5月5日(現地時間)のブレーブス戦で1試合2本塁打を含む4安打の“大爆発”をみせたドジャース大谷翔平。大谷にとって今季ベストともいえる試合を撮影したフォトグラファーの南しずか氏が、ドジャー・スタジアムに詰めかけたファンの声も捉えながら徹底レポート!

 試合の結果からプライベートのことまで、連日のように大谷翔平のニュースが流れている。それは、私を含め大谷関連のニュースを流す日本の報道陣が働いているからだ。では、実際のところ、ロサンゼルス・ドジャースのファンは大谷をどう思っているんだろう? そんな疑問を直接、現地でファンに聞いてみることにした。

 5月5日、ドジャー・スタジアム。カリフォルニアらしいカラッとした晴天の下、試合開始の約3時間前、続々と人々がスタジアムに向かっている。まず目につくのは、「17」、「OHTANI」の文字。大谷翔平のユニフォームを着ている人が本当に多い。

 もう何も言わずとも、現地での人気度は一目瞭然である。

 私の直感を裏付けてくれるように「今年は大谷選手関連のグッズが一番売れています」と売店の女性スタッフが教えてくれた。

 さらに「5月16日は大谷選手のボブルヘッド・デーです。同日のチケットは、ほぼほぼ完売と聞いています」。ボブルヘッドとは首振り人形のこと。モデルとなる人物に似てるようで似てないのがチャームポイントだ。ファンサービスの一環であり、ボブルヘッド・デーに来場すると、ボブルヘッドを貰える。「(その日は)売店もいつも以上に忙しいと良いですね」と女性スタッフは期待を寄せた。

大谷のユニフォームを選ぶ理由は?

 人々に聞く前から大谷の人気度を感じたので、「大谷選手のユニフォームを選んだ理由はなんですか?」と尋ねてみた。青のユニフォームを着た男性は気さくに答えてくれた。

「僕は地元のヒューストン・アストロズのファンだったんだけど、カリフォルニア州に引っ越してきたら、友達のお父さんから『カリフォルニアのチームを応援しようぜ』と言われて。だったら、ドジャースと大谷選手を応援しようと。(大谷選手は)エンゼルスにいた時から好きな選手だったんです。冗談抜きで現在のベーブ・ルースだと思う。打撃もすごいけど、また投手として投げる日が待ち遠しいよ」 

 青のユニフォームの男性をドジャースファンへ勧誘成功した年配の男性は、白のユニフォームを着用。

「うちは昔からドジャース一筋でさ。今まで買ったユニフォームはドジャースで引退した選手のユニフォームばかりだよ。だって、現役の選手は移籍することがあるじゃないか。初めて現役の選手で買ったユニフォームが大谷なんだ。ドジャースに入団したら、すぐに買ったんだ。買った理由?だって、すごい選手だからさ」

家族で「ドジャース17」のユニフォーム着用も!

 筋金入りのドジャースファンから気に入られているとは。他のドジャースファンはどうだろうか?

 カリフォルニアで生まれ育ったという男性は、大谷ではなく、コービー・ブライアントの背番号が入ったユニフォームを持っていた。コービーは、ロサンゼルス・レイカーズに20年在籍した元バスケットボール選手である。「僕は、地元の全てのプロスポーツチームを応援している。一番好きなアスリートは(亡くなった)コービー・ブライアントさん。今も尊敬している。大谷選手? カリフォルニアに来たんだから、もちろん応援してるよ」と好意的に受け止めてくれていた。

 この日は、「ユース・野球/ソフトボール・デー」ということで、ユニフォームを着た野球/ソフトボールの子供たち、その両親ら、コーチなど大勢の人たちが試合観戦を楽しんだ。ある家族は両親と息子2人で来場。長男が自身のチームのユニフォームを着て、両親と次男が大谷のユニフォームを着ていた。

