Twitter上で“あるアカウント”が話題を集めている。その名は「赤味噌」さん。5月24日に中日が発表したウンベルト・メヒア投手の獲得を「予言していた」としてトレンド入りした。以前から中日ファン界隈でひそかに人気があったアカウントだが、その知名度は野球ファン全体に広がっている。この人物、一体何者なのか。そしてなぜ助っ人獲得を予言できたのか。本人を直撃した。

4日間でトレンド入り3回…何者?

――4月1日の時点で「中日が仮に外国人投手獲得するとしたらウンベルト・メヒア辺りだと思う」と投稿。その予言が的中したと話題を呼びました。「赤味噌さんは“中の人”ではないか」という声があったほど。

赤味噌 まさか(笑)。「中日と外国人選手が大好きな男」とだけ言っておきます。メヒアの件は、朝起きて自分の名前(アカウント名)がトレンドに入っててビックリしましたね。獲得してほしいと思っていた選手なので純粋に嬉しいです。

――中日の正式発表が5月24日。驚いたのが、赤味噌さんは5月16日の時点で獲得を決定づけるような投稿をしているんですよね。メヒア投手の奥様がインスタグラムで中日の公式アカウントをフォローした、と。

赤味噌 推しの選手は追いかけますからね。特にメヒアに関しては、ドミニカ共和国のリーグだけでなくメキシコでプレーした経歴もありましたし、26歳と若く経験豊富な選手よりは年俸も抑えられる。立浪(和義)監督が実際に試合を見たかはわかりませんが、昨年末のウィンターリーグの視察期間に、メヒアが先発していたことも知っていました。それが獲得の本命と考えた理由ですね。その折、彼の奥様が中日のアカウントをフォローしたのを発見して、やはり来そうだなと。

――なるほど……。すごい推察力ですね。

赤味噌 久々にポジティブな話題でトレンド入りしたので嬉しいです。じつは20日から23日までの4日間で3回トレンド入りしたのですが、ほかの2つは中日の負けが絡んだものだったので。うち1つは「…」と投稿しただけで「赤味噌が絶句してる」と話題になって(笑)。

――5月20日の投稿ですね。時間から察するに、中日が大城卓三選手から満塁弾を打たれた瞬間ですか。

赤味噌 そうです。勝てない中での満塁弾。とどめのような一発に凹んでしまって。無意識にツイートしてました(笑)。

まるで「スカウト」…情報収集はどのように?

――中日の試合中はデータや考察を入れながら逐一ツイート。球団への尋常ではない愛を感じます。

赤味噌 家族が大の中日ファンだったんです。その影響で私も好きになりました。試合を見るようになって、特にタイロン・ウッズやトニ・ブランコといった外国人選手のファンになった。ウッズが退団した翌年にブランコが来るわけですが、年俸約3000万円と高額ではないのに、ホームラン王と打点王を獲得した。そこでドミニカ共和国など中米にどんな選手がいるのか、気になったんです。2009年にWBCで投げていたアロルディス・チャップマンにも惹かれて、キューバの野球も追うようになりました。今もキューバやメキシコの国内リーグは、毎日のように追ってます。

――情報はどのように集めているのですか。

赤味噌 海外の選手については、球団がYouTubeで配信しているライブや、専用チャンネルで見てますね。成績はリーグの公式サイトに公開されているので、そこから。順番的には成績を見て、気になる選手の試合を見るという流れ。そこで得た情報や目にした自分の雑感をノートにまとめます。中日のウィークポイントと照らし合わせながら。

――英語やスペイン語も問題なく?

赤味噌 どちらも流暢には話せませんが、記事やデータは読めますね。というより、追うようになってから読めるようになりました。ほぼ毎日目を通しているので(笑)。

――さながら球団スカウトのような働きぶり……! 加えて中日の試合もほぼ毎日観戦してますよね。

赤味噌 一軍は全試合、ファームは時間があれば見ます。並行してデータを調べたいので、現地よりテレビ観戦が多いですね。中日にまつわる情報はデータサイトや本、「スポーツナビ」からデータを集めて、エクセルにまとめています。

なぜTwitter発信をはじめた?

