サッカーパリ五輪代表の18人の人選が話題になっている。オーバーエイジ、この世代の選手もさらにはこの世代の有力選手数人も招集外となった状況を日本通のブラジル人記者はどう見たか。各国のメンバー状況とともに考察した。(全2回)

23歳以下の重要な選手も取り逃がした

「とても残念。ガッカリした。大岩剛監督は、A代表のレギュラークラスをオーバーエイジ(OA)で呼びたいと考えていたはず。監督として最良の結果を出したいわけだから、当然だ。しかし、JFAが(対象となる選手が在籍する)欧州クラブとの交渉にことごとく失敗し、結果として誰一人招集できなかった。のみならず、23歳以下の重要な選手数人も取り逃がしてしまった」

 普段は温厚な男が、怒っていた。

 7月3日、パリ五輪日本代表の大岩監督が、五輪に出場する18選手とバックアップメンバー4選手を発表した。日本サッカー協会(JFA)の山本昌邦ナショナルチームダイレクター(ND)も同席した。

 ブラジルのスポーツメディアきっての日本通で、今年3月から約3カ月間、日本に長期滞在して日本代表、J1から社会人まで多種多様なカテゴリーの26試合を観戦したチアゴ・ボンテンポ記者は、日本と日本のフットボールを心から愛するがゆえだろう、強く憤り、ひどく落胆していた。

――今年5月にパリ五輪アジア最終予選を兼ねたU23アジアカップが終了した時点で、あなたは「すべてのクラブが招集に応じるのであれば」という前提で、OAにCB冨安健洋(アーセナル)もしくは板倉滉(メンヘングラッドバッハ)もしくは町田浩樹(サンジロワーズ)、左サイドバック中山雄太(ハダースフィールド)、CF上田綺世(フェイエノールト)の招集を望んでいた。ところが、JFAはこの5人はおろか、誰一人、招集できなかった。

「私がこれらのポジションでのOA招集を望んだのは、日本がパリ五輪でメダルを獲得するためには選手層が薄いと思ったからなんだ」

チェイス・アンリも未招集…CBに関しては頭が痛い

――このうち、どのポジションのOA選手不在が最も痛いと思いますか?

「CBだね。私が名前を挙げた3人とも、CB以外のポジションでもプレーできる。仮に冨安と板倉の招集は困難でも、町田が在籍するのは中堅クラブだから招集できる可能性が高いと予想していた。それが、全員、ダメだとは――。おまけに、CBは23歳以下でもチェイス・アンリ(シュツットガルト)を招集できなかった。ひょっとしたら彼にも移籍の可能性があるのかもしれないが、CBに関しては頭が痛い」

――欧州でプレーする選手を招集できないのであれば、Jリーグのクラブに在籍する選手をOAとして招集する選択肢もあったのでは?

「そういう考えもあるだろうね。しかし、その場合、途中からチームに入るわけだから圧倒的な実力の持ち主でなければ意味がない。2016年のリオ五輪で、日本はCB塩谷司、SB藤春廣輝、FW興梠慎三の3人をOAとして招集した。しかし、彼らの招集は戦力アップには不十分で、日本はグループステージ3位で敗退した。

 格段に優れた選手を招集できないのであれば、U23アジアカップを戦って連係ができており、気心も知れている23歳以下の選手たちを起用した方がいいとも考えられる」

山田楓喜と佐野航大も18人入りの力があるだけに

――23歳以下の選手でも呼べなかった選手については後ほど聞くとして、選出に関して異論はありますか?

「MF山田楓喜(東京ヴェルディ)とFW佐野航大(NECナイメヘン)はバックアップメンバーとして選出されたけれど、2人とも18人の中に入ってしかるべきだ選手だと思う。

 山田の左足からのFKとミドルシュートは貴重な武器で、U-23アジアカップ優勝に大きく貢献した。その後、少しコンディションを落としてクラブで出場機会を減らしていたのは事実だけど、バックアップメンバーに置くのはもったいない。

 佐野もアグレッシブなプレーが持ち味の左ウイングで、オランダで活躍している。この2人を差し置いて、U23アジアカップで持ち味を発揮したとは言い難い佐藤恵允(ブレーメン)をメンバーに入ったのは、どうなのかなと思う」

4-3-3でチーム構成を考えるとどうなる?

