FIBA バスケットボールワールドカップ 2023

W杯仕様にラッピングされた沖縄都市モノレール。ルカ・ドンチッチ(右端)やパティ・ミルズ(右から2番目)など沖縄に来る可能性のあるNBAスターが描かれている

2023年の夏、多くのNBAスターが沖縄にやって来る!!

8月25日〜9月10日に開催されるFIBA男子バスケットボールワールドカップ2023の組み合わせ抽選会が4月29日、決勝トーナメントの開催地であるフィリピンの首都マニラで開かれ、出場32カ国がA〜Hの4カ国ずつの8グループ(1次ラウンド)に分けられた。そのうち日本が入ったグループEとグループFは国内最新鋭の設備を備えたスポーツ観戦施設の沖縄アリーナで試合を行い、日本を含めた8カ国が世界レベルの熱戦を繰り広げる。

この「8カ国」。日本の八村塁(ロサンゼルス・レイカーズ)や渡邊雄太(ブルックリン・ネッツ)は周知の事かと思うが、他国にも世界最高峰のリーグ米NBAでプレーする一流選手が多く、その中でもさらに一握りのスーパースターを擁する国もある。

すでにワクワク感が抑えられないバスケファンは多いはずだが、普段からバスケを見る習慣がない人にとって、海外バスケはちょっと遠いところの話、という感覚だろう。という訳で、FIBA バスケットボールワールドカップ 2023(※以下 W杯)に少しでも興味を持ってもらえるように、来県する国の特徴や注目選手を紹介していきたい。

日本は極めてハイレベルの“死のグループ”に

W杯予選のWindow4でカザフスタンと対戦する前に国歌斉唱をする日本代表

FIBA バスケットボールワールドカップ 2023
2022年8月30日、沖縄アリーナ©Basketball News 2for1

今回のW杯は史上初めて複数国の共催で行われる。沖縄、フィリピン・マニラ、インドネシア・ジャカルタで予選ラウンドを実施し、世界王者を決める決勝トーナメントはマニラで開催する。

4カ国が総あたりで戦う1次ラウンドのグループA〜Dはマニラ、グループE、Fは沖縄、グループG、Hはジャカルタで行う。ベスト16となる各グループの上位2チームは2次ラウンドでさらに2試合ずつを実施し、絞られた8チームが一発勝負の決勝トーナメントに駒を進める。

沖縄アリーナでは、8月25日〜9月3日にグループEとグループFに入った国が合計20試合を行う。「E」と「F」に入った国は以下。カッコ内は国際バスケットボール連盟(FIBA)のランキングである。

●グループE:オーストラリア(3位)、ドイツ(11位)、フィンランド(24位)、日本(36位)
●グループF:スロベニア(7位)、ベネズエラ(17位)、ジョージア(32位)、カーボベルデ共和国(64位)

日本が入ったグループEは正に“死のグループ”といえる。グループFの各国のFIBAランキングと比べてみても、極めてレベルの高いことは一目瞭然だろう。日本は8月25日にドイツ、同27日にフィンランド、同29日にオーストラリアと対戦する。

日本以外の3カ国にはどんな選手がいて、どんなチームの特徴を持っているのだろうか。沖縄バスケ情報誌「OUTNUMBER(アウトナンバー)」で活動する琉球大学4年の星川圭央二さんがまとめた資料や、NBA好きである筆者のつたない知識を基に見ていく。

“高さ”や”強さ”備える3カ国 一推しはジョー・イングルス!

2019年の前回大会で優勝したスペイン代表の写真

FIBA バスケットボールワールドカップ 2023

まず、初戦のドイツ。昨年のユーロバスケットで3位に入ったチームを牽引するのは、レイカーズで活躍する八村とチームメートである185cmのポイントガード、デニス・シュルーダーだ。鋭いドライブが最大の持ち味で、以前は点取り屋のシックスマンというイメージが強かったが、近年はゲームコントロール能力にも磨きを掛け、司令塔を担う。

モリッツ、フランツのワグナー兄弟(オーランド・マジック)、ダニエル・タイス(インディアナ・ペイサーズ)、マキシ・クリーバー(ダラス・マーベリックス)らは高さやフィジカルの強さを備える。日本は東京五輪前の2021年8月、さいたまスーパーアリーナでドイツと国際強化試合を行い、その時は86ー83で大金星を挙げたが、公式戦となれば当然プレーの質や強度は一段と高くなってくるだろう。

