2023ー24年の期間内(対象:2023年12月〜2024年4月)まで、NumberWebで反響の大きかった記事ベスト5を発表します。ドジャース部門の第5位は、こちら!(初公開日 2024年3月20日/肩書などはすべて当時)。

 いやはや、ドジャース打線の豪華さたるや……。

 韓国ソウルでのメジャーリーグ開幕戦を前にしたエキシビションマッチ2試合を見て、大谷翔平を中心に追っていたファンも、常勝軍団のパワフルさに気づいた人も多いことだろう。

 キウム戦、韓国代表戦と大谷はノーヒットに終わったものの、チームは2試合トータルで19得点を挙げた。

 大谷とともに「MVPトリオ」を形成するベッツとフリーマン(キウム戦でのホームランは衝撃的だった)はもちろん、4番以降のスミス、マンシー、エルナンデス、アウトマン、ヘイワード……と「10〜30本塁打、70〜100打点」という成績が普通のように並ぶ打順は、大谷・山本由伸にとっては心強すぎる仲間だし、対戦相手の投手としてみれば厄介なことこの上ない。

ドジャースって、金満球団なのか?

 その2024年版ドジャース打線に、公式戦マウンドで先鋒として立ち向かうのはダルビッシュ有である。10年以上の長きにわたってメジャーの一線級で先発を務めあげたダルビッシュは2023年にパドレスと6年間の契約延長を結び、年俸は総額1億800万ドル(当時レートで約141億5000万円。以下すべて同)と大々的に報じられた。42歳までの長期契約であることにダルビッシュの価値を感じるとともに、メジャーにおける年俸スケールの大きさを感じるばかりだった。

 まあそれを言ったら、ドジャースに加わった大谷の10年総額7億ドル(約1015億円)、同じくドジャースの一員となった山本も12年総額3億2500万ドル(約463億円)、ケタ違いすぎて現実感がないわけだが……。

 と、年俸で思った。ドジャースってやっぱり“メジャー屈指の金満球団”なんだろうか?

ドジャースであっても9位

 ドジャース筆頭オーナーのマーク・ウォルター氏(大谷の入団会見時に同席した白髪の人だ)は投資グループのCEOで、『フォーブス』誌によると個人資産は58億ドル(約8400億円)、2012年にドジャースを買収した際の額は20億ドル(約1660億円)だとか。となると余裕の1位なんだろうな……と、庶民として下世話なのは承知で調べてみたくなった。

 まずドジャース、パドレスの2024年総年俸から。以下、年俸データはスポーツサイト「spotrac」から引用。1ドル=150円で計算している。

 ドジャース:2億1472万1666ドル(322億824万9900円/30球団中9位)

 パドレス:1億5299万5453ドル(229億4931万7950円/30球団中14位)

 1年間で支払う年俸だけで200〜300億円クラスということでクラクラしてくるのだが、ドジャースであっても「総年俸でメジャー全体9位」。意外であるとともに、凄まじい世界である。

NPBにもいたスアレスも高額選手に

 日本人的には大谷や山本、ダルビッシュに松井裕樹(5年2800万ドル/42億円)の契約額に目が行ってしまいがちだが、両チーム主力の年俸はどんな感じなのだろうか。日本人を除く2024年の年俸トップ5を見てみよう。

 <ドジャース>

 ベッツ:3000万ドル(45億円)

 フリーマン:2700万ドル(40億5000万円)

 グラスノー:1750万ドル(26億2500万円)

 ヘルナンデス:1500万ドル(22億5000万円)

 テイラー:1300万ドル(19億5000万円)

 <パドレス>

 ボガーツ:2545万4545ドル(38億1818万1750円)

 マスグローブ:2000万ドル(30億円)

 マチャド:1709万909ドル(25億6363万6350円)

 タティスJr.:1171万4285ドル(17億5714万2750円)

 スアレス:1000万ドル(15億円)

 ベッツ、フリーマンは単年で40億円を超えてくる。そしてパドレスの試合を見ているとその打撃と身体能力に驚愕するほかないボガーツ、マチャド、タティスJr.も天文学的な金額をもらっている。その中で元阪神のスアレスもランクインしており、日本のプロ野球を経てメジャーでビッグドリームを掴んでいるのは日本人選手だけではないことにあらためて気づかされる。

MLB30〜21位は?

