沖縄県南城市の大里グリーンタウンに暮らす佐村博之さん(85)は、何の木だか知らないが、近所の商業施設で配られていた苗を植えた。枝を切って植木市の会場で見せても、やっぱり誰も分からないという。それから10年。トゲトゲの実が付いた。「これ、パラミツよ!」。佐村さんがパラミツを知っていたのには理由がある。古里の石垣で「大きく実った19個」という話題を新聞で知り、「いつか食べてみたいもんだ」と切り抜いておいたからだ。(南部報道部・平島夏実)

 佐村さんの畑にできたパラミツの実は長さ約30センチ。枝先の実は落ち、幹の部分になった実だけが計8個、大きくなった。

 2022年7月3日付の本紙記事「パラミツ 大きく実った19個 石垣の健康福祉センター」を読んでから、ずっと食べてみたかった。

 だが今、佐村さんは戸惑っている。「ここまでトゲトゲだから、収穫するには皮の手袋が要るかね」「採った後、包丁で切れるんだろうか。おのでこうやるかね」「食べ方も分からん…」

 考えがまとまらず、5日現在、パラミツは木にぶら下がったままだ。

 妻の和子さん(83)は「私は植物は好きだけど、変な花だったら途中でばっさり切るタイプ」と笑う。パラミツが花を付けたのを内緒にしていた佐村さんは「見つかったら危なかった」と胸をなで下ろす。

 とにかく無事にパラミツは実った。夫婦でもう一度、収穫方法と食べ方を話し合うつもりだ。

 パラミツは南インド原産。世界最大の果物として知られる。甘い蜜が詰まっている様子から「波羅蜜(ぱらみつ)」と名付けられた。英名は「ジャックフルーツ」。