ペナントレースは40%程度消化した段階だが、この時点での「新人王有資格者」の成績を見てみよう。

 新人王有資格者は、

・海外のプロ野球リーグに参加した経験がない、支配下に初登録されてから5年以内
・投手:前年までの一軍登板回数が30以内
・打者:前年までの一軍での打席数が60以内

 となっている。まずはセ・リーグの打者と投手から(数字はすべて6月10日時点)。

セ野手:中日の田中が53試合に出場

〈セ・リーグ、新人王有資格者の野手。安打数順〉
 田中幹也(中)53試164打38安1本12点2盗 率.232
 度会隆輝(De)31試117打27安3本11点2盗 率.231
 萩尾匡也(巨)41試122打26安2本10点0盗 率.213
 佐々木俊輔(巨)40試111打26安0本5点2盗 率.234
 石上泰輝(De)26試71打13安0本3点2盗 率.183
 田村俊介(広)22試66打12安0本2点0盗 率.182
 泉口友汰(巨)30試67打11安0本4点1盗 率.164
 二俣翔一(広)26試34打6安1本3点1盗 率.176
 井上広大(神)9試24打5安0本2点1盗 率.208
 赤羽由紘(ヤ)16試31打5安0本2点3盗 率.161
 中川颯(De)10試11打3安1本3点0盗 率.273
 井上絢登(De)13試21打3安0本2点0盗 率.143
 岩田幸宏(ヤ)27試18打2安0本0点2盗 率.111
 松尾汐恩(De)8試12打2安0本0点0盗 率.167
 久保修(広)19試17打1安0本0点0盗 率.059

 安打を打っている有資格者は15人。中日の田中は二塁手として53試合に出場、最多の38安打を打っている。

 DeNAの度会は、昨年ドラフトで3球団競合を経て入団。開幕戦に1番右翼で先発、広島の九里亜蓮から第2打席でホームラン。これがNPBの2024シーズン第1号でもあった。派手な活躍で一躍注目されたが、5月16日に登録抹消となった。同じくDeNAの中川は投手ながら3安打1本塁打3打点を記録している。

 巨人の佐々木俊輔も開幕戦に1番中堅で先発、初安打、初打点を挙げたが彼も5月20日に登録抹消。華々しいデビューをした選手が先細りになり、現時点では新人王の有力候補は見当たらない。

セ投手:西舘に船迫、打力ある中川、カープ黒原と多士済々

〈セ・リーグ投手 投球回数順〉
 中川颯(De)10登2勝0敗0S0H 39回19振 率5.54
 黒原拓未(広)18登1勝2敗0S0H 22.2回28振 率1.59
 徳山壮磨(De)22登0勝0敗0S6H 22.2回10振 率1.99
 西舘勇陽(巨)22登1勝2敗1S17H 20回15振 率2.70
 船迫大雅(巨)22登0勝0敗0S12H 16.2回13振 率2.70
 岡留英貴(神)14登0勝0敗0S2H 15.2回12振 率2.30
 松本健吾(ヤ)3登1勝1敗0S0H 14.1回12振 率4.40
 丸山翔大(ヤ)13登0勝0敗0S4H 13回9振 率0.69
 富田蓮(神)6登0勝0敗0S1H 10.2回5振 率0.84
 松本凌人(De)8登0勝0敗0S1H 9.1回3振 率2.89
 土生翔太(中)5登0勝0敗0S0H 8.2回8振 率5.19
 益田武尚(広)10登0勝0敗0S3H 8.1回9振 率6.48
 河野佳(広)5登0勝0敗1S0H 7回8振 率3.86
 門別啓人(神)4登0勝1敗0S0H 7回4振 率5.14
 又木鉄平(巨)1登0勝0敗0S0H 6回2振 率0.00
 石田裕太郎(De)1登1勝0敗0S0H 5回2振 率1.80
 京本眞(巨)4登0勝0敗0S0H 5回3振 率3.60
 小園健太(De)1登0勝1敗0S0H 2.2回3振 率16.88
 柴田大地(ヤ)1登0勝0敗0S0H 2回2振 率4.50
 松井颯(巨)2登0勝0敗0S0H 1.1回1振 率13.50

 昨年のドラフト1位、巨人の西舘は早くも17ホールド。4月26、30日と2登板連続で負け投手になった以降は安定した投球を見せている。同じく船迫(ふなばさま)も12ホールドを挙げている。

 前出のDeNA中川は、オリックス育成からDeNAに移籍。支配下登録を果たし2勝。防御率こそ良くないが、もし新人王を獲得すれば、史上初の「移籍を経ての新人王」となる。

