ビジネスマンにとって営業先でのワンシーンや商談の際、どれだけ相手との距離を縮められるかが要となるだろう。そのアイテムのひとつとして、“雑学”は有効だ。クライアントとの会話に詰まったときや場を和ませたいときなど、さまざまなシーンにおいて知っておいて損はない“雑学”知識。OneNews編集部では、ご当地ネタやおもしろい雑学をピックアップ!今回は「すあま」について取り上げたい。

■「すあま」って一体何?
恥ずかしながら、西日本在住の筆者は最近になって「すあま」の存在を知った。だが、見た目はカマボコっぽいけれどお菓子であるということ以外はまだ知らない。「すあま」とは一体何なのだろうか…。その手がかりをつかむべく、日本菓子協会・東和会の会長であり、東京製菓学校の校長も務める梶山浩司さんに話を伺った。

――「すあま」とはどういったお菓子なのでしょうか?

【梶山浩司】「すあま」は、江戸時代に東京の木場で誕生したという説が有力な和菓子です。名前の由来は「うす甘い」から来たのではと考えられているようです。もし、すあまの歴史に興味を持たれた方は、「事典 和菓子の世界(中山圭子・著/岩波書店)」に少し紹介がありますので、読んでみられるといいかもしれません。

――「すあま」を知らない人に対して、味と魅力について教えてください。また、例えるならば何に似ていますか?

【梶山浩司】すあまより一般的なお菓子として、ういろう(外郎)があるかと思いますが、ういろうを食べたことがある人に説明するのであれば、すあまはういろうよりコシが強く、甘さが控えられた餅菓子…といったところでしょうか。

■「すあま」はどうやって作られているのか?
なるほど…!「すあま」とは和菓子で、かつ食感はういろうに似ているということで、なんとなくイメージはできた。だが、具体的にどうやって作られているのだろうか。そこで、次は埼玉県で古くからすあまを販売している和菓子の老舗「栄屋菓子舗」の山崎由則さんに話を聞いた。

――「すあま」はどのようにして作られているのでしょうか?

【山崎由則】みなさんが普段からお召し上がりになっている「うるち米」を粉にしたもの(上新粉)に水を加え練り、セイロで蒸します。蒸し上がった生地を石臼と杵でもちつきをしてひと固まりにまとめるのですが、途中で数回に分けて上白糖とグラニュー糖を加えていきます。ちなみに数回に分けてお砂糖を加える理由は、一度に加えると数の子状になり、生地がきれいに混ざらないからです。つき上がった生地は棒状(かまぼこ型)に伸ばして、適量にカットして販売しているのが一般的な「すあま」となります。

【山崎由則】当店のすあまは紅白2種類で、丸い形に作っています。丸くしている理由は、急な御祝いで紅白のお菓子を探して来られるお客様にすぐに対応できるからです。当店では祖父の代からですので、60年以上前からこの製法で作っています。

【山崎由則】なお、丸型ではなく、卵型に形成すると各種お祝いに使われる「鶴の子餅」になります。ちなみにすあまではなく、餅で卵型に形成したものは「鳥の子餅」といいます。

――すあまはお祝いのときに食べられることも多いのでしょうか?

【山崎由則】もちろん、普段から食べられている方も多く、当店のすあまは1歳のお子様からお年寄りまでお召し上がりいただいております。ですが、七五三や成人式、入学式等のお祝いごとに利用されることも多く、たとえば静岡県では、卒業式や結婚式など“お祝い”となると、すあまを食べる風習があるようです。すあまは関東のお菓子になるので、関西方面ではご存じない方が多いかと思いますが…。

――栄屋菓子舗のすあまを購入されるお客様は、どの年齢層の方が多いのでしょうか?

【山崎由則】10代、20代の若い方が圧倒的に多いです。すあまは「あんこ」が入っていないので「あんこ」が苦手な方にもご購入いただいております。使用している材料もシンプルですので、毎日でも食べられる飽きのこない味も人気の要因ではないかと思います。

――若い方に人気なんですか!それは意外ですね。

【山崎由則】数年前からSNSで、すあまファンの方々がコミュニケーションを取っていらっしゃるみたいで、ありがたいことにマニアの方々から当店のすあまは高評価をいただいております。また、すあまは、以前「たれぱんだ」というキャラクターが流行ったころから「たれぱんだ」の好物として紹介されたことで、全国的に人気が出たように思います。その後は口コミやリピーターの方々により全国的にご購入いただいております。

――ちなみに、近年の和菓子の売れ行きはどうですか?コロナ禍を経ての変化などはありますか?

【山崎由則】当社で作っている和菓子・餅菓子は無添加ですべて手作りで製造販売しているのですが、こういう昔ながらの和菓子屋さんが全国的に減って来ています(大福やすあま等、翌日には生地が硬くなるというのが本物のお餅を使っている証です)。また、後継者不足の影響もあり、当店のような和菓子屋が貴重になっているのではないかと思われます。

【山崎由則】コロナ禍のときは、(企業や団体等で)発表会などのイベントが開催できなかったため、大口の注文はありませんでしたが、外出を控え、ネットで当店を検索して通販等を利用される方が急増しましたので、店頭販売と含めて売り上げに変動はありませんでした。

■「すあま」ってどんな味!?実際に食べてみた!
すあまの作り方も知れて、意外にも若者に人気であるという新たな情報もゲットできた。ちなみに、「すあまは関東の和菓子」なので、九州出身の筆者は知らなかったのか…と納得。さて、いろいろ腑に落ちたところで、気になるのはそのお味。実際に栄屋菓子舗ですあまを購入し、食べてみた!

栄屋菓子舗のすあまは、直径約5センチ。見た目は、小さめなお餅…という感じ。周りに粉が付いている感じも、お餅っぽい。

次は、触感をチェック。けっこう弾力があるので手で割るのは難しいかなと思いきや、そんなことはなくすんなり半分に。思ったより柔らかい。

そして、ついに実食!冒頭で話を伺った日本菓子協会の梶山さんいわく、「ういろうよりコシが強く、甘さ控えめ」ということだったが、実際食べてみるとその表現がよくわかる。確かに、ういろうよりはちょっと弾力がある感じ。ういろう以外で例えるなら、伸びない求肥、ずっしりと食べ応えのある求肥、といったところだろうか。

そして、味はクセがなく思ったより甘さは控えめなので、緑茶だけでなくコーヒーなどいろいろな飲み物と相性がよさそう。1個で結構お腹いっぱいになるが、食べやすいので、テレビを観ながら食べたりすると、“気づいたらめちゃくちゃ食べてた!”となりそうな魅力もある。「事典 和菓子の世界」を早速図書館で借りてきたので、残りのすあまを食べながら読んでみることにしよう。

和菓子の専門家の方々に話を伺い、東日本でしか親しまれていない事実や、購買層はZ世代の若者だという意外な情報が得られた「すあま」。今回の記事を、ビジネスの場などで話のネタに困ったときにぜひ活用してみて!