風邪をひきやすくなった、眠れない、疲れやすい。
そんな大人女性の悩みを一気に解決してくれるのが「血行」です。
病気知らずの若々しい体をつくる「毛細血管力」について、根来秀行先生に教えてもらいました。

教えていただいたのは・・・
医師・医学博士
根来秀行先生
医師、医学博士。東京大学大学院医学系研究科内科学専攻博士課程修了。ハーバード大学医学部客員教授、ソルボンヌ大学客員教授。専門は内科学、腎臓病学、抗加齢医学、睡眠医学など。最先端の臨床・研究・医学教育の分野で国際的に活躍中。


あなたは大丈夫?
毛細血管年齢セルフチェックリスト

次の項目から当てはまるものをチェック。
当てはまる数が多いほど、「毛細血管の老化(ゴースト化)が進んでいる」「毛細血管の年齢が高い」可能性があります。

□ 見た目が急に老けた印象になった
□ 傷が治りにくい。すぐに青あざができる
□ 抜け毛や白髪が急に増えた
□ 眠りが浅く、熟睡しにくい。寝つきが悪い
□ 風邪をひきやすくなった
□ 疲れやすくなった
□ 手足が冷たい。しびれを感じることもある
□ すぐカッとなる。または落ち込みやすい
□ 最近、物忘れが激しくなった
□ 普段あまり歩かない、運動はほとんどしない
□ 毎日お酒を飲む。またはタバコを吸う

簡単にチェックできる! 爪床圧迫テスト
救急医療の現場で、出血性ショックを判断するのに用いられている方法。圧迫して白くなった爪が2秒以内に赤くなればOK。指先の毛細血管まで血流が行き届いています。

1. 人差し指の爪を上下に挟んで、5秒間ギューッと圧迫する。
2. 指をパッと放し、爪の色を見る。


人体は毛細血管でできている⁉

コロナ禍で注目が高まった「免疫力」。
ウイルスや細菌、病原体などを取り除き、体を守ってくれる仕組みのことで、この季節に増える風邪やインフルエンザへの感染を予防することができます。

また、細胞のがん化は正常な人でも起こりますが、それを抑えるのも免疫の機能。
免疫力を高める方法はいろいろと知られていますが、まず重要なのは「血行」です。
 
なぜ血行が重要になるかというと、病原体や異物が体内に侵入した際、免疫細胞(白血球)は血液に乗ってトラブルが起きている場所に速やかに移動します。血行が滞っていると、免疫細胞の到着が遅れたり、届きにくかったりして、外敵を抑えることができないのです。
 
また、免疫の最前線を担うのは、全身を覆う皮膚や、口や鼻、のどの粘膜ですが、これらの防御機能がしっかり働くには、細胞一つ一つに十分な酸素や栄養が送られることが不可欠。酸素や栄養も免疫細胞と同様、血液に乗って届くので血流は重要なのです。
 
血行には、血管のコンディションが影響しますが、特に注目してほしいのは「毛細血管」です。

「毛細血管の全長は約9万9000kmと、地球約2周半ほど。人体は毛細血管でできているともいえるのです。全身のどの細胞からも0・03〜0・0 5㎜以内に位置し、酸素や栄養を届け、二酸化炭素や老廃物を回収しています。毛細血管は極めて細く、非常にゆっくりと血液が流れていますが、それは、このような物質のやり取りを確実に行うためなのです」

毛細血管力が上がるとこんな効果が!

見た目に若々しく
毛細血管は、皮膚や頭皮にも張り巡らされています。
栄養やホルモンがしっかり届けば、新陳代謝がアップ。しみやしわ、くすみ、薄毛、髪のパサつきなど、大人世代のトラブル改善が期待できます。

免疫力が上がる
ウイルスや細菌などの外敵と戦う免疫細胞は、血液に乗ってトラブルが発生した場所に駆けつけます。
毛細血管力が上がると、免疫細胞が迅速に出動。感染症を予防したり、がん細胞の増殖を抑えたりしてくれます。

冷え性や更年期障害の改善
毛細血管は酸素や栄養素のほかに、熱を運んで体温を一定に保つ働きをもちます。手足の血流がアップすれば、冷え性の改善に効果的。
また、卵巣や子宮の血行がよくなると、生理痛や更年期障害の緩和にも。

肩こりや疲れがとれやすくなる
老廃物の回収も毛細血管の重要な役割。
ゴースト化した毛細血管が元気になると、肩や筋肉にたまった老廃物がきちんと回収されるので、肩のこりや疲れがたまりにくくなります。

病気を予防
毛細血管は、脳を含む全身の細胞に酸素や栄養素を届けています。
毛細血管力が上がれば酸素や栄養素がしっかり届いて、細胞の機能を十分に発揮できるので、体調がよくなり、病気を防ぐことができます。

血管の種類と役割

血管には「動脈、静脈、毛細血管」の3種類があります。
動脈のうち、最も太いのが心臓から出る大動脈。大動脈は徐々に細くなって最終的には毛細血管に。そこから酸素や栄養が全身の細胞に届けられます。


毛細血管の"ゴースト化〟が免疫低下や不調の原因

縁の下の力持ち的な毛細血管も、年とともに劣化します。40代くらいから、新陳代謝が落ち、血液が流れにくくなり、やがては消滅してしまうことも。

「血液が流れなくなった血管は、顕微鏡でモヤモヤと見え“ゴースト血管〟と呼ばれます。このゴースト血管が増えると、その先の細胞に必要な酸素や栄養が届かず、老廃物も回収されません。免疫が低下するうえ、全身にさまざまな不調を引き起こします」
 
疲れがとれない、眠れない、手足が冷える、物忘れが多いなどの大人世代に多い不調も、毛細血管のゴースト化が大きな原因。
 
加えて大人世代では、新陳代謝や免疫強化を促す「成長ホルモン」も減少。20代をピークに、40代ではその半分、60代では4分の1程になってしまうとか。

とはいえ、あきらめることはありません。「ちょっと生活を変えれば、何歳からでも、ゴースト血管をよみがえらせたり、新しい毛細血管を増やしたりすることはできます」と根来先生。

50代は、未来の健康を左右する分かれ道です。
心も体も健やかに保つために「毛細血管力」を高めていきましょう。


撮影/木村 慎 スタイリング/平井律子 イラスト/モリナオミ 文/寺本彩

※大人のおしゃれ手帖2024年2月・3月合併号から抜粋
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