ドラマ『ヴィンチェンツォ』、映画『ロ・ギワン』等で主演を務め、先日韓国で最終回を迎え、視聴率が『愛の不時着』を超えたと話題沸騰のドラマ『涙の女王』に“ヴィンチェンツォ役”としてカメオ出演するなど、グローバルスターとして活躍するソン・ジュンギが出演する韓国映画『ファラン（原題／オランダを意味する）』『HOPELESS（英題）』が、『このろくでもない世界で』の邦題で、7月26日より東京・TOHOシネマズ シャンテほかにて全国公開される。

　昨年「第76回カンヌ国際映画祭」＆「第28回釜山国際映画祭」に公式出品された本作は、監督・脚本を務めたキム・チャンフンの初長編作品。実話ではないものの、監督自身が社会で苦労した経験をエッセンスとして盛り込み、身体的痛みと心の叫びが渾然一体となった脚本にほれ込んだソン・ジュンギが、チゴン役を熱望したことから、この企画が本格的に動き出したという。

　物語は、ある地方の暴力がはびこる町が舞台。継父のDVに耐える18歳の少年・ヨンギュ（ホン・サビン）は、義理の妹ハヤン（キム・ヒョンソ）を守るために暴力沙汰を起こして高校を停学、その上、示談金を求められる。生き抜く術のないヨンギュは、地元の犯罪組織のリーダー、チゴン（ソン・ジュンギ）の門戸を叩くほかなかった。ヨンギュの絶望漂う瞳にかつての自分を重ねたチゴンは、手を差し伸べることに。仕事という名の“盗み”を働き、徐々に憧れのチゴンに認められていくが、ある日、組織の非情な掟に背いてしまい…。彼らの運命は思わぬ方向へ猛スピードで走り出す――。

　ドラマ『トキメキ☆成均館スキャンダル』『太陽の末裔』で女性ファンを夢中にさせて以来、常にトップスターであり続けたソン・ジュンギが、大きく作り上げた体躯になまなましい傷を刻み、犯罪組織のリーダーというこれまで目にしたことのない姿で登場。表情や声のトーンまで徹底的に変身させて、チゴンというキャラクターを時に大胆に、時に繊細に演じ切った。ソン・ジュンギは「これは韓国映画界に絶対に必要なプロジェクトだと信じていたので、参加する機会をいただけて感謝している」と語っている。

　ヨンギュ役に扮したのは映画初主演のホン・サビン。この役を勝ち取るまでに3度のオーディションを経たという。義理の妹ハヤンを演じたキム・ヒョンソは、BIBI名義でアーティストとして活躍しており、本作の演技で今月7日に韓国（ソウル・江南）にて開かれた「第60回百想（ペクサン）芸術大賞」では新人演技賞に輝いた。

　解禁となった予告編では、校庭で談笑する高校生たちに無言で近づき、手に持った石を振り下ろす主人公のヨンギュ。そして足元の水たまりに落ちた石から血がその水面に滲む映像に『このろくでもない世界で』のタイトルが浮かび上がる。一瞬にして観る者の心をひきつける衝撃的な幕開けだ。

　貧しい家庭に育った18歳のヨンギュは継父からの暴力に耐える荒んだ日々を送っているが、唯一の救いは義理の妹ハヤンと悪態をつきながらも一緒にハンバーガーを食べる時間だった。しかし、ハヤンを守るために起こした暴力事件に追い詰められ、裏社会に生きるチゴンに頼るしかなくなる。

　そして、鍛え上げられた背中に傷が刻まれたソン・ジュンギが登場。チゲを食べながら「顔の傷は使える、教えてやるよ。俺を兄（ヒョン）だと思え」と、傷だらけのふたりが響き合う印象的なシーンから、この町で“生き抜く”ために、金、暴力、そして犯罪を教え込む目が離せないシーンが続く。そして「一瞬、楽園を見た」というコピーと共に陽が差すなか、バイクに乗るヨンギュとハヤンのシーンで締めくくられ、これは現実なのか、それとも夢なのか…この先の展開が気になる予告編となっている。