初戦でドイツに勝利という予想以上の結果に歓喜し、続く2戦目では、0−7でスペインに敗れていたコスタリカに敗れ、一気に落胆させられた。というのがこれまでの2試合だった。

 選手たちへの評価はさまざまある中で、特にGK権田修一への評価は、そんな試合の結果に比例している。ドイツ戦ではPKこそ与えたが相手のシュートを止めまくり、マンオブザマッチに選ばれた。ところが、コスタリカ戦では一転、失点シーンが物議をかもすことになる。

 その失点シーンは元はと言えば前線にたどり着いてしまうが、直接の原因は吉田麻也のパスミスだった。吉田のクリアともパスとも取れるフィードが批判の対象となるのと同じくらい、その後のGK権田修一のプレーも話題の的となった。

両手で止めにいった権田は誤りを認めている

 失点につながったシーン、フレールのシュートは権田の右上に飛んでおり、片手で防ごうと飛んでいればより体を伸ばすことでボールを弾き返せたかもしれないが、この時、権田は両手で止めにいってしまい、結果的に防ぎきれなかった。

 権田は「緩いシュートだったので少しタイミングが合わず、伸びきってしまったところで力が伝えられなかった」と、そもそもタイミングも判断も誤ったことを認めている。取りざたされるのも致し方ないプレーにも見え、ドイツ戦での活躍ぶりとは打って変わって、“戦犯”扱いを受けている。

 コスタリカ戦翌日、今大会では控えキーパーの川島永嗣に「あの失点は権田のミスだったのではないか」という質問が飛んだ。ベテランからどのように見えたのか意見を求められた。

川島は「キーパーのプレーに関しては…」

「キーパーのプレーに関しては、やっぱり自分がピッチに立ってないのでそこはわからないです。本人にしかわからないし、周りが言うことではないと思います」

 力強い口調で質問を封じようとしたが、両手で弾いたことについては、と質問は続く。

「タイミングがずれていれば、全然片手だけじゃなくて両手の方がコースも変えられるし、その時の判断としてそういうことはありうると思います」

 うまく力を伝えられさえすれば両手の方がピンチを防ぎやすいものだと説明した。さらに、キーパーというポジション柄、批判にさらされることが多いことについては、とさらに質問が続いた。

僕たちゴールキーパーの宿命かな

「キーパーはそういうポジションなので、どういう形であれ失点すれば最後にキーパーは責任をとらなくてはいけないです。まあ、そういうポジションだと思うし、それは今までもそうだし、これからも変わらないと思う。トレーニングの中でできるだけそういう(失点)シーンだったり、そういう可能性を減らす作業を自分たちがするしかない。その作業を続けるということは僕たちゴールキーパーの宿命かなと思います」

 フラットにキーパーというポジションの特殊性について話した。辛いポジションですね、と投げかけられる。

「つらいというか、それがゴールキーパーというポジションなので。そういう世界で生きているので」

 あくまでキーパーについての説明を続けた。権田のプレーについて聞かれていることを分かっていながら、特別に権田をかばうわけではなく話を一般化させるあたりに川島の優しさと、あえてかばう必要などないという信頼が感じられた。

一番ひっぱってくれているのは永嗣さん

 当の権田はコスタリカ戦前日、今大会でのGK3人の関係性について問われこう答えている。

「当然今回はこの3人ですけど、それまでたくさんの選手が呼ばれているなかで、僕ら3人は日本人のゴールキーパーの代表としてここにきているので。それは、一番ひっぱってくれてるのは永嗣さんであることは間違いないです」

 川島の練習への姿勢に敬意を示した。

「昔から日本サッカーを引っ張ってくれていて。(もうミックスゾーンで各選手への取材が始まっている)今、多分まだトレーニングしてるんですけど、本当に最年長で何歳になってもああやって示してくれるというのは僕らにとってはほんとにありがたい存在です」

 さらに、シュミット・ダニエルについても触れる。シュミットは9月の欧州遠征で好プレーを見せたことから、今大会で先発にしてはという論調もあった。

僕もバカじゃないので、ダンを使えって記事は良く知っています

 「やっぱダン(シュミットの愛称)なんかも……、僕もバカじゃないので、メディアとか見るので、ダンを使え使えっていうのを皆さんが書いてたのはよく知ってます(笑)。ずっとライバルがいるというのは、(川口)能活さんと楢崎(正剛)さんがそうですけど、やっぱり僕が若い時は永嗣さんにとってそういう存在になれず、結果的に日本のゴールキーパーのレベルをあげられなかった、一つの要因かなと思っています。日本もみんなのレベルが高いっていうのがすごい大事だと思うので、僕にとってはやっぱそういうの(川島やシュミットからの刺激)が全てモチベーションでした」

 川島のライバルになりきれなかった、と振り返る過去の権田はなんだか少し切なかった。ただ、今は違う。仲間から刺激を受け、試合でのパフォーマンスにつなげることができている。

「今もね、ほんと練習からダンにしても永嗣さんにしてもパフォーマンスが素晴らしいので、ここで自分が少しでも気を抜いたりしたらだめだし、万が一怪我したりしても、逆にそこは任せられるような安心感をチームみんなが持ってると思う。僕は若い時に日本のゴールキーパーのレベルをあげられなかったのだけど、ここにきて、自分の年は上がっちゃいましたけどダンと永嗣さんのおかげでお互いライバル関係でありながらもいい関係を築けていると思う」

 3人がライバルでありながらも切磋琢磨する仲間であることをあらためて口にした。

 スペイン戦でも何事もなければピッチに立つのは権田ひとりだが、その陰には二人の控えGKが確実に存在する。権田について話す川島と、川島とシュミットについて話す権田からはそんなことがあらためて感じられた。

 ドイツ戦後のように3人が抱き合う姿をスペイン戦後にも見たいものだ。

文=了戒美子

photograph by Takuya Kaneko/JMPA