元BiSHのモモコグミカンパニーが20日、都内で行われた著書『コーヒーと失恋話』の発売記念記者会見に登壇し、自身初の恋愛短編小説集に込めた思いなどを語った。

 本書は、2021年9月からモモコの公式サイト『うたた寝のお時間』で全10回にわたって連載されてきた同名連載の書籍化。同連載は、喫茶店好きのモモコが自らアポイントを取り、取材、記事作成、写真撮影までを1人で実施してきたもので、本書ではその10記事に加え、連載からインスピレーションを得て、「恋愛」をテーマに書き下ろした小説10編も収録される。

 連載を始動させた当初は「『喫茶店のマスターに失恋話を聞こう』という主旨だった」そうだが、「プライベートなお話なのでなかなか話してくれることがなかった」と苦笑い。しかし「その代わりに生きづらい世の中をどう生き抜いているのかというお話を聞くことが多かった」と言い、結果「マスターの人柄に迫る取材をしよう」と思い至り、「『ここのプリンがおいしいよ』とかではなく、人対人の取材。それを記事にして、そこから小説も書くというのは今まで聞いたことがない。唯一無二の作品だと思います」と誇った。

 取材のアポイントなど、今作では執筆以外の領域にも挑戦したモモコ。「グループ時代は用意されたお仕事ばかりやっていたので、自分の好きなこと、より実感のあることがしたいと思った」ことをキッカケとし、「自分でインタビューをすることでインタビュアーの気持ちもわかるようになると思ったし、未知の領域に踏み込んでみたかった」と目を輝かせた。

 新たな領域ゆえに、制作期間には楽しさも苦しさもあった。「グループ時代は、グループのお仕事なので、当然ながら仕事相手にモモコグミカンパニーを知らないという人はいなかったんです。でも、自分でアポを取ると『まず誰だよ』と(笑)。そこが新鮮で、難しいところでもありました」と振り返った。

 取材は「まずお店にお客さんとして行って、そろそろ慣れてきたなという頃に取材のオファーをしていた」と言い、「そもそも取材NGのお店だったりもして、そこで断られるのは悲しかったですね」と肩を落とした。

 意外な理由で断られることも。「名曲喫茶みたいな、クラシックが流れているようなお店にオファーをしたとき、『モモコグミカンパニーという名前で音楽活動をしています』と自己紹介をしたら、『どんなジャンルの音楽をなさっているの?』と聞かれて。BiSHは楽器を持たないパンクバンドだったので『パンクです』と答えたんですが、あまりにもかけ離れているということでNGになりました」と苦笑い。「(取材は)一筋縄ではいかなかった」としみじみ語った。

 モモコはこれまで2冊の長編小説『御伽の国のみくる』『悪魔のコーラス』、3冊のエッセイ『目を合わせるということ』『きみが夢にでてきたよ』『解散ノート』を出版してきたが、「恋愛」をテーマにした短編小説集は今回が初となる。

 タイトルには「失恋」とあるが、「失恋と言っても悲しいだけじゃなくて、背中を押す小説が書きたかった。どれだけ悲しくても、一人で立ち上がって生きなければいけない。その後押しができるような作品にしたかったんです」と言う。

 こだわったのは「10人10色にすること。登場人物を考えるのが一番好きな作業なんですが、全員被らないようにしました。オジサン、小学生…あと、私と同じくらいの…」と紹介し始めた矢先、「あ、私、年齢公開してなかった」と天然っぷりも発揮して笑いも誘いながら、「自分ごとのように読んでいただけるようにこだわった」と胸を張った。