“6月男”のドジャース大谷翔平選手(29)が、本領発揮となってきた。16日(日本時間17日)のロイヤルズ戦から7試合で6発。3割5厘まで下がっていた打率も3割2分前後まで戻し、再び打撃三冠を狙える位置に上がった。最近では本塁打を打てば、両手を左右にフリフリする「フレディ(・フリーマン)ダンス」のパフォーマンスが流行りだが、ベンチ前でのセレブレーションは開幕から変わらず。ヒマワリの種のシャワーを浴びている。

 発案者は「ミスター・シーズ(種)」のニックネームがある、テオスカー・ヘルナンデス外野手(31)だ。メジャーリーガーたちの“おやつ”のように各チームのベンチに用意されているヒマワリの種。大谷が待望の移籍後1号を放った4月3日、ヘルナンデスは「僕がアストロズからブルージェイズにトレードされた17年に、セレブレーションでやっていたんだ。どのチームにも祝福の儀式があったけど、ここ(ドジャース)はなかったから、投げてみたよ」と明かした。

ヘルナンデスが大谷にスペイン語を教えて…

 春キャンプの初日からウォーミングアップの際などに大谷の隣で会話を交わし、仲良さげな姿が目立っていた。ある時、動画を撮影していたヘルナンデスの背後から大谷が「ブエノス・ディアス(おはよう)、ファナティコ(ファンの皆さん)」とスペイン語を教えてもらいながら、動画に乱入するシーンも大きな話題を集めた。

 ドミニカ共和国出身の31歳で、4歳、3歳、1歳の男児を持つパパ。試合後、まだ小さな息子たちと手をつなぎ、優しい笑顔で歩く姿が見られることもある。「9月に、一番小さな子が誕生日を迎えるんだ。その頃に、プレーオフ進出が決まって、お祝いできればいいなって。10月は自分の誕生日(10月15日)も祝えるしね」と笑った。大谷が目指すオクトーバー・ベースボール。ヒマワリの種のシャワーが出れば出るほど、世界一へ近づくはずだ。

「僕たちが好きな野球をエンジョイしよう」

 高校生の頃、野球以外にバレーボール、ソフトボール、バスケットもプレーしていた。だが、「野球に情熱を注いだ。なんでだろう、僕は野球をやるために生まれてきたのかな」と笑った。ドジャースで世界一を目指しながら、エンジョイ・ベースボールの姿勢も忘れない。本塁打後のセレブレーションもその一環だ。

「楽しんで、僕たちが好きな野球をエンジョイしようと思っている。勝つこと、楽しむことが、僕にとっては野球をやる上で最も大事な2つだからね」

 そのマインドは、大谷とも重なる。好きな野球に熱中し、楽しみ、勝って世界一を目指す。昨年12月に行った入団会見で、大谷は言っていた。

「一番大事なのは、やっぱり全員が勝ちに、同じ方向を向いていること。オーナーグループも、フロントの皆さんもそうですし、もちろんチームメート、ファンの皆さんもそうですし、みんなが、そこに向かっているというのが一番大事かなと思います」

山本由伸離脱後は、大谷とロッカー“お隣さん”に

 同僚の1人として、テオスカー・ヘルナンデスも、どんな状況であろうと勝ちにいく姿勢を体現している。18日のロッキーズ戦では5点ビハインドだった9回に大逆転。代打ジェイソン・ヘイワード外野手(34)の満塁弾から1点差とし、大谷が安打で続き、チャンスを作ってヘルナンデスの逆転3ランが生まれた。全員が勝つことに集中している――。その象徴的な試合となった。

 打線に欠かせない主軸の1人で、6月22日の終了時点で打点54は大谷に次ぐチーム2位。18本塁打も2位だが、いずれも大谷を抜いた時期もあった。右肩の腱板損傷で山本由伸投手(25)不在となったロッキーズ戦から、敵地のクラブハウスではロッカーが大谷の隣となった。世界一を目指し、過酷なシーズンを戦っていくには、楽しみ、時にリラックスすることも大事なこと。その役割を、ヘルナンデスが自然体で担っている。

文=斎藤庸裕

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