今シーズンから、ロサンゼルス・ドジャースのチームメイトとなった大谷翔平と山本由伸。現地アメリカでは温かい交流も見られはじめている。エンゼルス時代から大谷の取材を続ける斎藤庸裕氏が、2人の現在の関係性とエピソードを解説する。

 4月6日、敵地リグリーフィールドでのカブス戦。4点リードの最終回、ドジャース大谷翔平選手(29)はベンチで山本由伸投手(25)と試合の行方を見つめていた。時折、笑みを浮かべながら、節目の時を待った。1点返されたが、守護神フィリップスが試合を締めた。山本のメジャー初勝利が決まった瞬間、大谷はすぐに右手を上げて喜び、ハイタッチの準備。少し遅れて山本が手を合わせた。

 試合後のクラブハウスでは、ラテン系ミュージックとともに選手やチームスタッフ全員で大盛り上がり。洗濯用カートに乗せられ、ビールかけのシャワーで記念すべき初勝利を祝福された。お祝いを終え、着替えを済ませた大谷も明るく、うれしそうな表情だった。

ロッカールームは隣同士「話す機会は多い」

 昨年オフ、自身がドジャース移籍を決断して以降、山本の移籍交渉からキャンプ中も「分からないことがあったら聞いてね」と、頼れる先輩としてサポート役となった。ロッカーは本拠地ドジャースタジアムや遠征先でも隣同士。アリゾナ州グレンデールのキャンプ初日、「日本語でコミュニケーション取りやすいのはありますけど、そこはチームメートの1人。ただ、ロッカーも隣なので、話す機会はもちろん多くなるとは思います。(山本は)1年目なので、分からないこととかあれば、僕の方が知っている部分もあると思うので、そういうところは一緒にやっていけたらと思います」と、穏やかな表情で言った。

 6年前、エンゼルスでメジャー1年目を迎えた大谷は、マイク・トラウト外野手(32)や、通算703本塁打の大打者アルバート・プホルス氏(44)ら、“兄貴分”の選手達からアドバイスを受けてきた。日本時代とは調整法や、野球そのもののスタイルも違う。メジャーリーグで戦うためのイロハを学んだ。球団スタッフからもサポートされ、新しい環境で右も左も分からない中、プレーしやすい環境を整えてもらったことに、常に感謝があった。

焼肉店で山本の“記念日”をお祝い

 新天地で、かつ異国での生活に慣れるのには時間もかかれば、気苦労もある。経験したからこそ、分かることがある。山本の本拠地初登板となった3月30日、得点のチャンスで凡退し、援護できなかった。

「マウンドもボールも違いますし、私生活も全然違うので、そこらへんの難しさもあるとは思いますけど、今日は素晴らしいピッチングだった」と力投をたたえながら、「勝って終わらせてあげたかった」と唇をかんだ。その1週間後に臨んだ4月6日のカブス戦では5回1死一塁から左前打。先制点につなげ、初勝利をアシストした。

 約1カ月半前の2月28日、山本のオープン戦初登板にはサプライズで敵地の球場を訪れ、ブルペン投球から後輩のパフォーマンスを見守った。メジャー初勝利を挙げた試合後には、ドジャースの日本人トレーナーや通訳らと米シカゴ市内の人気焼肉店で、山本の記念日を祝い、つかの間のひとときをともにした。10年契約でプロスポーツ史上最高契約を結んだ大谷と、メジャーの投手史上最高額の12年契約を交わした山本。頂点を目指すもの同士の絆は、着実に深まっている。

文=斎藤庸裕

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