 広島の黒原は2021年のドラ1、今季は先発で2連敗してから救援に転向し、安定感のある投球。ただセーブ、ホールドのシチュエーションでは投げていない。DeNAの石田は昨年のドラ5。6月9日、登録され即先発。ソフトバンク戦で初勝利を挙げた。セ・リーグは現時点では西舘が有望だが、決定的とまではいかない。特に野手陣の奮起に期待したい。

パ野手:ソフトバンク育成コンビと海野が奮闘

〈パ・リーグ野手。安打数順〉
 川村友斗(SB)39試78打22安0本6点3盗 率.282
 海野隆司(SB)26試47打7安1本6点0盗 率.149
 上田希由翔(ロ)10試23打5安0本3点0盗 率.217
 廣瀨隆太(SB)11試31打5安0本1点0盗 率.161
 山村崇嘉(西)6試20打3安1本4点0盗 率.150
 村田怜音(西)4試13打3安0本1点0盗 率.231
 平良竜哉(楽)17試21打3安0本3点0盗 率.143
 横山聖哉(オ)4試13打2安0本0点0盗 率.154
 緒方理貢(SB)33試22打2安0本0点1盗 率.091
 仲田慶介(SB)20試13打2安0本0点0盗 率.154
 宮崎一樹(日)4試5打1安0本0点0盗 率.200

 安打を放った選手は11人しかいない。このうち5人がソフトバンク。快進撃の背景に新人野手の起用があった。

 川村は2021年育成2位、俊足外野手として周東佑京を脅かす存在だが、すでに10四球と出塁率も高い。緒方、中田も育成上がりだ。海野は2019年ドラフト2位、新人王資格最終年の今年、捕手として甲斐拓也と併用されるまでになっている。

パ投手:西武の武内らが好投。今後の注目は…

 続いてはパ・リーグの投手。一軍で投げた投手は33人いるが、5イニング以上投げた19人を紹介する。

〈パ・リーグ投手〉
 武内夏暉(西)7登4勝0敗0S0H 49.2回34振 率1.27
 金村尚真(日)15登1勝2敗0S6H 44.1回37振 率2.03
 福島蓮(日)5登1勝0敗0S0H 27回18振 率2.67
 高島泰都(オ)13登0勝1敗0S4H 23.1回15振 率3.86
 齋藤響介(オ)4登1勝0敗0S0H 19.1回17振 率0.47
 古田島成龍(オ)19登1勝0敗0S7H 18回15振 率0.00
 松井友飛(楽)4登1勝0敗0S0H 15.2回7振 率3.45
 吉川雄大(楽)10登0勝0敗0S0H 15回14振 率4.80
 西垣雅矢(楽)15登1勝2敗1S0H 14.1回10振 率5.02
 松田啄磨(楽)6登0勝0敗0S0H 13回6振 率2.77
 古謝樹(楽)2登1勝1敗0S0H 12回6振 率3.00
 豆田泰志(西)11登0勝1敗0S0H 11.1回6振 率6.35
 矢澤宏太(日)13登1勝1敗0S2H 11回9振 率3.27
 長谷川威展(SB)12登4勝0敗0S2H 10回5振 率1.80
 高野脩汰(ロ)4登0勝1敗0S0H 9回10振 率4.00
 畔柳亨丞(日)5登0勝0敗0S0H 6回1振 率4.50
 佐藤一磨(オ)1登1勝0敗0S0H 5回3振 率0.00
 田中晴也(ロ)1登0勝0敗0S0H 5回6振 率0.00
 菅井信也(西)1登0勝1敗0S0H 5回4振 率3.60

 ここに挙げた有力選手のシーズンここまでを振り返っていこう。

 西武の武内は早くも4勝、新人ながら最下位西武の先発の柱になっていたが、6月4日NPB感染症特例で抹消された。日本ハムの金村は救援投手として6ホールド、5月8日から先発に転向するも5先発で2敗と結果が出ていない。

 主力投手の戦線離脱が続くオリックスは高島、齋藤、古田島と新人王有資格者が救世主的な活躍を見せている。古田島は開幕から19試合、まだ無失点。さらに6月9日には育成から支配下登録された大型左腕・佐藤一磨が巨人戦で初先発初勝利を記録した。

 なおソフトバンクの長谷川は救援ながら4勝しているが、日本ハムから今季移籍。新人王をとれば彼も初の「移籍を経ての新人王」になる。

 パ・リーグでは西武の武内が一歩抜きん出た印象があるが、まだ確定的ではない。

 例年、前半戦の時点では規定打席、規定投球回数に達した新人王有資格者が数人はいるものだが、今年はなし。今季はやや小粒の感がある。ということは、これから一軍登録される選手でも可能性があるということだ。新勢力の台頭に期待したい。