 ブカブカのユニフォームに身を包んだ次男くんは「(大谷選手の)バッティングもピッチングも両方好き!」とニッコリ。両親のユニフォームも「次男が選んだ」とのこと。だが、お父さんの本音は「僕はメキシコ系だから、本当はメキシコ系の選手のユニフォームを買いたかったんだけど。今、ドジャースにはメキシコ系の選手がいなくて、大谷も素晴らしい選手だと思うけど」と、ちょっぴり残念そう。

 また、別の家族は両親と息子一人で来場し、父親が大谷のジャージー着用。やはり、息子が大谷のファンだと言う。「息子が僕の分を選びました。(息子は)少年野球のチームでピッチャーをやっていまして、打席にも立ちます。投打で結果を残している大谷翔平選手は、息子にとって理想的で模範的な選手です。『大谷選手が頑張ってるんだから、お前も頑張ろう』と息子を励ますこともあります」

大谷には「王の風格を感じます」

 2人とも大谷のユニフォームを着た、あるアメリカ人のカップルも「大谷は投打にすごい」と感心した。さらに、「去年10月に日本へ旅行しまして、どのくらい日本国内で人気があるか分かりました」と日本人ファンの熱量を感じたらしい。

 球場にいると、ちらほら日本語も聞こえてくる。ゴールデンウィークを利用して、日本から観に来たというファンもいた。ある女性は、大谷に感謝していることがあると言う。「大谷選手がロサンゼルス・エンゼルスに在籍していたからマイク・トラウトのファンになり、エンゼルスの結果もチェックするようになりました。トラウト選手のことを知るきっかけとなったことを大谷選手に感謝しています」。現在、トラウトは怪我でチームを離脱し、エンゼルスも低迷してることに対し、「そうなんですよね……」とちょっとしょんぼり。

 日本人男性2人組もゴールデンウィークと有給を利用して渡米。一人は山本由伸のユニフォームを、もう一人が大谷のユニフォームを着ていた。大谷ファンの男性は、大谷の「力強いところ」が好きだと言う。「(大谷が)結果を出しはじめてから良い選手だなと意識するようになりまして。(今の大谷には)王の風格を感じます」

 ある年配の日本人男性は「実力があるから好きだ」と語ってくれた。「大谷選手が高校の時から良い選手だと思っていた。(二刀流を含め)こんな選手は現れないと思う。今年は三冠王を取ると信じている。あとは怪我さえなければと願う」

 当の大谷は、その実力を存分に発揮した。ドジャース対ブレーブス戦、2番指名打者で出場し、今季初の1試合2本塁打を含む4打数4安打。まずは1回無死一塁、フリードのカーブを捉えた。

 今季9号は先制の2ラン。入ったと分かった瞬間から観客席は大いに盛り上がる。大谷も一塁を回ってから、右手を突き出した。ベンチでチームメートらに祝福されると、満面の笑みを見せた。その後も大谷は絶好調。3回に左前打、6回に中前打。

試合後、リトルトーキョーに向かうと…

 さらに4−1とリードして迎えた8回無死。ミンターの初球を捉え追加点となる10号ソロを放った。生還するとチームメートのテオスカー・ヘルナンデスからお決まりのひまわりの種シャワーで祝福された。

 ドジャースがブレーブスに5−1で勝利し、試合後のフィールドで大谷はインタビューに答えた。インタビューが終わると、観客席の歓声に応えて、すっと手を上げてから、颯爽とクラブハウスへ引き揚げた。

 試合後、筆者はロサンゼルス市の日本人街リトル・トーキョーへ向かった。日系のホテル「都ホテルロサンゼルス」の壁に巨大な大谷翔平が描かれている。スマホで撮影している日本人の方がいたので、声をかけてその姿を撮らせてもらった。試合を観に行ったというので、大活躍しましたね、と言うと、そうそう!と笑顔でうなづいてくれた。

 翌日、大谷はドジャースに移籍後初めてナショナルリーグの週間最優秀選手「週間MVP」に選ばれた。4月29日〜5月5日の対象期間中の5試合で21打数11安打の打率5割2分4厘、3本塁打、7打点を記録した。

 大谷は、国境を越えて、その実力で野球ファンを魅了し続ける。

文=南しずか

photograph by Shizuka Minami