ましいのはトップ下である。

 大会前からコスタリカ戦の前線4人は上田、相馬、久保建英、堂安の“東京五輪カルテット”を並べるべきだと考えてきた。

 すでに連係は築かれており、短い準備期間でも機能すると考えたからだ。それゆえ、久保はドイツ戦では45分で交代させ、コスタリカ戦に備えさせるべきだとも。

 そして、実際に久保はドイツ戦のハーフタイムにベンチに下がった。

スペイン戦まで見据えるとしたら

 しかし、ここにきて迷いが生じている。

 ドイツ戦で途中出場した南野拓実のパフォーマンスが予想以上に良かったことが理由だ。

 さらに、コスタリカ戦で久保を先発起用すると、コンディションの問題からスペイン戦での先発が難しくなる。

 東京五輪の準決勝でスペインに敗北を喫している久保は「思っていたよりも早くリベンジの機会が訪れた」と語っており、スペイン戦へのモチベーションが桁外れに強い。その思いをスペインにぶつけることを考えれば、やはり久保は第3戦のスタメンに回すべきではないか。

 となれば、トップ下は南野だ。南野と堂安には森保ジャパンの初期に、“三銃士”のふたりとして2列目で並んだ関係性もある。

 理想は第2戦を終え、1試合を残した時点でのグループステージ突破だ。日本がコスタリカを下し、終了7時間後にキックオフされるゲームでスペインがドイツを下せば、2連勝の日本とスペインの勝ち抜けが決まる。

 そうすれば、両者が顔を合わせる第3戦は消化ゲームとなり、決勝トーナメント以降の戦いの準備ができる。

 ただ、あくまでもそれは、考えられる最高のシナリオにすぎない。日本がコスタリカに勝たないことには、そのシナリオは先には進まない。まずはコスタリカを叩いて勝ち点を6に伸ばし、ゆとりを持って9時間後の朗報を待ちたい。<つづく>

文=飯尾篤史

photograph by Kiichi Matsumoto/JMPA