2023年の期間内(対象:2023年5月〜2023年9月)まで、NumberWebで反響の大きかった記事ベスト5を発表します。大谷翔平部門の第4位は、こちら!(初公開日 2023年7月31日/肩書などはすべて当時)。

メジャーリーグを席巻する大谷翔平。日本ハム時代から長年にわたって取材する番記者が見た“テレビ中継には映らないショータイム日記”をお届け!今回は円安+物価高など“現地滞在事情”とパイレーツ戦編、「メジャー初完封+2本塁打」など伝説のダブルヘッダーとなったタイガース戦編と、計2回にわたってお届けします!(#2につづく)

《7月20日 試合のない休養日:日系スーパーの物価高と、チームストア取材》

 7月25日からの16連戦に向けて、日系スーパーに食料の買い出しに出かけた。MLB担当になって6年目を迎えるが、昨今の物価高には驚かされる。列記すると……。

「サトウのごはん」(18.99ドル=約2680円。※すべて1ドル141.1円で換算)、「キシリトールガムファミリーボトル」(18.99ドル=約2680円)、「ごつ盛りソース焼きそば」(3.99ドル=約563円)、「大粒ポイフル」(4.69ドル=約662円)。

 割高な日系商品とはいえ、日本のスーパーマーケットでの販売価格と比較4〜5倍である。円安の影響も大きい。迷った末に「ごつ盛り」を2つ購入したが、計画的に自炊生活しないと財布は火の車になりそうだ。

 その後は本拠地のチームストアに向かった。日米のファン問わず大谷の人気は凄まじく、試合開催日のチームストアは長蛇の列ができて、入場制限ができるほど。

 夏休みにエンゼル・スタジアムでの観戦を予定していて、エンゼルスグッズや大谷関連グッズの購入を検討しているのであれば、試合のない日か、ナイターの試合であれば午後2時までの来場をおすすめしたい。ゆったり選び、並ばずに購入することができるだろう。

いい意味で裏切られた“穏やかなトレード報道対応”

《7月21日 パイレーツ戦(H):トレード報道の質問に穏やかな表情で》

 8勝目を挙げた大谷の試合後の囲み取材は、米国メディア、日本メディアの順に始まった。現在は原則、登板日のみの取材対応となっている。トレード期限前とあって、米国メディアの質問の8割がトレード関連だった。PS進出へ崖っ縁の状況を悲観し「大谷を放出すべき」という米メディアの声が高まる中、大谷は力強く言い切った。

「このチームでプレーオフにいきたい、そこで勝ちたいという気持ちは変わらない」

 ただ、大谷の表情は意外なほどに穏やかだった。

 トレードに関する質問は“素っ気なく”答えるものだと思っていたが、良い意味で裏切られた。トレード期限を終えても、シーズン終了後にはFAとなる。去就が再び注目されるのは必至だが、シーズン中の契約延長交渉に関しては「(ペリー・ミナシアンGMとも)そういう席を全然、設けていない。シーズンはシーズンで集中したい」と言い切っていた。

モニアックが語る“切り替え上手のショウヘイ”

《7月22日 パイレーツ戦(H):ヘルメット叩きつけ→指ヒラヒラ》

 4打数無安打で3戦連続無安打。チームも零敗で連勝が4で止まり、アメリカンリーグ西地区4位に転落した。

 自身もチームもフラストレーションがたまる展開だった。象徴的だったのは3回2死一塁のこと。外角のボール球のチェンジアップを振らされ2打席連続三振の直後、ベンチに戻ってヘルメットを棚に3度も叩きつけた。道具を大切にする大谷にとって珍しい行動だった。

 それでも、大谷は気持ちの切り替えが上手い。

 9回の攻撃中には、ベンチからモニアックとともに指をヒラヒラさせて相手投手へ念を送るような仕草がSNS上で話題になった。モニアックは「翔平がやろうと言い出したんだ。打者がいい結果を残せるるようにって〈JUJU(魔力)〉を送っていたんだ」と笑顔。今季ブレークのモニアックは試合前ウォームアップ中に大谷のそばに寄りそうことが多く、大谷の背中から学んでいることが多いという。

上半身裸のサンドバルをバチーン!

《7月23日 パイレーツ戦(H):守衛から「翔平と一緒にここに帰ってきてね」》

 トレード期限前最後の本拠地主催試合。大谷はクラブハウスでスタッフに頼まれた複数のボールにサインを書き続けた。

 それが一段落すると、最後は隣で着替え中だった上半身裸のサンドバルの胸をバチーンと叩き「まだ飯も食ってないんだって!」と大笑いした。

 リラックスした舞台裏とは対象的、試合では豪快な一発をぶちかました。36号は打球角度19度のライナー性の打球は低い弾道のまま中堅フェンスを越えた。滞空時間3.99秒は今季自身の本塁打で最短。フィル・ネビン監督は「ゴルフボールのような打球だった」と目を丸くした。

守衛さん「ショウヘイと一緒に戻ってきてね」

 休養日を挟んで7月25日から16連戦がスタートする。

 取材を終えて球場を出る際に守衛さんから「翔平と一緒に次の本拠地の試合ではここに帰ってきてね」と手を振られた。“ここ”に帰ってこられるかはアート・モレノ・オーナーの決断次第。夕日が差し込むエンゼルスタジアムがいつもより奇麗に見えた。

<#2につづく>

文=柳原直之(スポーツニッポン)

photograph by Ronald Martinez/Getty Images