5年ぶりに古巣・DeNAベイスターズに復帰した筒香嘉智外野手の初インタビュー。後編では、5年ぶりに戻ってきたチームとチームメイトの印象、また復帰から熱い声援を送ってくれるファンへの想いを語ってもらった。<NumberWebインタビュー全2回の後編/前編も公開中>

三浦監督からの電話「待っているぞ」

 5月6日の復帰初戦では球場に到着してロッカールームで挨拶をすると、周囲の選手たちが沈黙。いきなり山﨑康晃投手が渡米前に流していた音楽を爆音で流すと、主将の牧秀悟内野手の掛け声を合図にどんちゃん騒ぎになった。選手、スタッフが事前に打ち合わせた「サイレントトリートメント」での歓迎式も、筒香が一気にチームに溶け込むきっかけになっている。

筒香「チームは牧くんがキャプテンをしていて、相変わらず前と同じベイスターズらしいチームだなって(笑)。チーム全体の雰囲気はすごくいいですよね。5年前と大枠で言ったらあまり変わっていない感じです。ただ久しぶりに帰ってきた僕に対しては、いろんな選手が気を遣ってくれているんだろうなというのを感じます。スッと入れたのは選手とかスタッフの方がかなり入りやすい環境を整えてくださっているからだな、というのがいまの僕の正直な気持ちです」

 三浦大輔監督とは監督の現役時代に共にプレーをした経験もあり、サンフランシスコ・ジャイアンツを自由契約になり、日本球界復帰が騒がれ出したときには、電話でひとこと「待っているぞ」と連絡をもらった。

筒香「ファームで調整している時も、三浦監督からは直接、連絡をいただいたり、今も毎日『身体の状態はどうだ?』とかコミュニケーションをよくとっていただいています。一軍に上がってからは6番、5番、3番、4番と打順も変わっていますが、僕の中ではどこを打ちたいとかそういうのはないですし、監督にも『何番でも言われたところで行かしていただきます』とお伝えしています。変更あった時は準備がしっかりできるように、事前に伝えていただいてますね」

「牧くんはすごい真面目、真面目!」

 筒香がチームを去ったのは2019年のオフ。当時は佐野恵太外野手はまだ控えで、筒香がチームを去ったことでチャンスを掴んで中心選手へと成長していった。またキャプテンの牧は筒香がいなくなった翌20年のドラフト指名での入団で接点は全くなかった。入団後は筒香にとっても成長のきっかけとなったワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の日本代表も経験し、今は押しも押されもしないチームの大黒柱となっている。

筒香「牧くんはすごい真面目、真面目! 真面目で熱い男だと思いますね。もちろん毎日、練習やベンチ、ロッカーでコミュニケーションをとっていますけど、まあまだチームがどうのこうのとか、そういう話はしていないですね。牧くんだけでなく、僕がいた頃から一緒に戦っていた選手のムードも変わってきているなと思います。宮﨑さんは元々先輩ですから、特に何かというのはないですけど、恵太とか桑原(将志外野手)とかですね。で、1番変わったのは康晃(投手)じゃないかなと思います」

 山﨑は4月18日に横浜スタジアムで行われた筒香の復帰会見に桑原、柴田竜拓内野手らと駆けつけ、一塁ベンチから復帰を祝った一人だ。7点差をひっくり返した5月11日の阪神戦では7対9と2点差を追う8回に5番手で登板。1安打無失点に抑えると、その裏に蛯名達夫外野手の同点弾と筒香の決勝弾で逆転。お立ち台に立った際には、勝利投手となりベンチに戻ってからも仲間を鼓舞する山﨑の姿に、筒香が「思うものがあった」と語っていた。

筒香「優勝を本気でしたい。彼なりにチームに対して思っている部分があると思うんですけど、それを本気でやっている。『ちょっとホントに、みんなやろうぜ!』という感じですね。康晃の言動を見ていて、僕はそこを凄く感じます。彼も元々は表に出て、あまり話をするタイプではなかったと思うんです。でも自分がチームに対して言葉を発する必要性とか、彼の中でかなりそういう意識が上がったんじゃないかなというのを感じますね」

 フランクで明るく、楽しく野球をする。そんなベイスターズのチームカラーはずっと変わっていない。でも、その中で勝つことへの渇望を選手がしっかり持ち出している。そのために自分が何をしなければならないのか。そのことを選手個々が考えるチームになっていた。そこが4年間、離れていた間のベイスターズの一番の変化だった。