 この2球団以外にも吉田正尚のレッドソックス、鈴木誠也や今永昇太のカブス、千賀滉大や藤浪晋太郎のメッツ、前田健太のタイガース、菊池雄星のブルージェイズと、様々な球団に日本人選手がいる。各球団はどうなのか……ということで、2024年総年俸をランキング化して、カウントダウン形式で見ていこう。チーム名の後ろは所属リーグ・地区と昨季順位。まずは30〜21位から。

 <メジャー2024年総年俸:30〜21位>※「ア西5位」であればア・リーグ西地区の5位、◎はポストシーズン進出を意味する

 30位:オークランド・アスレチックス/ア西5位 4727万5000ドル(70億9125万円)

 29位:ピッツバーグ・パイレーツ/ナ中4位 7201万4000ドル(108億210万円)

 28位:クリーブランド・ガーディアンズ/ア中3位 8443万3928ドル(126億6508万9200円)

 27位:シンシナティ・レッズ/ナ中3位 8614万8333ドル(129億2224万9950円 )

 26位:マイアミ・マーリンズ/ナ東3位◎ 8653万5000ドル(129億8025万円)

 25位:タンパベイ・レイズ/ア東2位◎ 8845万8712ドル(132億6880万6800円)

 24位:ワシントン・ナショナルズ/ナ東5位 9017万1429ドル(135億2571万4350円)

 23位:ボルチモア・オリオールズ/ア東1位◎ 9197万8668ドル(137億9680万200円)

 22位:デトロイト・タイガース/ア中2位 9431万3333ドル(141億4699万9950円)

 21位:ミルウォーキー・ブルワーズ/ナ中1位◎ 9448万4960ドル(141億7274万4000円)

「大谷さんきっかけで日本人メジャーリーガーを応援してます」というライト層が“へえ〜”と思うかもしれないのは、藤浪が昨季所属したアスレチックスとオリオールズだろう。

カネの力だけで全てが決まるわけじゃない

 アスレチックスは『マネーボール』という大ヒット映画に描かれているように、「セイバーメトリクス」という指標を重視した先駆け的な球団で、少ない予算の中で一芸に秀でた選手で戦うスタイルを貫いている。メジャー1年目、アスレチックスで藤浪は防御率こそ苦しみながらも、持ち前の剛球が徐々にストライクゾーンに安定していった。結果、ア・リーグ東地区で首位争いを繰り広げるオリオールズに請われて移籍した。

 オリオールズは昨季総年俸で29位。そして今季からマイナー契約で上沢直之が所属するレイズは27位。2チームは少ない予算ながらも激戦区と言われるア・リーグ東地区で昨季1位と2位。さらに上記の10チーム中4チームがポストシーズン進出を果たしているのは〈カネの力だけで全てが決まるわけじゃない〉という希望を見せてくれる。

 とはいえ、2023年の日本プロ野球選手会に入会している選手714人の年俸総額は、約319億円とのこと。MLBでは最安の3球団アスレチックス、パイレーツ、ガーディアンズの総計(約306億円)とほぼ一緒なところに、メジャーの市場規模のデカさを実感する。

MLB20〜11位

 最後に、20位から1位を一気に見ていこう。

<メジャー2024年総年俸:20〜11位>※◎はポストシーズン進出、☆はリーグ制覇

 20位:カンザスシティ・ロイヤルズ/ア中5位 1億609万4570ドル(159億1418万5500円)

 19位:ミネソタ・ツインズ/ア中1位◎ 1億1635万3690ドル(174億5305万3500円)

 18位:シカゴ・ホワイトソックス/ア中4位 1億1667万3333ドル(175億99万9950円)

