6月8日は「ヴァイキングの日」です。ヴァイキングといえば、北欧の海の民であり、何より、ヨーロッパの海を支配した海賊集団というイメージがありますね。

世はまさに大海賊時代と言われて久しいですが、海に囲まれた日本は、古来、海賊大国だったことをご存知でしょうか?

この記事では、ジャパニーズ・ヴァイキングともいうべき、日本の海賊・水軍とそのお祭りについて紹介します。

日本にも「海賊」がいたの?

おそらく世界で最も有名な海賊団は、モンキー・D・ルフィ率いる「麦わら海賊団」でしょう。彼らは日本発で世界を席巻していますが、残念ながらフィクションです。

そもそも海賊とは、海を行き交う船を強襲して、暴行や略奪を行う集団です。

歴史上初めて現れた海賊はヴァイキングで、西暦793年6月8日にイギリスの修道院を襲撃してヨーロッパを震撼させました。しかし彼らももともとはスカンジナビア半島に暮らす農民や漁民であり、貿易や通商を通じて航海術や地理的な知識を身につけ、自分たちの商圏を守るために暴行・略奪行為をしていたそうです。

大航海時代はカリブを舞台に

15〜16世紀の大航海時代にも、海賊が台頭しました。舞台は主にカリブ海。植民地からヨーロッパ本国に送られる物資が目当てでした。彼らの多くはヨーロッパの交易船から逃げ出した水夫たちで、財宝を積み込んだ船を次々に襲っていました。ちょうど映画「パイレーツ・オブ・カリビアン」の世界ですね。

海あるところに海賊あり!日本では・・・

日本でも、9世紀ごろ瀬戸内海を行き交う船を狙う海賊たちが生まれました。

この頃の海賊は弱者を襲い、積み荷を奪うといった、現代のイメージに近い存在です。彼らの一部は、外洋にも進出し、「倭寇(わこう)」と呼ばれて朝鮮・中国大陸沿岸で恐れられていました。教科書にも登場するので覚えていらっしゃる方も多いのではないでしょうか。倭寇は、当初こそ日本人由来の集団でしたが、のちには中国人やこの頃アジアの海に進出してきたポルトガル人らが主体になったそうです。

一方、中世になると、海のことを知りつくした彼らの存在は、大名や中央政府に重宝されました。その結果、海賊は海運と商売も行う、海の便利屋としての地位を確立するのです。有名な瀬戸内海の「村上海賊」は、海の大名とも呼ばれ、海戦では無双の強さを誇っていました。源平合戦でも海戦の主力となったのは瀬戸内の海賊たちでした。

日本各地の海賊・水軍まつりを紹介!

しかし、有名な「村上海賊」の他にも、日本には海賊・水軍がたくさんいたのです。そして、現在では彼らを称えるお祭りも数多く開催されています。ここからは、各地にあるジャパニーズ・ヴァイキングのお祭り7つを紹介します。

長浜城北条水軍まつり(静岡県)

 

この投稿をInstagramで見る

 

numazu city(@numazu_city)がシェアした投稿

こちらは静岡県沼津市で開催されるお祭り。北条水軍は、もともと伊豆半島を拠点にした海賊で、のちに北条氏の配下に組み込まれ、駿河湾で武田信玄や豊臣秀吉の水軍と戦火を交えました。

お祭りでは、彼らの拠点だった長浜城跡(沼津市内浦)で、戦国時代さながらの甲冑隊と火縄銃の演武ステージパフォーマンスや物産販売などが楽しめます。

例年5月下旬に行われていましたが、コロナ禍で2018年から休止。2024年の開催が待ち望まれます。

もちむね向井水軍まつり(静岡県)

 

この投稿をInstagramで見る

 

海鳥珈琲(@umidori_nichinichi)がシェアした投稿

静岡県静岡市用宗漁港で開催されるお祭り。こちらは武田信玄に仕えて水軍を指揮した戦国武将・向井正重とその居城である持船城(静岡市駿河区)があった用宗地区で行われるお祭りです。