欧州いちばん乗りでW杯出場を決め、勢いに乗るフィンランドは213cmのビッグマン、ラウリ・マルカネン(ユタ・ジャズ)が絶対的エースとして君臨する。高さと上手さを兼備し、今季のNBAではジャズでエースとしての地位を確立。25.6点、8.7リバウンドという優れたスタッツを記録した。マルカネンの他にも高さがあり、ハードワークをする選手が多く、2021年7月に日本が東京五輪前の国際強化試合で沖縄アリーナで対戦した時は71ー76で敗れている。

最後は、このグループで最も力があるオーストラリア。東京五輪で銅メダルを獲得し、2019年の前回W杯では4位と安定した強さを誇る。日本は2022年2月にあったW杯予選のWindows2では64ー80、同7月のWindow3では52ー98、同じ月にあったFIBAアジアカップ2022では準々決勝であたり85ー99といずれも黒星を喫している。

元NBAセンターのアーロン・ベインズ、渡邊雄太がいるネッツに所属する得点力とゲームコントロールに長けたガードのパティ・ミルズ、激しいディフェンスが武器のガード、マシュー・デラベドバ(サクラメント・キングス)など、各ポジションにタレントが豊富だ。高さや強さに加え、それぞれの役割を愚直にこなし、高いバスケIQを持つ選手が多い。まだ20歳で爆発力のあるジョシュ・ギディー(オクラホマシティ・サンダー)ら若手も育っている。

なかでも筆者がイチ押しなのはジョー・イングルス(ミルウォーキー・バックス)である。左利きのベテラン、35歳。決して身体能力が優れている訳ではないが、適切な状況判断や勝負強いスリーポイント、好アシストで存在感を示し、高い知性がうかがえる選手だ。世界レベルで見ると、決して身体能力が高くはない日本の選手にも参考になるプレーヤーではないだろうか。

“超”スーパースターのドンチッチも 沖縄が世界バスケの「中心」に

W杯について語る琉球ゴールデンキングスの桶谷大HC

FIBA バスケットボールワールドカップ 2023
4月30日、沖縄アリーナ©Basketball News 2for1

上記のように、日本のグループEは他グループと比べても極めてハイレベルであることは間違いない。4月30日、Bリーグの琉球ゴールデンキングスと沖縄アリーナで対戦した大阪エヴェッサのヘッドコーチ(HC)で、世界各国でコーチ歴のあるドイツ出身のマティアス・フィッシャー氏は、試合後の記者会見で母国が沖縄でプレーすることを喜んだ上で、こう語っていた。

「(グループEは)いちばんタフなグループになると思います。ドイツやオーストラリアは背が高いですし、フィンランドもいいチーム。日本の主流とは異なるスタイルのバスケが見られると思いますし、おもしろい試合が沖縄で開催されることが本当にうれしいです。大会の成功を願っています」

グループEだけでも豪華が顔ぶれが揃うが、グループFに入った東京五輪4位のスロベニアにはNBAの“超”スーパースター、ルカ・ドンチッチ(ダラス・マーベリックス)もいる。全てのオフェンス能力に秀で、今シーズンのスタッツは驚異の32.4点、8.6リバウンド、8.0アシスト。独特のリズムのドリブルや体の強さ、桁違いの視野の広さを生かした“魔法”のようなプレーは一見の価値がある。

前述のキングス対大阪戦の後、キングスの桶谷大HCにもW杯が沖縄、日本で行われることの意義を聞いてみた。答えはこうだ。

「やっぱり、個々の選手のファンダメンタル(基礎)の部分を見てほしいですね。チームの戦術も大人のバスケ好きな人が見て『こんな戦術を使うんだ』とかおもしろい部分はあると思うんですが、子供たちには選手の基礎とかテクニックを見て真似してほしいです。僕らも昔、マイケル・ジョーダンのプレーをできもしないのに真似して、舌を出したり(ジョーダンはよく舌を出しながらプレーしていたことで有名)していました。ドンチッチを見て、憧れて、プレーを真似してほしいです」

言わずもがな、これだけの世界レベルの選手たちを間近で見られる機会はそうそう無い。しかも、人口150万人にも満たないこの小さな島で、だ。開幕まであと100日とちょっと。もともと国内ではバスケ熱の高い県で知られる沖縄が、“世界のバスケ”の熱狂の中心になる日は近い。