50代になって自分の時間が増え「新しいことに挑戦したい」と思う人は多いのでは?
これからの人生をいきいきと過ごすには、「生きがい」は欠かせません。
今回は、”好き”が高じて53歳からショップオーナーになった土切敬子さんに話をうかがいました。

土切敬子さん
「だいどこ道具 ツチキリ」店主・経営
武蔵野美術大学卒業・同大学院修了後、デザイナーとして活動。退職後、自宅を改築し「だいどこ道具 ツチキリ」をオープン。美しく使い勝手のよい道具がそろう店として評判。


昔からの「好き」を活かして自宅を店舗に

▶ 何歳で? きっかけは?
55歳。前職を辞めた後、再就職するよりも、自分1人でできる店をやりたいと思ったから。

▶ 初期投資は?
自宅リビングを店舗に改築する費用。

▶ やっていて楽しいことは?
お客さんが喜んでくれたときや、もの同士の新しい組み合わせを見つけたとき。

▶ やっていて大変なことは?
始める前は、猛反対していた夫の説得。今は商品在庫の管理が大変。

▶ これからどうしたい?
お茶道具だけを扱うような支店をつくってみたい。


夫を説得するうちに見えてきた独自のスタイル

デザイナーとして活躍していた土切さんの転機は53歳。勤め先を退職したのです。

「もう再就職は難しいかなと。それなら、一人で、大好きなキッチン道具の店をやってみようかなと考えたんです」 

学生時代からキッチン道具が大好きで、いろいろ使い勝手を試したりしていたという土切さん。
自宅を改築することで、実店舗を開くことのリスクを最低限にしようと考えましたが、ご主人が猛反対します。

「『遊びでやってもらっちゃ困る。自宅を改装するからには収益が見込めるものにしないと』と言われたんですね。事業計画を練って夫を説得していくうちに『どこにも売っていない、自分だけの強み』が必要だなと」 

土切さんは以前から 〝メーカーが異なるのにぴったり合うアイテム〟の組み合わせを考えるのが得意。また、生活空間の一部に店舗を作ることで、実際に道具を使って見せられることが強みになる、と考えました。 

前職で商品流通のイメージはつかんでいたものの、小売業の経験はなし。選び抜いたキッチン道具を扱うメーカーに、一軒一軒電話で取引依頼するところからスタート。

その後順調に売上も増え、開店7年目を迎えます。
「キッチン道具や料理のことを、気軽に聞けるのもうちの良さかなと思っています」 

お客さんから、おいしいだしのとり方や、おすすめのキッチン道具を教わることもあるとか。オープンな雰囲気は土切さんの明るく率直な人柄ゆえでしょう。

「常に新しいことをしないと、自分もお客さんも楽しみがないので、企画展もやっています。いつかはお茶道具の支店もつくりたいですね」

便利な【キッチンアイテム】が目白押し!
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他社製品を組み合わせるなど、独自の提案が人気の秘訣

井の頭公園駅から徒歩10分ほどの閑静な住宅街にたたずむお店。
ガラス張りの木の扉と看板が目印です。

店内中央では、月に1、2回のペースで企画展を実施しています。撮影時のテーマはお茶道具。

壁や窓際には定番アイテムがぎっしり。

店のすぐ隣にある自宅キッチンから食材を持ち出して、使い方を説明することも。

「最近よくおすすめしているのが、アルミ製のバターナイフ。
熱伝導率がよいので、軽い力で薄く削ることができます。冷凍バターでもOK」

「『キントー』のガラスの保存容器と、『家事問屋』のステンレス製の浅漬け用の重しがぴったり。業務用のトングとともに、浅漬け用3点セットとして提案しています」。
豆腐やヨーグルトの水切りにも使えるそう。


撮影/白井裕介 文/寺本彩

大人のおしゃれ手帖2024年5月号より抜粋
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