高安の初優勝なるか! と思ったら、なんと28年ぶりの優勝決定巴戦になったね。大関貴景勝と高安を下して、平幕の阿炎が逆転初優勝。 優勝を逃した高安は、さぞ悔しいだろうが、優勝するのもしないのも“ひとつの運”としか言いようがないんだよ。勝負ごとに“絶対”はない。高安、諦めるなよ! 今年は3回も優勝争いに絡んでいて、ここまで来ているんだからさ。大丈夫だ、来年はきっと運が回ってくる。今場所は立ち合いのかちあげも効いていてよかったんだけど、「右四つでも左四つでもなんでもやれる」ってのは、ダメ。思い切り当たって前に持っていくという自分の型を徹底的に貫かないとね。

 大関の貴景勝は、押すしかない相撲なのに、余計な動きをするから負けるんだ。千秋楽の一番はすごい気迫だったけれど、最後まで押し相撲を貫き通さないと。

 前半は特に目立ってはいなかったけれど、千秋楽の日、「この流れだと阿炎の優勝の可能性もあるな」とは思っていた。高安とは逆に“運を味方につけた”んだね。

「負けてクヨクヨしてる姿を誰が見たいんだよ?」

 10勝すれば大関に復帰できた御嶽海、カド番大関だった正代は、ともに6勝9敗か。大関は協会の看板だけれど体の調子が悪いのなら、番付を考えず、土俵に上がらないでいいんだよ。負けが込むとやっぱり落ち込むし、相撲から気持ちがどんどん離れて行ってしまう。そうすると、相撲人生の危機なんだ。 本人が出場すると言っても、そこは師匠の判断で、まずは体と心のケアをきちんとさせてあげなきゃダメ。お客様のためにも「ただ出ればいい」ってもんじゃないよ。負けてクヨクヨしてる姿を誰が見たいんだよ? ふたりともドヨ〜ンとしてて、あからさまに顔に出すぎ。覇気がまったくなくて、お客様に同情させるなよ……。大関から落ちてもまだまだ相撲人生は続くんだ。体はもちろん、メンタル面も整えて再起してほしいよね。

「三賞、ケチくさい」オレだってそう思う

 豊昇龍が三役で初めて二桁勝ち、三賞をもらったな。ただ、ひとつひとつの相撲を見ると“うまく逃げてる”ようにしか見えない。自分の型がなくて、力強さが感じられないんだ。毎回動きが違って、その場限りの相撲というのかなぁ。次期大関候補といっても、このままの相撲で昇進したとしても、あとあと難しいよ。オジサン(元横綱朝青龍)のほうが、今でも強いんじゃないか?

 今場所は大鵬さんの孫の王鵬がよかったね。後半で上位陣には連敗したけれど、2日目から9連勝してたんだ。彼は、逃げないところがいい。今までは相撲が遅いからヤラレちゃっていたけれど、これから“勝ち方”も覚えていくと思う。来場所以降が楽しみなお相撲さんなんだよな。 

 そうそう、三賞選考基準が厳しいよね。今場所は殊勲賞が高安、敢闘賞が阿炎、千秋楽に勝てばの条件付きで豊昇龍が技能賞を受賞したんだけれど、入幕2場所目の平戸海がいい相撲で10勝したし、王鵬もよかったのにな。審判部の判断、ちょっと変じゃないのか? 「三賞、ケチくさい」「自分の弟子に贔屓してる親方が〜」なんて、相撲ファンにSNSで書かれてるようじゃダメだよ。オレだってそう思うもん(笑)。相撲ファンをがっかりさせちゃいけない。ファンを舐めちゃいけないよ。三賞ひとつでも、「今場所は誰がもらえるかな」って楽しみにしてるんだ。別に、審判部が三賞の賞金を自腹で出してるわけでもないんだからさ、本人の励みやファンのためにも、大盤振る舞いしてもいいくらいなんだよな。よって今場所の「マルちゃん賞」は王鵬と平戸海が受賞!

 今年一年を振り返ると、年6場所、毎回優勝力士が違って、ある面ではおもしろくもあった。ただね、これはお相撲さん全員に共通することなんだけれど、「守るより攻めろ」。守りの相撲ばかりな気がしてるんだよね。勝っても負けてもいいから攻めろ。

 そう――みなさんの人生も同じだよ。

(構成=佐藤祥子)

文=武蔵川光偉

photograph by JIJI PRESS