低金利、物価高の時代に何とか資産を増やしたいという庶民の願いにつけ込んだ、悪質な犯罪だ。

 会員制交流サイト(SNS)を通じて著名人をかたり、偽広告で投資を呼びかけ金をだまし取る「SNS型投資詐欺」が全国で多発している。

 警察庁によると、2023年の認知件数は2271件で、被害額は約277億円に上った。約7億円だまし取られた人もいた。

 被害者の年齢層は40〜50代が多く、20〜30代もいる。おれおれ詐欺や還付金詐欺など高齢者が狙われる「特殊詐欺」に対し、現役世代を狙い被害額が大きいのが特徴だ。

 兵庫県の30代会社員の女性は、物価上昇のニュースに不安を覚え、資産を増やそうとX(旧ツイッター)で情報を探していたところ、海外の証券会社を利用したFX投資を勧められ被害に遭った。

 1月に新NISA(少額投資非課税制度)が始まり、投資に挑戦する人の裾野が広がったことも被害拡大の背景にあるのだろう。

 投資詐欺はSNSのフェイスブック、写真共有アプリ「インスタグラム」などの広告が入り口になることが多い。運営会社が詐欺広告を放置している、と批判の声が上がっている。

 4月には被害者が、米IT大手メタ(旧フェイスブック)日本法人を相手に損害賠償訴訟を起こした。

 これ以上被害を拡大させないために、運営会社は早急に具体的な対策を講じるべきだ。

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 県内でもSNS型投資詐欺が相次いでいる。

 県警がまとめた23年の被害状況によると、認知件数は8件で、被害額は約3430万円だった。「海外のFX取引所で取引すれば少額で多くの利益を狙える」という誘い文句で金銭をだまし取られる被害などがあった。

 年齢層は20〜60代と幅広く、女性が多かった。通信アプリ「LINE(ライン)」や動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」、インスタグラムなどが最初に接触する手段になっていた。

 今年に入ってからも、70代の男性が、SNSで知り合った相手に「今月中に70万〜80万ドルの利益を得ることができる」と投資話を持ちかけられ、指定する口座に約1千万円を振り込み、だまし取られるケースが発生している。

 警察庁は3月、各都道府県警に対策や情報共有の推進を求める通達を出した。巧妙な手口の実態を解明して、被害を食い止めてほしい。

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 SNS型投資詐欺の被害に遭わないためには、個々人が詐欺の手口を知り、知識を身に付けることが重要だ。

 怪しいと思ったら、警察、消費生活センター、各市町村の相談窓口、弁護士会などに相談してほしい。

 政府も対策に乗り出す。被害の増加を受け、6月をめどに総合的な犯罪対策プランを策定する。

 今や私たちの生活に欠かせないSNSが犯罪のツールになっている。新たな対策が急務だ。