週間記録セ:大瀬良がノーヒットノーラン

【2024年6月3日〜6月9日 週間成績】
〈セ・リーグ〉
・今季成績
 広 島55試28勝23敗4分 率.549
 阪 神59試29勝26敗4分 率.527
 巨 人60試29勝27敗4分 率.518
 中 日59試25勝29敗5分 率.463
 DeNA58試26勝31敗1分 率.456
 ヤクルト58試24勝30敗4分 率.444

・10週目の成績
 ヤクルト6試5勝1敗0分 率.833
 広 島6試4勝2敗0分 率.667
 阪 神6試3勝3敗0分 率.500
 DeNA6試2勝4敗0分 率.333
 巨 人6試2勝4敗0分 率.333
 中 日6試2勝4敗0分 率.300

 交流戦第2週は18勝18敗と五分の成績。ヤクルトは日本ハムに1敗しただけと快調。阪神は3連敗のあと3連勝。この結果、セは首位広島から6位ヤクルトまでのゲーム差が5.5差と混戦模様となっている。

〈打撃成績5傑〉※打撃の総合指標、RC=Run Created順
 オースティン(De)24打9安2本6点 率.375 RC7.10
 細川成也(中)21打9安2点 率.429 RC6.30
 中野拓夢(神)26打9安3点 率.346 RC6.01
 筒香嘉智(De)16打6安1本4点 率.375 RC5.80
 サンタナ(ヤ)20打7安2本6点 率.350 RC5.24

 DeNAのオースティン、筒香の2選手が中軸らしい活躍。本塁打はオースティン、ヤクルトのサンタナの2、打点はオースティン、サンタナに阪神の森下翔太の6が最多。巨人の立岡宗一郎が2盗塁を決めている。

〈投手成績5傑〉※リーグ防御率に基づくPR=Pitching Run順
 大瀬良大地(広)1登1勝9回 責0率0.00 PR2.30
 才木浩人(神)1登1勝8回 責0率0.00 PR2.049
 森下暢仁(広)1登1勝8回 責0率0.00 PR2.049
 ヤフーレ(ヤ)1登7回 責0率0.00 PR1.79
 大竹耕太郎(神)1登6.2回 責0率0.00 PR1.71

 広島の大瀬良は6月7日のロッテ戦で史上90人目102回目のノーヒットノーラン、前週の巨人、戸郷に次いで今季2度目。阪神の才木は9日の西武戦で8回1死までノーヒット。救援ではヤクルト田口麗斗が3セーブ、中日の松山晋也、藤嶋健人が3ホールドを挙げた。

週間記録パ:“監督交代”も西武が苦しんでいる

〈パ・リーグ〉
・今季成績
 ソフトバンク56試37勝17敗2分 率.685
 ロッテ57試29勝23敗5分 率.558
 日本ハム56試30勝24敗2分 率.556
 楽 天57試27勝29敗1分 率.482
 オリックス58試26勝30敗2分 率.464
 西 武57試18勝39敗0分 率.316

・10週目の成績
 オリックス6試5勝1敗0分 率.833
 楽 天6試5勝1敗0分 率.833
 ソフトバンク6試4勝2敗0分 率.667
 ロッテ6試2勝4敗0分 率.333
 日本ハム6試2勝4敗0分 率.333
 西 武6試0勝6敗0分 率.000

 下位に低迷していた楽天とオリックスが盛り返す。松井稼頭央監督が休養した西武は7連敗となっている。

〈打撃成績5傑〉
 万波中正(日)26打13安1本2点 率.500 RC8.07
 柳町達(SB)24打12安4点1盗 率.500 RC7.25
 近藤健介(SB)19打9安4点 率.474 RC6.33
 西川龍馬(オ)24打10安6点1盗 率.417 RC5.468
 太田椋(オ)22打8安1本3点 率.364 RC5.467

 日本ハムの万波が5割の活躍。ソフトバンクは柳田悠岐が今季絶望の負傷をしたが代役の柳町が活躍。本塁打は楽天、小郷裕哉の2、打点も小郷の7、盗塁は柳町、オリックス西川ら11選手が1回成功した。

〈投手成績5傑〉
 種市篤暉(ロ)1登1勝8回 責0率0.00 PR2.71
 東晃平(オ)1登1勝8回 責0率0.00 PR2.71
 早川隆久(楽)1登1勝7回 責0率0.00 PR2.37
 加藤貴之(日)1登7回 責0率0.00 PR2.37
 佐々木朗希(ロ)1登1勝6回 責0率0.00 PR2.03
 スチュワート・ジュニア(SB)1登6回 責0率0.00 PR2.03

 ロッテの種市は6月5日の巨人戦で8回零封。オリックスの東も7日の巨人戦で8回零封。救援ではオリックスのマチャドが4セーブ、同じく本田仁海、吉田輝星が3ホールドを挙げた。

文=広尾晃

photograph by Kiichi Matsumoto