オリックス・九里亜蓮「もうエース級です」広島からFA移籍で今や大黒柱「うちにはなかなかいないピッチャー」チームメートも驚く“鉄腕”の流儀

Number Web6/16(月)11:02

オリックス・九里亜蓮「もうエース級です」広島からFA移籍で今や大黒柱「うちにはなかなかいないピッチャー」チームメートも驚く“鉄腕”の流儀

オリックス・九里亜蓮「もうエース級です」広島からFA移籍で今や大黒柱「うちにはなかなかいないピッチャー」チームメートも驚く“鉄腕”の流儀 photograph by JIJI PRESS

 九里亜蓮は、ベンチでも忙しい。

 昨オフ、広島からオリックスにFA移籍し、交流戦以外では打席に入ることがなくなったため、味方の攻撃中は少し落ち着けそうなものだが、九里は忙しい。特に、捕手とのコミュニケーションに多くの時間を使っている。

 九里は140km台のストレートと8つの変化球を緻密に投げ分け、根気よくアウトを積み重ねていく。

「僕は球速が速いわけじゃないんで、いろいろな方法でバッターのタイミングをずらしながら、と思ってやっています」

 打者のスイングやタイミングの取り方などを見て、有効な球種や攻め方を“直感”で選択し相手を追い詰めていく。そのため、捕手と呼吸を合わせるためのコミュニケーションを人一倍重視している。

捕手と呼吸を合わせ、試合を作り上げる

 キャンプからバッテリーを組んでいた森友哉が開幕前に怪我で離脱したため、開幕後は若月健矢と組むことになった。2人はベンチに戻るたびに会話を重ね、4月に3連勝するなど好結果を重ねていった。

「イニング間に、次に回ってくる3、4人に対する配球などを話し合いながらやれているのがいいのかなと感じます」と若月は語っていた。

イニングを終えるたびに捕手と密に会話する九里 ©SANKEI SHIMBUN

 厚澤和幸投手コーチは、2人を「30年ぐらい寄り添った夫婦みたい」とたとえた。

「2人で試合を作り上げる作業を、たぶんみんなが思っている50倍ぐらいやっている。試合前も試合中も、イニング間も、ベンチだけじゃなく裏でも話していますから。だからもう2人に任せようと決めています」

同学年・杉本との“約束”

 復帰した森とバッテリーを組んだ6月10日の横浜DeNA戦でも、打席を終えてベンチに戻った森の横に九里がしゃがみ込んで話す姿があった。

 それだけではない。5回裏の攻撃で杉本裕太郎が本塁打を放った際には、九里がベンチ横のカメラマン席の前で待ち構え、杉本と並んで“昇天ポーズ”をビシッと決めた。

 昇天ポーズは、右腕を力強く掲げる杉本の本塁打パフォーマンス。それは、同学年で、かつて同じ東都大学リーグでしのぎを削った仲の2人が交わしていた約束だった。

「裕太郎が、『いつも1人で(ポーズを)やってて寂しい』と言っていたので、『じゃあ打った時には一緒にやろう』という話をずっとしていました」と九里。

 杉本は、「(オリックスとの)契約が決まった時に『決まったわ』と電話がかかってきて、そういう話をしました。『一緒にやろうや』と言ったら、普通に『やるわ』みたいな感じでした」と振り返る。

数カ月で“チームを引っ張る”存在に

 その1週間前の広島戦でも、9回裏に杉本が本塁打を打った際に一緒に昇天ポーズを見せていたが、あの時は降板後だった。

 今回は絶賛熱投中の5回。しかも直前の5回表に、2死ランナー二、三塁のピンチで京田陽太を空振り三振に打ち取り、鬼のような形相で拳を握ってベンチに戻っていた。そのわずか5分後の昇天ポーズに、意外なノリのよさと律儀な人柄がうかがえた。

 開幕してまだ2カ月半ほどだが、新加入の33歳はチームに“馴染んでいる”というより、すでにグイグイと“引っ張っている”。

 杉本が「もうエース級です。毎回7回8回まで絶対投げますし、すごい。カッコいいっす」と言うように存在感は抜群だ。

「みんなが勉強になっている」

「1球たりともムダにしたくない」が九里の口癖。マウンドでは、背中からメラメラと立ち昇る炎が見えそうなほどの気迫をまとい、1球1球に魂を込めて腕を振る。先に点を与えたとしても粘り強く立て直し、イニング数を重ねていく“イニングイーター”だ。

 5月20日の千葉ロッテ戦も、雄叫びをあげながら114球を投げ込んだ。勝ち星はつかなかったものの、8回1失点で粘り、9回のサヨナラ勝ちに繋げた。サヨナラ本塁打を放った若月は試合後、自身の打撃の話はそこそこに、九里を讃えた。

「本当にすごいですよね。イニングを食ってくれるし、本当に気持ちが入っていたと思います。なんというか、うちにはなかなかいないようなピッチャーなので、本当に気持ちの部分だったり、練習の姿勢だったり、若いピッチャーも僕も、みんなが勉強になっていると思います。僕もいろいろと教えてもらいながら成長させてもらっています」

「中5日で行きたがる」鉄腕アレン

 まさに“鉄腕”だ。入団会見の際に「200イニング登板」を今季の目標に掲げたが、その言葉通り、ここまで11試合に先発し、宮城大弥に次ぐ78回1/3を投げ、チームトップの5勝を挙げている(6月15日時点)。左の宮城と左右の両輪となってチームを支える大黒柱だ。

 9回まで投げたがる九里に交代を説得する役割の厚澤コーチは、「すぐに降りたいピッチャーよりありがたいですよ」と苦笑する。

 4月18日の日本ハム戦では、中5日で登板し、107球、1失点に収めて完投勝利を挙げた。厚澤コーチはこう明かす。

「亜蓮は中5日で行きたがるんです。中5日が一番調整しやすいと言っているところを、チーム事情もあって、普段はあえて中6日にしてもらっている(苦笑)。彼は本当にすごいですよ」

「もっと上手くなりたい」飽くなき向上心

 九里は、「中6日か5日かというのは僕が決めることじゃないので、言われたところで行くだけですが、(登板間隔が)伸びるよりは、僕は詰めてもらったほうが合わせやすい。5で回れと言われたら全然5で回れます。縮まる分には全然大丈夫という感じです。(間隔が開いて)体が軽くなりすぎるのがあまり好きじゃないので」と言う。

 昨年までの広島での11年間で71勝を積み重ね、2021年には13勝を挙げ最多勝利投手にも輝いた実績の持ち主だが、変わること、変えることを恐れない。

 今季は「ここまで入念にやるのは初めて」というワインドアップで開幕を迎えたが、その後もよりよいフォームを求め変化し続けてきた。

「まだ全然、自分のレベルは低いと思うので、いいピッチャーになるために、しっかり練習して、いろんなことを試行錯誤しています。日々勉強というか、もっと上手くなりたいという思いでいろいろ取り組んでいます。それがなくなってしまったら、もうそれ以上はないと思いますし、やっぱり野球をやっている以上、野球が好きだし、もっと上手くなりたいという気持ちがずっとあるので」

際立つ骨太なベテランの存在感

 理想形やゴールは定めていない。

「『もっとこうなりたい』というのはありますけど、そこになったところで、たぶんまた『次はこうなりたい』と、どんどんいろんなものが見えてくると思う。だから、ゴールは決まっていないですし、決まらないと思います、ずっと」

 変化を求めながらも、九里の中心を貫く太い芯は揺らがない。骨太なベテランの存在が、チームにどんな影響を与えていくのか楽しみだ。

文=米虫紀子

photograph by JIJI PRESS

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