――フォーメーションを4-3-3とした場合、どのようなチーム構成になると思いますか。

「GKは、レギュラーが小久保玲央ブライアン(ベンフィカ)で野澤大志ブランドン(FC東京)が控え。右サイドバックは、関根大輝(柏レイソル)と半田陸(ガンバ大阪)の争い。CBは高井幸大(川崎フロンターレ)と木村誠二(サガン鳥栖)がレギュラーで、西尾隆矢(セレッソ大阪)が2人の控えかな。左サイドバックは、レギュラーが大畑歩夢(浦和レッズ)で半田が控え。

 中盤は、アンカーが藤田譲瑠チマ(シント・トロイデン)で控えが川崎颯太(京都サンガ)。インサイドハーフは右が山本理仁(シント・トロイデン)と川崎、左が荒木遼太郎(FC東京)と三戸舜介(スパルタ)の争い。3トップは、右ウイングのレギュラーが平河悠もしくは三戸、控えが藤尾翔太(いずれも町田ゼルビア)。CFは細谷真大(柏レイソル)と藤尾の争いで、左ウイングはレギュラーが斉藤光毅(ロンメル)で佐藤が控え。

 半田は左右のサイドバックを、川崎はMFとボランチ、三戸はMFと両ウイング、平河は両ウイング、藤尾はCFと右ウイングを掛け持ちすることになるだろう。決勝戦以外はすべて中2日という過酷な日程だから、選手のローテーションが必要不可欠。大岩監督が多くの選手を試す過程で、自ずとベストメンバーが決まっていくはずだ」

マツキの不在はリーダーシップを踏まえると…

――今回のパリ五輪ではOAだけでなく、23歳以下の選手でも久保建英(レアル・ソシエダ)、松木玖生(FC東京)、鈴木唯人(ブレンビー)、GK鈴木彩艶(シント・トロイデン)、そして前述のチェイスらを招集できなかった。とりわけ、松木の招集外は大きな論議を呼んだが。

「チームが発足して以来、彼は常に主力だったからね。攻守両面でチームに貢献できる能力に加え、かつての中田英寿や本田圭佑にも通じる強いパーソナリティとリーダーシップの持ち主だから、彼の不在はチームにとって非常に痛い」

――鈴木彩艶と久保に関しては?

「ザイオンには、パルマ(イタリア)移籍の可能性が報じられている。 GKにはU23アジアカップで大活躍した小久保がいるから、ザイオンの不在は大きな問題にはならないと思う。久保はA代表にいつも招集されているから、クラブが五輪出場に難色を示すことは予想できた」

山本NDの「移籍の可能性発言」はどう思う?

――記者会見で大岩監督は松木を呼ばなかった理由について繰り返し聞かれたが、「招集しなかった選手についてはコメントを差し控える」と言い続けた。「コンディションの問題ではない」と明かすのが精一杯でした。ところが、山本NDは補足説明として「移籍の可能性があるから」とコメントした(注:メンバー登録された選手が五輪前に移籍して、移籍先のクラブが招集に応じない場合、規約上、協会は代わりの選手を補充できない)。山本NDの言葉をどう思いましたか?

「大岩監督の話だけではメディアとファンは松木が招集されなかった理由を理解できず、様々な憶測を呼んでいただろう。選手の移籍はクラブと選手にとって非常にデリケートな問題だが、そのことを百も承知した上で、山本NDが踏み込んだ発言をした。メディアとファンのことを考えると、適切だったと思う」

彼の不在はマツキ以上に痛いと考えている

――その他の23歳以下の選手で、不在が痛いと考えるのは誰でしょうか?

「鈴木唯人だね。このチームの発足当初からの中心選手で、攻撃の組み立てができて、点も取れる。所属するのは、いわゆるビッグクラブではない。五輪で彼が活躍すれば彼の市場価値が上がり、クラブにとってもメリットがあるはずだから、彼の招集は決して困難ではないと予想していた。もしかしたら移籍の可能性があるのかもしれないが、彼の不在は松木以上に痛いと考えている」

 選考について厳しめの言葉を並べたチアゴ記者。背景にはパリ五輪に出場する他国メンバーの状況もある。それを比較しながら、チアゴ記者に日本のパリ五輪展望を聞いていく。

<つづく>

文=沢田啓明

photograph by Koji Watanabe/Getty Images