まずは貴景勝、優勝おめでとう。横綱も休場し、ひとり大関として最後を締めてくれたね。優勝を決める結びの一番、琴勝峰もいい相撲だったけれど体勢が高かった。一発でケツが浮いちゃっていたしね。貴景勝は15日間で5回も出血したというけど、口を切ったり鼻血が出るのは顔を上げすぎなんだよ。もっと顎を引かなきゃ。脳震盪を起こしてしまったら怖いよ? 優勝したとはいえ、相撲内容はあまりよくなかったんだよな。仕切り線を越えない位置での相撲が多かったんだ。前に出られずに相手を受けてしまっているっていうこと。だから琴ノ若のように大きい相手には一発で持っていかれてしまうんだよなぁ。とにかく今後の貴景勝はケガが怖くもある。

 横綱昇進の可能性についても、昨年の九州場所で優勝決定戦に負けたものの「優勝に準ずる成績」と考えられたのかな。この初場所前には“綱取り”との言葉が飛び交ってたけれど、NHKはじめメディアが騒ぎすぎなんだよ。昇進問題を煽ってファンをやきもきさせて「やっぱりダメでした〜」って自作自演してるみたいになってるじゃない? まず審判部が決めることなんだし、場所が終わって審判部が動くまで、メディアはおとなしくしていてほしいよ。惑わされるほうが可哀想だもん。

「貴景勝とのバチバチの相撲がよかった」

 前頭13枚目の琴勝峰は、大関と最後まで優勝争いと大健闘。もともといいものを持ってるし、力が強い。体も軟らかくて足腰も悪くないし、本当にこれからが楽しみだね。

 関脇の若隆景は9勝6敗。6場所の関脇在位で大関候補とされているけど、今場所の相撲を見ると以前のスピードが落ちて、当たりの強さもなくなってるな。彼は体が小さいでしょ。大きくて強い上位陣と当たるようになり、ダメージとまでは言わないけれど、体に”ストレス”がたまって来るんだよ。スピードが遅くなったから相手に差されて負けちゃう。みんな研究してくるんだから、とにかくスピードを増して対抗してね。

 今場所は10勝した前頭8枚目の阿武咲もよかったね。体も大きくなったよな。千秋楽に三賞が掛かってたんだけど、惜しくもマゲをつかんでの反則負け。13日目に、子どもの頃からのライバルだった貴景勝とバチバチの相撲を見せてくれた。ふたりとも押し相撲なんだけど、押し相撲って1回負けると調子が狂っちゃう。阿武咲はここから3連敗してしまったよね。ふたりとも手足が短い体型での押し相撲だから、誤魔化しがきかないんだ。とにかく立ち合いで先に押して相手の動きを止めて、相手の流れにならないようにするのが大事なんだけど、バチバチのいい勝負、お互い力を出し切っていたね。一生懸命さが伝わって来たよ。

「御嶽海は本当にもったいないぞ!」

 一生懸命やってるお相撲さんばかりなのに、御嶽海……。力を抜いているようにしか見えないんだよなぁ。せっかくいいものを持っているのに、本当にもったいないんだ。心を入れ替えて奮起すれば、まだまだイケると僕は思っているから。体が悪いなら休場して徹底的に治して出てこいよ! あと三味(しゃみ=相撲用語でおしゃべりなこと)が多いな。テレビに出てチャラチャラしてる場合じゃないよ?

 十両に復帰して優勝した朝乃山。14勝1敗の成績だったけれど、半分以上、攻めてなかった感じ。相手を受けて後ろに下がってしまう相撲が多かった。前に出て攻めることがなく、立ち合いの圧力もなかった。土俵際でギリギリ勝つ相撲が何番かあったけど、このままでは幕内に上がっても難しいぞ? 体を見ると、筋肉をつけ過ぎだと思う。これ以上はつけなくていいよ。ウエイトトレーニングより、やっぱりすり足、四股、てっぽうを徹底的にやらないとね。ボディビルダーみたいに“見せる筋肉”ではなく“相撲で動ける筋肉”をつけることが大事なんだよ。もともと力があるんだから、これからはすり足などの基礎の細かい動きを、今一度見直して頑張ってくれよ。

 今場所は全体的に見て、張り手をしたり、引いたりはたいたりの引き相撲が多かったようにも思う。当たって押さないとダメ! なぜ毎日辛い稽古をするんだと思う? 引いたりはたいたりするための稽古じゃないでしょ? 日々の稽古の結果を本場所の土俵でみなさんに見てもらうのが相撲なんだよ。せっかくの稽古がもったいない。力相撲を見せておくれよな。

 さて、8日から始まった初場所も終わり、これからがお相撲さんたちの本当のお正月だね。いっぱいお餅でも食べて、ゆっくりしてくれよ。

(構成=佐藤祥子)

文=武蔵川光偉

photograph by JIJI PRESS