 17位:シアトル・マリナーズ/ア西3位 1億2815万8333ドル(192億2374万9950円)

 16位:アリゾナ・ダイヤモンドバックス/ナ西2位☆ 1億3077万1716ドル(196億1575万7400円)

 15位:コロラド・ロッキーズ/ナ西5位 1億3218万5000ドル(198億2775万円)

 14位:サンディエゴ・パドレス/ナ西3位 1億5299万5453ドル(229億4931万7950円)

 13位:サンフランシスコ・ジャイアンツ/ナ西4位 1億5516万7909ドル(232億7518万6350円)

 12位:ロサンゼルス・エンゼルス/ア西4位 1億5591万8094ドル(233億8771万4100円)

 11位:ボストン・レッドソックス/ア東5位 1億6122万4847ドル(241億8372万7050円)

MLBトップ10

<メジャー2024年総年俸:10〜1位>※◎はポストシーズン進出、★はワールドシリーズ制覇

 10位:セントルイス・カージナルス/ナ中5位 1億6430万1667ドル(246億4525万50円)

 9位:ロサンゼルス・ドジャース/ナ西1位◎ 2億1472万1666ドル(322億824万9900円)

 8位:シカゴ・カブス/ナ中2位 2億1548万ドル(323億2200万円)

 7位:テキサス・レンジャーズ/ア西2位★ 2億1571万ドル(323億5650万円)

 6位:トロント・ブルージェイズ/ア東3位◎ 2億2260万1784ドル(333億9026万7600円)

 5位:アトランタ・ブレーブス/ナ東1位◎ 2億2431万5000ドル(336億4725万円)

 4位:フィラデルフィア・フィリーズ/ナ東2位◎ 2億3718万2617ドル(355億7739万2550円)

 3位:ヒューストン・アストロズ/ア西1位◎ 2億3730万3141ドル(355億9547万1150円)

 2位:ニューヨーク・メッツ/ナ東4位 2億8380万1859ドル(425億7027万8850円)

 1位:ニューヨーク・ヤンキース/ア東4位 2億9054万1666ドル(435億8124万9900円)

 上位になればなるほど、いわゆる名門・強豪球団の名前がずらりと並ぶ。何よりワンツーのニューヨーク勢の総年俸たるや……。

エンゼルスがドジャースに肉薄した2023年

 パドレス以降の14球団が、日本円にして「200億円超」という年俸規模である。そしてドジャース以降の9球団は「320億円超」。日本プロ野球の選手会入会選手の昨季総年俸を1球団で超えている計算になる。

 ただ、2023年春を思い出せば……大谷やダルビッシュら以外の大半がNPBの選手だった侍ジャパンが、WBC決勝の舞台で超高額年俸のスーパースターぞろいだったアメリカを倒して世界一奪還を果たした。勝負はカネで決まるわけではない、という痛快さを見せてくれたと言える。

 なお、昨季のMLBランキングを見ていくと、ドジャースは6位、パドレスがトップ3にランクイン。さらに言えば、大谷が昨季まで所属した“同じロサンゼルス”のエンゼルスが8位で、ドジャースとの総年俸差は15億円ほどだった。大谷はもちろんメジャー最強打者の1人トラウトもいるので納得だが、ケガがちで稼働が限られるレンドーンの7年総額2億4500万ドル(約367億5000万円)が順位を押し上げており、コスパ面で言うとやっぱり悩みのタネだろう。

 前出の藤浪は、メジャーで最も安い総年俸クラスのアスレチックス、オリオールズを経て、金満球団として名高いメッツに籍を置いている。ただ総年俸のランキングで昨季もワンツーを飾ったニューヨークの2球団が地区4位に沈み、総年俸で3倍近い差があるオリオールズが地区優勝を果たすのだから……WBCと同様、勝負はやってみないと分からない。

「1015億円」という総契約額に現れる特大の期待値に対して、大谷がどのように応えていくかも含め、今季のメジャーから目が離せない。

文=茂野聡士

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