――そうしたデータを発信していくために、Twitterをはじめたのですか。

赤味噌 今のアカウントを開設したのは5年前くらいですね。でも最初は情報発信よりも収集が目的でした。外国人選手の情報を発信している方々がいたので、もっと詳しくなれるかなと思いまして。

――いつ頃から現在のように投稿が増えたんですか。

赤味噌 2020年くらいです。じつは中日が2019年に獲得したエンニー・ロメロ、20年のジャリエル・ロドリゲスなど、事前に「おすすめ助っ人」としてツイートしてたんですよ。その頃からフォロワーが増えていった(筆者注:5月26日現在でフォロワー数7万人以上)のもありますし、発信する情報の精度も我ながら悪くないかも、と。

――注目を集めると投稿内容にも気を遣いそうな気が……。

赤味噌 いや、それほど意識はしてないですね。あくまで自分が思ったことを気軽に呟いてます。ただ、開設当初と比べると言葉遣いは気にするようになりましたね。他球団ファンの方も見ていると思うので。昔はもう少し汚い言葉もあったような気がします(笑)。

考えながら野球を見るのが好き

――赤味噌さんは「提言」もしますよね。勝つためにはこうすべき、と。たとえばメヒア投手獲得の際も、中日が近年貧打に苦しんでいるためか「打者を獲得すべきなんじゃないか」という声もあった。それでも赤味噌さんは「投手補強は間違っていない」と断言していました。

赤味噌 いま中日の二軍を見てみると、投手が少ないんですよ。ファームで最下位なのですが、チーム防御率が5点台。一軍も5月は先発陣が4点台。さらに外国人枠を見てみると、5枠のうち野手が4人で、投手はロドリゲスがいなくなった影響でライデル・マルティネスの1人しかいない。そういう点からも先発を任せられるピッチャーが最優先事項だと思いました。

――数字と現状を客観的に見た上での提言だからこそ、共感が得られるんでしょうね。

赤味噌 現代はいろんなデータが私のような一般人でも見られますからね。実際に調べてみると、批判とまでは言わずとも、意見は出てくるんです。誹謗中傷は論外ですが、意見を発信するのも楽しみ方の1つだと思います。野球は戦略的なスポーツなので。「頑張れ」一辺倒よりも、考えながら野球を見るのが好きなんです。ただ、のめり込んでいくぶん、自分の理想と現実のギャップで苦しくなったりもするのですが(笑)。

連敗中は「黒味噌さん」に

――負けが込むとネガティブな発言が増えることから、赤味噌さんならぬ「黒味噌さん」と呼ばれることもあるとか。

赤味噌 あります、あります(笑)。あとは怒っていると思われているのか、「真っ赤味噌」とか。よく思いつくなぁと思います。批判的なツイートは凹みますけど、そういうユニークな投稿は楽しんで見てますね。

――贔屓のチームが苦しい状況です。気分は下がりませんか。

赤味噌 じつはメジャーで贔屓にしている(シンシナティ・)レッズも最下位。つまり、プロ野球の一軍、二軍、そしてメジャーと好きなチームがすべて最下位なんです。だから気分はまったく上がりませんが……助っ人リサーチは気分転換にもなっていて。夢を見られるというか、この選手が中日に来たらどうなるだろう、と想像するだけでワクワクする。あとは趣味が語学学習なので、英語とスペイン語を学ぶときはリフレッシュになりますね。まあそれも、野球関連情報をもっとスムーズに読みたいから、という理由なのですが(笑)。

まだAクラス入りを諦めてませんよ

――一部から「赤味噌さんは全野球ファンの鑑」という投稿もありましたが、その意味がなんとなくわかったような気がします。

赤味噌 それは明らかに買いかぶりです。負けた試合後なんて誰とも話したくなくなりますから。ただのめり込める対象があることは、幸せだなとは思いますけどね。やっぱり、ネガティブな話ではなくて、勝った喜びだったり、ポジティブな投稿で話題になりたいものです。もちろん今シーズンもまだAクラス入りを諦めてませんよ。私は中日を信じてますから。

文=田中仰

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