筒香「外身(そとみ)は正直、今まで通りのベイスターズだなって見えると思うんですけど、中に入ると『あれ、全然違うじゃん!』というのをめちゃめちゃ感じています」

いまも頭の中に刻み込まれた試合の景色

 このチームで優勝することが日本球界に復帰する際の1番のカギとなったと語る筒香にとって、そんな選手たちとの信頼関係がチームに溶け込んでいく潤滑剤となったのかもしれない。そしてもう一つ、筒香がここまで早くチームに溶け込んでくために大きな役割を果たしたのが、熱烈なファンの声だった。巨人入りが報じられた際に「ネットが荒れた」ことが、むしろベイスターズファンの自分に対する想いと感じて、それもまた古巣復帰を後押しする1つの材料となったように、ファンの声にはいつも耳を傾け、そこから勇気をもらっている。

筒香「横浜スタジアムの声援……アメリカに行く前の、最後になったクライマックスシリーズの試合(2019年10月7日、阪神戦)の景色は、僕の頭の中にいまでもあるんです。その試合に負けてシーズンが終わってしまったんですけど、ずっとその景色は僕の中に刻み込まれていました。またチームに帰ってきて、再び横浜スタジアムのあの声援、大歓声をいただいたときに、本当に自分は幸せ者だなと思いました。ただ帰ってきて1試合目にはそう思って、ありがたいことだなと思っていましたけど、いまはちょっと違うんです。やっぱりこの声援を受けると『ちょっとやらないかんな!』『絶対に勝たないかんな!』という気持ちが、なおさら大きくなっていく。いまはそんな風に感じています」

横浜高校時代に見たベイスターズの試合

 入団会見でも筒香はファンに感謝の言葉を何度も語った。そのとき思い出していたのは、空席だらけだった入団当時の景色だった。横浜スタジアムが連日、満員になる光景を目にして「隔世の感を感じる」とも語っていた。

筒香「横浜高校時代に渡辺(元智)監督に『プロのナイターの試合を見て勉強してこい』ってチケットをいただいたことがあったんです。初めて横浜スタジアムでベイスターズの試合を見たんですが、あまりにガラガラで『エッ、これで本当に試合始まるのかな』って思いましたからね(笑)。横浜高校が横浜スタジアムで試合をやる時はいつも超満員で、そういう横浜スタジアムしか見たことがなかったですから。そんな感じだったので、本当に球団の方の努力と選手の頑張りもあったと思います。僕はアメリカでマイナーの試合とか経験して、やっぱり観られる、観ていただけるというのは選手にとっても大事なことだなと思いました。マイナーでプレーしたことで、多くの人に観られることが、すごく大きなことなんだと実感しましたし、観られることが選手の力になると思いました。いまのベイスターズでも僕以外の選手もずっとそういう力を感じていると思いますし、感じていないとしても自然にエネルギーが上がっていっているんだろうな、と。それはあの声援の中でプレーしていて、いつも思うことですね」

ベイスターズに戻ってきてよかった?

 バッティングを含めてまだまだ試行錯誤の連続だが、それでも日々、何かを掴もうともがきながら、グラウンドに立っている。それもまた筒香らしいといえば筒香らしいのかもしれない。2月の渡米前に5年目に突入するメジャー挑戦について、なかなか思うように結果を残せず、それでも諦めずに挑み続ける思いを聞いた。そこで嫌になる瞬間があったのではという問いに「それはもちろんです。本当に楽しいのかって言われたら、もちろん楽しくなかった。毎日が楽しいかって聞かれたら、いやそれは楽しくないよ、って純粋に答えると思います」と答えていた。ただその中でもメジャーで活躍できる選手になりたいという思いを原動力に挑み続けてきたのである。そして日本球界に戻ってきた筒香のインタビューの最後にこう問うた。

 戻ってきてよかった? 今は幸せ?

 その答えはこうだった。

「まあその話になると5時間くらいかかりますけど(笑)。でもいまはベイスターズのプレーヤーとなったので、ベイスターズで良かったなと思っていますし、幸せです」

 筒香は故郷に帰ってきた。

<前編から続く>

文=鷲田康

photograph by JIJI PRESS