ドジャース移籍1年目の大谷翔平。今や彼の一挙手一投足は日本中が注目している。そんな大谷は5月終了時点で打率.326、ホームラン14本、盗塁13という成績を残し、ドジャースも地区1位と順調な滑り出しを見せている。

 5月だけの成績に限ると大谷は打率.312、7本塁打、8盗塁を記録。大谷の場合、多くの人が期待しているのはホームランだが、現地時間5月4日〜6日までは4本と固め打ち。14日と17日にも1本ずつ放っているが、その次の快音(29日)まで9試合空いた。その9試合中4試合は無安打に終わっており、月初のハイペースぶりから見れば、やや尻すぼみ感を覚えたファンも少なくないだろう。

 そんな5月までの大谷の活躍について、NHKで長らくMLB中継の解説を務める武田一浩氏(元日ハム、ダイエー、中日、巨人)は「いやいや、期待通りでしょう」と述べる。

「みんな、大谷への期待値が上がりすぎているんですよ。今シーズンは、エンゼルス時代のように、一気に調子が悪くなって、からっきし打てないというゲームもないし、打率も3割を超えていますから、期待通りです。エンゼルス時代の打率は2割台後半が多かったですが、今年は打者に専念していることもあり、3、4分も上がっているんですよ。去年までとは、打者としてのレベルが全然違います。しかも、大谷に対しては各チーム、左ピッチャーを投げさせるなど対策をしていますから、そのなかで3割を維持しているのはすごいことです。本人も、目標はワールドシリーズ制覇と語っているので、チームのためにも打率をあげようという気持ちが強いのではないでしょうか」

「外野手が追わないホームランが多い」

 ホームランについても今年の大谷の打球は格段にレベルアップしているという。

「今年は、完璧に捉えて、打った瞬間ホームランだとわかる打球が増えました。外野手が一歩も動かないホームランも多いので、それほど完璧な当たりだということです。特に、センターからライト方向の打球は外野手が追わないケースが多いですね」

 このような大谷を象徴するようなホームランは4月21日のメッツ戦での1発だと武田氏は言う。これは、松井秀喜を超え、日本人のMLB最多記録となった大谷のMLB通算176本目のホームランである。

「打ったのは131キロのスライダー。打った瞬間、ピッチャーとキャッチャーはガクッとうなだれ、ライトは一歩も動かず、後ろを振り向きもしませんでした。打球速度も177キロ、飛距離129メートルと完璧な当たりでしたね。こういうホームランが今シーズンは増えてきています」

NHK解説で思わず「え?」

 まだシーズンは始まったばかりだが、大谷は毎年6月から調子が上がり、ホームランを量産する傾向にある。武田氏も「ピッチャーもバテてくるから、数を稼ぐと思う」と予想するが、ひとつだけ懸念点があるという。

「中継を見ていると、大谷の打席では審判のストライクゾーンが広くなっています。大谷が余裕で見送っている低めのボールが、ストライクを宣告されることもありますね。MLBのアウトコースは日本と比べて広いことは有名ですが、それにしても特に左ピッチャーのときは広いと感じますね。僕も解説で『え?』と言ってしまうときがありますから」

 例えば5月15日のジャイアンツ戦で大谷は、低めと外の明らかなボール球をストライク判定されていた。特に低めの1球は、低めから低めに外れる変化球であった。あまり深く詮索はしたくないが、審判は誰にでも公平とは限らないのだろう。ちなみに、この判定に対し、大谷は首を傾げる仕草をするなど不満をあらわに。疑惑の判定の影響もあるのかは不明だが、大谷の変化を武田氏は指摘する。

「最近、取材後のインタビューで表情を出すようになりましたね。打てない時とかに、ちょっと怒っている感じ。ただ、そういう環境を乗り越えて今までも打ってきたので、大谷にとって大きなハードルにはならないでしょうけど」

今季予想「40〜50本は打つ」

 それでは、現状を見るに、大谷は最終的にどれほどの成績を残すのだろうか。

「今シーズンは40〜50本は打つと思います。残り100試合近くあって、(年間40本ならあと)25本なので軽く打つでしょうね。盗塁も40はします。大谷は年々成長しているので、見ている側にとってもワクワク感が半端じゃないですよ。大体の野球選手は30歳頃で成長が止まるんですが、大谷は止まらないし、成長の限界が予想できない。バリー・ボンズが記録したMLB最多73本塁打も抜いてくれそうなスケールがありますね。先発が比較的長いイニングを投げていた当時と違って、現在はショートイニングを投げるピッチャーが増えました。そのなかで70本打ったら、本当にすごいです」

今永昇太がなかなか勝てなかった理由

 一方、今シーズン大谷と並んで注目される日本人選手はカブスの今永昇太だろう。今永は開幕から無傷の5連勝を飾り、防御率も0点台という驚異的な数字を残していた。

 しかし、その後なかなか勝ち星を挙げることはできずにいる(※6月9日のレッズ戦で6勝目を挙げた)。今永について武田氏はこう指摘する。

「さすがに疲れがでたのでしょう。5勝目までは中5日での登板でしたが、途中で雨でスライドして中10日になりましたね。あれで、張り詰めていた気持ちも抜けたんだと思います。試合感覚も鈍っていたでしょうし。そういうときのピッチャーは2登板くらい内容が悪くなってしまうものです。事実、低めを狙ったボールが高めにいって、打たれていました。なので、今永については次の登板でいかに修正するか。また、現状真っ直ぐとスプリットの2球種で抑えていますが、他のスライダーやカットボールをいかに使っていくか。おそらく、スライダーなどはMLBのボールに合わず、曲がり方がしっくりきていないのではないでしょうか。今後、さらに勝ち星を挙げるには、そこのアジャストをして、投球の幅を広げられるかどうかでしょうね」

 大谷も今永も6月に、どこまで数字が伸びるか楽しみにしたい。武田氏には6月終了時点で、再び彼らの総評を行なってもらう。

文=沼澤典史

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