日常を取り戻し始めた2023年のゴールデンウイーク。全国的に賑わいのある連休となりましたね。東京都府中市にある大國魂神社(おおくにたまじんじゃ)にも、たくさんの人々が集まりました。

お目当ては、ゴールデンウイークのど真ん中、5月3日〜6日に開催される「くらやみ祭」!コロナ禍以降、初めてすべての神事と行事が執り行われたくらやみ祭は、府中市を華やかに彩りました。

その昔明かりのない暗闇の中で行われたお祭り

くらやみ祭の神輿渡御

そもそも「くらやみ祭」って独特な名前ですよね。この「くらやみ」は、文字通り「暗闇」の意味。かつて、尊い神様が人の目に触れないよう、街中の明かりをすべて消した闇夜の中で神輿を担いだことが由来とされています。

そして現在のくらやみ祭でも、8基のお神輿に神さまたちを乗せて練り歩く「神輿渡御(みこしとぎょ)」が大きな見せ場。また、神輿渡御に先立って行われる、神さまの通る道々を巨大な太鼓が清めてまわる「太鼓送り込み」も見どころのひとつです。

そこで今回は、太鼓送り込みと神輿渡御が行われた5日の様子をレポートします!

お神輿を迎える「道清めの儀」と「太鼓送り込み」

くらやみ祭の道清めの儀

この日、お祭りの始まりを告げるのは「道清めの儀」。

神輿渡御まで、まだずいぶんと時間があるお昼時。日が照りつける中、神職の人たちが道清めの儀を先導しています。続くようにして、氏子(うじこ)たちが、拝殿に向かってやってきました。綺麗に列を成し、提灯を掲げる姿は、お祭りの始まりを強く予感させます。

道清めの儀

するとどこからか、カン、カンと、乾いた音が規則正しく響き渡ってきました。その音は少しずつ大きくなって、近づいてくるようです。

くらやみ祭、参道に竹を打ち付けて清める人々

提灯を持つ人々に続く男性たちが手にしていたのは、長い竹。自分の背丈を優に超える竹を、男性たちは一定のリズムで参道の石畳に打ち付けています。

境内の空気が一新されるような光景に、多くの人が足を止め、静かに見入っていました。

太鼓送り込み、大太鼓

そして午後2時半。始まったのは「太鼓送り込み」です。

この太鼓がとにかく大きい!しかも数人の氏子は、大太鼓の上に立っています。神社の大鳥居の前で、盛大に打ち鳴らす場面では、その迫力に身じろぎもせず見守る人々も。

太鼓送り込み、大國魂神社に入っていく大太鼓

華やかな場面を撮り逃すまいと、筆者も夢中でシャッターを切っていました。すると突然、祭り衆が着る白丁(はくちょう)を身に纏った、貫禄のある雰囲気のおじいさんに話しかけられたのです。

「次に来る太鼓はな、唯一日本の欅で作られた太鼓なんだよ。あれはちゃんと撮っときな」

欅で作られた大太鼓日本の欅で作られた総本社の一之宮御太鼓

巨大な太鼓と比べるとその太鼓は、ひと回り小さいくらいの大きさでした。しかし、そのおじいさん曰く、巨大な太鼓の2倍の値段がするのだそう。

正直、素人の私には、ひと際価値のあるその太鼓と他の大太鼓の音の違いまではわかりませんでした。とはいえ、図らずも興味深いことを教えてもらえてラッキーでした!

普段、話す機会のない人とも、コミュニケーションが生まれることがあるお祭りのシーン。お祭りの不思議。こういう体験もまた、お祭りの醍醐味だなぁと思ったのでした。

暗闇の中で神さまを乗せる「神輿渡御」

日が落ち始める18時頃。大國魂神社周辺はものすごい数の人で埋め尽くされ、移動が困難なほど。人々は、神輿渡御を今か今かと待っています。

お神輿を先導する大太鼓

お神輿を先導するのは大太鼓。再び辺り一面が重厚な音に覆われていきます。しかし、日が暮れた空をバックに現れた大太鼓は、日差しの中の「太鼓送り込み」とはまた違う印象です。

暮れゆく空に映える大太鼓

お祭りの「終わりの始まり」を知らせる合図のように、夕暮れの大太鼓は、わずかに「儚さ」を感じさせました。

そしていよいよお神輿の出番です。

神輿渡御

見物客で埋め尽くされた参道の脇を、担ぎ手たちがお神輿と共に御旅所(おたびしょ)まで練り歩きます。

提灯の明かりに照らされた煌びやかなお神輿を威勢良く担ぐ人々。「おいで」と呼ばれる神輿渡御は、くらやみ祭を飾るメインイベントです。

神輿渡御

この日はよく晴れたものの、冷たい風が吹きすさぶ夜になりました。それでいて担ぎ手たちの勢いのある掛け声は、熱波を放っているようでもありました。

闇夜の中、クライマックスを迎えるくらやみ祭。冷たさが残る心地よい夜風は、お祭りの熱を軽やかに運ぶのかもしれません。

くらやみ祭は、夜が深まるほどに盛り上がるお祭りでした。