旅行サイトなどの調査で、常に人気上位を守っているフランス・パリ。今年7月に開幕するパリ五輪は、開会式を行うセーヌ川をはじめ、ビーチバレーや柔道が周辺で行われるエッフェル塔、馬術と近代五種の会場となるベルサイユ宮殿などの観光名所で競技が繰り広げられます。「花の都」「光の都」と呼ばれるパリは、華やかでおしゃれなイメージがある一方、「3K(汚い・臭い・怖い)」とも言われています。

パリに滞在していた経験から、ゴールデンウィーク直前、パリ五輪3か月前のこの時期、初心者の方に向けて、パリについて簡単に紹介したいと思います。

人気観光地のパリは世界中から人が集まってきますが、特に日本人女性の支持は熱く、人気のアナウンサーやモデル、俳優が移住する「あこがれの街」というイメージが根強くあります。

引っ越したらまず、おいしいバゲットの店を探す――と言われるほど、フランス人はパンが大好き。チーズやワイン、スイーツなどの名店も多く、美食家にはたまりませんね。ハイブランドが新作を発表するパリ・コレクションの時期には、セレブやモデルが集います。

そんな華やかでキラキラしたイメージのパリに移り住んで間もない頃、100年以上の歴史がある建物の美しい街並みにうっとりしながら歩いていると、犬のフンを踏んでしまうことが何度もありました。

日没後、川面に光が揺れるセーヌ川はなんともロマンチックですが、川沿いを歩くカップルの目の前を勢いよく走っていくネズミの姿は珍しくありません。うっかり会話に花を咲かせて盛り上がっていたら、隣に置いてあったパソコンを盗まれてしまったという友人もいます。

「パリ症候群(パリ・シンドローム)になったんじゃない?」

海外からの観光客や移住者に、フランス人は決まってこう聞きます。パリ・シンドロームとは、思い描いていたハイセンスで優雅なパリのイメージと現実がかけ離れていて、旅行や生活が期待外れだったとがっかりしてしまうことです。留学生や移住者の中には、メンタルの不調につながるケースもあるとされています。

このようなイメージギャップは、コミュニケーションや対人関係の考え方の違いも大きく影響しているかもしれません。会話好きで、はっきりと自己主張することが当たり前のフランス人に、日本人が気おされてしまうことは想像に難くありません。

フランス人は英語嫌いなどと言われ、「英語ができても使わない」というイメージを持つ人もいます。ただ、私の経験では、若いフランス人は英語を話す割合が多いように感じました。日本と同じように、外国人の私が少しフランス語を話すだけで、とても感心して、レストランでも道端でも褒めてくれます。知らない人でも気軽に、「Bonjour」(こんにちは)「Bonsoir」(こんばんは)と声を掛け合うのも、日本ではなじみがありませんね。

パリはちょうど東京の山手線内と同じくらいの大きさです。移動にはメトロを使いますが、駅と駅の間隔が短いので、せっかくなら歩いて街を探索するのも楽しいと思います。

休日にはカフェや公園でのんびりと過ごすカップルやファミリーが多く、フランス人をまねて、私もパリ滞在中は気持ちのいい公園を巡っていました。ガイドブックだと、有名な城や美術館などに隅へ押しやられてしまいそうですが、パリに行ったら立ち寄ってほしい公園を三つ紹介します。

【1】ビュット・ショーモン公園
1867年にできた公園です。公園の中に壮大な滝があり、驚きました。一番お気に入りです。

【2】リュクサンブール公園
休日は多くの人でにぎわっています。公園内にあるマリオネット劇場で行われている操り人形劇は必見です。私も子どもたちに交じって3匹のコブタを見ましたが、クオリティーが高く、フランス語の曲がかわいい。

【3】モネの庭園
パリ郊外にあるモネの住んでいた家と庭園。「睡蓮」の絵画の中に入り込んだような庭園が広がります。季節ごとに色とりどりの花が咲いています。私が訪れたときは、世界中から来た庭師が手入れしていました。モネの家にも入ることができ、日本の水墨画がたくさん飾ってあり、フランスと日本のつながりを感じることができます。

日本とは文化も生活スタイルも異なり、“常識”とされることも違います。東京駅の雑踏で誰とも目を合わさないようにそそくさと行き交う日本人は、「こんにちは」「こんばんは」を交すことはないけれど、清潔・安全で気づかいや思いやりの気持ちを感じられます。パリでの生活を終えて帰国したら、日本がさらに大好きになりました。(宇宙工学エンジニア 小仲美奈)