子どもが成長して夫婦ふたりの時間が長くなるなど、50代はライフスタイルの変わりどき。
リタイア後のセカンドライフに向け、住まいを見直すいいタイミングです。
夫婦仲良く幸せに暮らせる部屋作りの秘訣を、高原美由紀さんに伺いました。

教えていただいたのは……
一級建築士、空間デザイン心理学協会代表理事
高原美由紀さん
空間デザイン歴30 年超、累計1万件以上の指導実績を持つ。自らが導き出した「空間デザイン心理学R」を提唱。著書は『ちょっと変えれば人生が変わる!部屋づくりの法則』(青春出版社)


一緒に過ごす空間 編

夫婦一緒に過ごす場所と、ひとりで過ごす場所、両方をつくる
家族一緒に過ごす場所は、会話しやすい距離と配置を考え、それぞれの居場所を作りましょう。
さらに、各自がひとり静かに過ごせる居場所も必要です。

step 1.
一緒に過ごす“ 共有感” を生む、距離「3〜3.5m」の法則

家族が一緒に過ごすリビングやダイニングで家具の配置を考える際、それぞれの居場所が、直径3
〜3.5m の円周上にあるように、心がけてみて。
これは、家族それぞれが別のことをやっていても、いるだけでつながりや共有感を得やすい、ちょうどいい「距離感」です。
これ以上離れると、話しかけるときに無意識に声が大きくなり、自然と言葉尻がきつく、けんか口調になってしまいがち。
お互いに好きなことをしつつ、話したいときに話せる関係を築きやすいのが、直径3 〜3.5m の円周上なのです。

step 2. 自然と会話が盛り上がる、視野「60度」の法則

家族関係を良好に保つためには、お互いが視野60 度以内に入るよう居場所を設定することが大事です。
人の視界は前方180 度程度ですが、視界に入っているものすべてを認識できるわけではあり
ません。
実際は、注意を向けている限られた範囲だけしか見えてはおらず、認識できる目安は60 度
程度と言われています。視野60 度に入らなければ顔が見えないため、近くに相手がいたとしてもスムーズな会話ができません。
つまり、お互いの位置が視野60 度から外れてしまうと、話しかけても「ちゃんと聞いてくれない」といった不満がたまって、けんかになりやすいのです。

【point】ひとりで過ごす場所は、“60 度の外”につくる

家族と一緒に過ごす場所とは別に、ひとりで過ごせる居場所も必要。
家族の視界に入ると用事を頼まれがちなので、あえて話しかけられにくいよう視野60度から外れた位置に居場所をつくりましょう。
家族の死角になる位置に、ひとり掛けの椅子を置くなどすれば、静かで落ち着いた時間が持てるはずです。

step 3. 共同意識を持つためには「夫婦横並び」もおすすめ

前述の「距離3 〜 3 .5 mの法則」「視野60度の法則」に加えて、リビング、ダイニングでおすすめなのが「夫婦横並び」の座り方。
改まった大事な話をするときは、顔が見える向かい合いの配置のほうが好ましいですが、「横並び」は共同感が感じられる配置。
食事をするときやリビングのソファでくつろぐときなど、横並びで座るほうが雑談がしやすくなります。

キッチンカウンターで食事をとる

子どもと暮らしていたときの4 人掛けのダイニングテーブルは夫婦ふたりには大きすぎる……。
そう感じたら思い切って処分し、キッチンカウンターで食事をとるのも手です。
大きなテーブルや椅子があると掃除もしにくく、圧迫感も大。
スペースが空くと気分もすっきり、身軽になります。

景色のいい窓に向かってソファを配置する

リビングの場合は、窓に向かってソファを配置し。
夫婦ふたりで横並びに座って、窓からの景色を眺めながら、のんびり過ごすのもいいでしょう。リビングに景色のいい窓がなければ、テレビに向かってソファを配置してもOK。
同じものを見ることで共通の話題が生まれ、会話がしやすくなります。

【point】インテリアの趣味よりお互いが空間に求めることを

「夫婦でインテリアの趣味が違うためけんかになる」という話を聞きますが、インテリアは表面的なこと。趣味が違うといって揉めるのはナンセンスです。
まずは、お互いの深層ニーズを突き詰め、理想の暮らし方について話し合いましょう。
おのずと解決策が見つかるはずです。

パーソナルスペース 編

パーソナルスペースとは安心して過ごせる領域で、縄張りのようなもの。
お互いの縄張りを意識し、侵さないよう心掛けて。

ひとりで過すごせるスペースを持つことで安心感を得る

人にはそれぞれ、人がいても不快に感じない限界の距離があり、その距離内の領域をパーソナルスペースといいます。
お互いがパーソナルスペースを侵すことがないよう、夫婦でそれぞれが心地良いと感じる距離感を確かめ合うことをおすすめします。
誰しも、「夫婦一緒に過ごすときの居場所」だけでなく、「ひとりになりたいときに自由に時間を費やせる居場所」が必要。
後者は自分のパーソナルスペースを踏まえた上で、目につきにくい場所に椅子を置いて自分だけのコーナーを作る、空いた子ども部屋を利用するなど、ひとりで過ごせる居場所を確保しましょう。

小さな場所もセパレートすると快適

冷蔵庫
冷蔵庫に夫のコーナーを作り、夫が好きな食べ物や調味料を分けて収納するのも手。
調味料のありかをいちいち聞かれなくなるだけでなく、夫が料理をするようになるかもしれません。

洗面棚
洗面所は出しっぱなしになっているものが気になりがち。
夫婦の収納スペースを棚で分けるなどして、ものの所有者と収納場所をわかりやすくすると、朝の身支度もすっきりした気持ちに。

クローゼット
自分以外が手をつけても平気な収納と、気になる収納があり、クローゼットは後者の代表格。
自己管理できるように妻と夫の縄張りを分けましょう。
探したり、出し入れのストレスが軽減。

本棚
夫と妻の本をごちゃまぜに仕舞わないようにしましょう。
棚を分けるなどして、自分の本は自分で管理。
自分専用の棚があれば本を整理する意欲が湧き、整とんされた状態が保てます。


イラスト/Kayo Yamaguchi 文/坂口みずき

大人のおしゃれ手帖2024年6月号より抜粋
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