今季の国内女子ゴルフツアーは若手の強さが際立つ一方で、終盤戦ではベテラン勢の奮闘もあり、大いに盛り上がった。次々に現れる優勝者の顔ぶれも個性的で、観る者を飽きさせない魅力がある。女子ゴルフ人気は当分、続くのだろうと感じさせてくれた。

 今季から年間50位までに与えられるシード権が、メルセデス・ランキングに一本化された。2019年までは賞金ランキングのみで、2シーズン(2020-21)が統合された昨年は賞金とメルセデスの両ランキングだった。

 つまり、コンスタントに試合に出場し、かつ上位フィニッシュした者がより大きなポイントを獲得できるとあり、1年を通したコンディションの良さと、技術力とメンタルの強さがよりリアルに反映されるようになった。賞金の大きな大会で優勝した選手のランキングが一気に上がって、シード獲得に近づくようなことはなくなった。

 一方で“逆転劇”が起こりにくいため、見ている側からすれば面白みに欠ける部分がある。それでも選手側からすれば、実力が直に反映されるシステムのため公平さが保たれ、総合的に“強い”選手がランキングの上位に来るようになった。

“年間女王”山下美夢有の強さとは?

 そういう意味では、年間女王となった山下美夢有(みゆう)の強さは際立っていた。

 “新世紀世代”と言われる21歳は、身長150センチと小柄ながらもゴルフは緻密で大胆。今季初優勝は国内メジャーの「ワールドレディスチャンピオンシップサロンパスカップ」。その前の3試合は予選落ちしていたとは思えないほど、初日から首位を守って完全優勝し、勝負強さを見せつけた。

 山下の快進撃はここからだ。

 6月、山下は女子プロゴルファーなら一度は挑戦してみたいと思うであろう全米女子オープンへの出場を断念。「実力的に上位で戦える感じではない」と国内の試合に集中すると判断すると、その後の「宮里藍サントリーレディス」で今季2勝目を挙げ、その翌週から10試合連続でトップ10入り。海外を敬遠していた山下だが、その間には「AIG全英女子オープン」に出場して13位と好成績を残して帰国。9月の「ミヤギテレビ杯ダンロップ女子オープン」では今季3勝目をマークした。

 終盤戦は“無双状態”で、11月の「伊藤園レディス」で今季4勝目を手にして、早々に年間女王のタイトルを手にした。

 さらにツアー最終戦の国内メジャー「JLPGAツアーチャンピオンシップリコーカップ」では、自身初のプレーオフでも最後は勝ち切り、今季5勝目。国内メジャー2勝だけでなく、年間平均ストローク60台(69.9714)を達成した。これは2019年に69.9399を記録した申ジエ以来2人目で、日本人選手としては初の快挙。年間獲得賞金も2億3502万967円の大台に乗り、2015年のイ・ボミ(2億3049万7057円)を上回った。

 平均ストローク60台と2億円超えという記録を一度に達成してしまうという凄さ。山下の強さは総合力にあるのは明白だ。それはスタッツにも表れる。

 パーオン率1位、パーセーブ率1位、平均パット数4位、フェアウェイキープ率5位、リカバリー率5位などドライバー、アイアン、パターとすべてで安定した数字をたたき出している。60台を達成できたポイントについては「やっぱりショットです。飛距離も後半戦から伸びて、ドライバーも新しく替わったので、去年に比べて伸びて、そこからのセカンドの精度がよくなったのが一番だと思います」と語っている。

「来年は海外の試合で優勝したい」

 この記録を超える選手は、もう出てこないと思われるほどの数字なのだが、だからこそ、これを超えられるのは自分自身しかいないのもよく分かっている。今後の目標について聞かれ、「今季の自分を超えたい。そして来年は海外の試合で優勝したいなと思います」と明言した。

 長丁場のシーズンをこれだけ安定した成績で切り抜けられたのだから、このオフもぬかりなく準備してくることだろう。

 山下の対抗馬となったのが、同い年の西郷真央だ。昨季は未勝利ながらも賞金ランキング4位。今季は開幕戦の「ダイキンオーキッドレディス」で初優勝を手にすると、5月までの10試合で5勝して勝率5割をキープした。