イベントでは、向井水軍行列や海賊合戦、音楽演奏、釜揚げしらすの試食といったグルメも楽しめます。手作り感のあるあたたかい雰囲気が魅力のお祭りです。

2023年の開催情報は未定ですが、例年10月に開催されています。

しろやま嘉隆まつり(三重県)

三重県鳥羽市で開催されるお祭り。名が冠されている嘉隆とは、戦国武将の九鬼嘉隆のことで、織田信長の鉄板張り軍艦を率いて先述の村上水軍を打ち破った人物です。メイン会場は鳥羽城山公園・三の丸広場です。

お祭りでは武者行列や鉄砲隊による大筒の演武など迫力のイベントが行われます。

例年桜の季節に開催されるお祭りですが、こちらも残念ながら2023年の開催は中止。再開が待ち望まれます。

因島水軍まつり

 

この投稿をInstagramで見る

 

shinichi.jp(@shin11210918ichi.japan)がシェアした投稿

広島県尾道市因島で開催されるお祭り。村上水軍3家のうち、この島を拠点とした因島村上水軍をテーマにした三部構成のお祭りで、水軍祭りの成功と、先人に感謝する6月の8月の「島まつり」。大松明の練りまわしやクライマックスには花火があがる「火まつり」。木造船による競争レースが行われる「海まつり」がメインイベントです。

2023年は、島まつりと火まつりを2023年8月26日(土)に同日開催、海まつりは2023年8月27日(日)に開催されます。

上関水軍まつり(山口県)

 

この投稿をInstagramで見る

 

中3(@choochoochoo34)がシェアした投稿

山口県熊毛郡上関町室津で開催されるお祭り。この地を拠点とした能島村上家と関わりが深い上関村上水軍を顕彰しています。

お祭りでは、「水軍太鼓」の演奏が祭りを盛り上げ、出店も多数出店。会場では地産の新鮮な魚介・お肉を特設BBQコーナーで食べられます。
クライマックスには上関海峡の海上と空中に3000発の花火が打ちあがります。

2023年は、7月23日(土)に4年ぶりに開催されます。複数の太鼓団体が出演する予定です。

三島水軍鶴姫まつり

 

この投稿をInstagramで見る

 

Yuri Ochi(@kuroshio9)がシェアした投稿

愛媛県今治市大三島町宮浦で開催されるお祭り。村上海賊と並び称される、伊予・大三島を拠点とした三島水軍。有事の際は、大山祇神社の大宮司一族も軍を率いたそうです。この宮司の娘・鶴姫は、亡くなった兄に変わって水軍を率いて、大内氏の軍勢を打ち破ったという女傑。瀬戸内のジャンヌダルクと呼ばれる伝説の人物です。

大山祇神社から宮浦港までの武者行列には、武者姿の鶴姫が登場。港では「櫂伝馬レース」も行われます。他にも、餅まきや太鼓演奏、郷土芸能が実施されるほか、港周辺では、露店が並び、特産品の販売が行われます。

開催日は例年7月中旬。2023年も開催が予定されています。

松浦水軍まつり

長崎県松浦市で開催されるお祭り。この地を拠点にしていた松浦党は、元寇の際には元軍と渡り合い、勘合貿易の際には護衛船として大陸にまで渡った海の武士団です。

お祭りでは、松浦党が躍動した時代の交易船を再現した「山車」を使った武者行列がメインイベント。松浦龍王太鼓演舞も見られます。松浦市ゆかりの物産展開催も魅力。2022年には、全国各地の鯖料理が楽しめる「鯖サミット」も同時開催されてさらに賑わいました。

お祭りは例年10月下旬の開催。2023年の開催は未定です。

まとめ

この記事では、ヴァイキングの日にちなんで、日本の海賊たちとそのお祭りについて紹介しました。海賊といえば野蛮な海の強盗だという先入観がありますが、お祭りを訪れて、優れた航海技術を持った海の民が紡いできた歴史や文化に想いを馳せてみてください。