「中日選手の新婚旅行でサプライズ」“仕掛け人”涌井秀章38歳の評判「イメージと違った」ドラ1・草加勝も160km右腕・勝野昌慶も驚いた“涌井の素顔”
Number Web6/17(火)6:00

「中日選手の新婚旅行でサプライズ」“仕掛け人”涌井秀章38歳の評判「イメージと違った」ドラ1・草加勝も160km右腕・勝野昌慶も驚いた“涌井の素顔” photograph by KYODO
西武、ロッテ、楽天を経て2023年シーズンから中日でプレーする涌井秀章(38歳)。「直接話してみるとイメージと違った」「結婚式でサプライズを……」。中日の若手選手たちが証言する「涌井先輩ってどんな人?」【全2回の1回目/2回目へ】
中日・涌井秀章(38歳)の存在感がチームで日に日に増している。
後輩にイタズラ…球場で見た“素顔”
西武、ロッテ、楽天でそれぞれ最多勝を挙げ、国際大会にも出場した大物右腕が中日に加入したのは2022年オフ。阿部寿樹とのトレードだった。経験豊富な中堅選手同士のトレードは少なからず、球界にインパクトを残した。涌井は、移籍初年の23年は21試合で5勝13敗、24年は16試合で3勝5敗とふるわなかったが、今季は6試合で3勝2敗、防御率2.91と好成績を残している(6月14日時点)。
同世代の私にとって、涌井秀章はスーパースターだ。横浜高時代からエリート街道を突っ走ってきた姿を、いち野球ファンとして遠くから眺めてきた。縁あって、新聞記者をしていた最後の年に取材をする機会に恵まれた。涌井の年齢から来る実力の低下を危惧する声もちらほら聞こえたが、実際に投球を見ればそんな雑音は払拭される。どれだけ打たれようが、表情ひとつ変えない立ち振る舞いには、「恐怖」すら感じることもある。そして何より、球界で唯一無二の投球フォームと、そこから繰り出されるフォーシームの色気……。
ナゴヤ球場での取材中、ある選手の車のワイパーをいたずらで上げ、颯爽と帰路につく涌井を目にした。そんな涌井“先輩”を、同僚たちはどう見ているのか。選手たちの証言から素顔に迫りたい。
「直接話してみるとイメージと違った」。複数の選手から聞こえてきた声だ。確かに涌井は、本拠地でのお立ち台でも、それが劇的勝利の直後だったとしても、淡々としている印象がある。そして何気ない口調で同僚をいじり、ひと笑いを起こしてクールに去っていく。インタビュアーも差され気味で、なんとなくとっつきにくさも感じなくはない。
梅津の結婚式で…涌井のサプライズ
右肘痛から復活を目指す梅津晃大(28歳)も、チームメイトになる前後でイメージが変わったという。入団当初から頻繁に声をかけてもらったといい、「投手陣で最年長ということもあるかもしれませんが、自然とコーチと選手を繋いでくれている。特に、若手投手に気を遣ってくれている」。涌井の親切心は「人を選ばない」と言う。
涌井からサプライズも受けた。一昨年12月に結婚を発表した梅津。新婚旅行先は6000キロ以上離れたハワイだった。
すでに旅行会社経由で旅行を申し込んでいた梅津だったが、結婚を涌井に報告すると、「現地にいる旅行会社の人に知り合いいるから、言っとくよ」とさらり。そしてホテルにチェックインすると「高層階」「オーシャンビュー」の部屋にグレードアップされていた……! 19時間の時差もお構いなしに、梅津は涌井へお礼のLINEを送った。
技術面でも涌井を尊敬している。「涌井さんのキャッチボールは、子供の頃に想像していたプロ野球選手のキャッチボールでした。糸を引くような低くて強い球です」。私も、記者時代に藤川球児(現・阪神監督)や、山井大介(現・中日投手コーチ)を見て、プロ野球の第一線で活躍するためのキャッチボールの重要性を目の当たりにしていた。それを同じプロ野球選手も感じていたのだ。
リハビリ中の“ドラ1”草加も証言
涌井と15歳以上離れた20代前半の投手たちも、涌井を慕っている。
23年のドラフト1位・草加勝(23歳)は昨年2月に右肘のトミー・ジョン手術を行い、長くリハビリ組にいた。当時、同組にいた涌井が、草加、岡田俊哉、仲地礼亜、トレーナーらを誘い「リハビリ組」で食事会を主催。鍋を囲んだという。
日本一過酷な練習環境、練習量で知られる亜大出身の草加から見ても、「涌井さんが走っていて、辛いとか苦しいとかいう表情を見たことがない。もちろんベテランなのである程度調整を任され自分で練習メニューを組めるとは思うんですけど、練習量、特に走る量がすごい」と目を丸くする。
若手選手に注意も…
今年、球団日本人最速の160キロを記録した勝野昌慶(28歳)は、涌井のポーカーフェイスに感心する。勝野自身もあまり表情を出さず、静かに闘志を燃やして打者と対峙するタイプだが、「涌井さんはもっとすごい」と舌を巻く。さらに、昨シーズン救援に失敗した時には、「いつも中継ぎに負担かけてごめんね、次はもっと頑張る」と連絡をもらい、奮い立った。
他にも話を聞いた、森博人や仲地、野手の田中幹也や鵜飼航丞、後藤駿太も口を揃えて「涌井さんからコミュニケーションをとってきてくれる。こちらも話しかけやすい」と明かす。
もちろん、時に厳しさも見せる。今春の侍ジャパンに初選出された橋本侑樹(27歳)は、涌井から“一言アドバイス”を受けた。ルーティンの練習をこなしている時のことだった。
「お前、最近雑にやっているだろ」
橋本は「見抜かれた」と感じたという。野球界に限らず、人は無意識に楽な方向へ流れていくもの。「抑止力」としても、背番号20はチームメイトを支えている。
〈つづく/「涌井会とは?」編へ〉
文=長尾隆広
photograph by KYODO