 このまま勝ち星を挙げると思いきやブレーキがかかった。ストイックで完璧を求める一面が裏目に出たか、夏以降の試合では80台を叩く日もあり、終盤ではショットの精度が落ちはじめた。特に最終戦は4日間で35オーバーを叩いて最下位となり、「今はドライバーを打つことに恐怖を感じる」と吐露。

 最終的に山下とは対照的な成績に終わり、「イチからやり直した方がいいと思います。まずスイングをノーマルな状態に戻すことから始めます」とオフに修正して、来季を迎えると誓っていた。

岩井ツインズは揃ってシード獲得

 山下や西郷のほか、今季は若き新人たちの活躍も女子ツアーを盛り上げた。目立っていたのは、20歳の双子の岩井姉妹だ。

 特に妹・千怜(ちさと)は8月の「NEC軽井沢72」と「CAT Ladies」で2週連続優勝を果たして話題性だけでなく、底力を見せつけた。姉・明愛(あきえ)は未勝利も姉妹で初シードを獲得。史上初の「姉妹同時シード入り」となった。

 2003年生まれの川崎春花はルーキーながら、メジャーの「日本女子プロゴルフ選手権コニカミノルタ杯」で山下を相手に3打差をつけて初優勝、約1カ月後の「NOBUTA GROUPマスターズGCレディース」で2勝目を達成。メジャー制覇が運やマグレでなかったことを証明してみせた。

 また、川崎と同じ2003年生まれの尾関彩美悠(あみゆ)も「住友生命Vitalityレディス 東海クラシック」で初優勝して、関係者たちを驚かせていたが、基礎技術がしっかりとした若手が次々と育っていることを実感させてくれる勝利でもあった。

 今季でツアーから一旦退くことを決めた有村智恵(35歳)は、若手の台頭についてこんなことを話していた。

「誰かが結果を残すことで『自分もできる』となる相乗効果が生まれています。人数が多い分、サバイバルで大変だと思いますが、レベルが上がっているのは間違いありません」

 プロ1年目のルーキーが勝ったとなれば、また来年はさらにその下の世代から優勝者が登場するシーンが見られるかもしれない、ということだ。

 ただ、国内女子ツアーはベテラン選手の奮闘もあるからこそ面白い。多くのギャラリーの涙を誘ったのは、10月の「樋口久子三菱電機レディス」で11年189日ぶりのツアー2勝目を手にした33歳の金田久美子と11月の「大王製紙エリエールレディス」で11年35日ぶりの通算6勝目を飾った37歳の藤田さいきだ。

 共に11年ぶりの優勝というのも不思議な縁。金田は今季はレギュラーツアー出場権を持たないなか、推薦出場から上位フィニッシュでポイントを稼ぎ、終盤戦までの出場権を得て、見事に下剋上を果たした。

 藤田も年齢を重ねて努力し、技を磨き続けてきた。シード落ちやケガ、病気などをしながらも現役から離れることなく、今年は何度も優勝に近づいた。2位が3回と優勝から見放されそうになったが、最後に優勝を手にし、側で支えてくれた夫については「辛くなったときも一番近いところで支えてくれた人」と感謝の気持ちを語るたび、涙するシーンが印象的だった。

 こうした優勝者の顔ぶれとストーリーが、女子ゴルフ人気の秘訣なのだろう。昨季は2シーズン統合とはいえ、シーズン9勝した稲見萌寧(23歳)のスゴさが際立っていたが、今季はさらにその下の世代にあたる選手たちがツアーを牽引し、新たな記録を作り出した。

 2023年は山下を脅かす新たな選手が登場するのだろうか。多くの選手が彼女を目標にしてくるはずだが、ライバルとの戦いの中で、再び“年間女王”として盤石な地位を築き上げることができれば、山下は本物だ。

文=キム・ミョンウ

photograph by Yoshimasa Nakano/JLPGA via Getty Image