建物の骨組みのはりをあえて見せる室内デザイン「はり見せ天井」が人気だ。天井材を使わない分、天井が高くなって空間に広がりが出るほか、コスト削減の効果もある。

神奈川県の会社員男性(36)は2021年に購入した中古マンションをリフォームする際、はり見せ天井を採用した。行きつけの飲食店などの内装を参考に、天井板だけでなく、壁紙も剥がして壁面や柱などのコンクリート面もむき出しに。天井が10センチほど高くなったリビングダイニングは、スタイリッシュで開放的な雰囲気だ。

男性は「コンクリートに職人のメモ書きなどが残っていて味わい深い。部屋も実際の床面積以上の広さが感じられて快適です」と、満足そうに話す。

リフォームを担当した「ゼロリノベ」(東京)の松谷祐季さんによると、中古物件を購入して自分好みに改装する人が増える中、はり見せ天井への関心も高まっている。「居室のアクセントになるデザイン性と、高い天井がもたらす空間の心地よさが人気の要因」と分析する。

施工費については、リフォーム工事の一環で行えば、はりを見せるための作業に追加の費用がかかるケースは少ない。ただし、はりの塗装や汚れなどを落とす場合、ゼロリノベでは1平方メートルあたり2500円程度の工費がかかるという。

新築で採用する人もいる。千葉県の公務員女性(41)は「どこを見ても木が目に入る、温かみを感じられる家に住みたい」と、2階建て木造住宅の全居室をはり見せ天井にした。一部は吹き抜け空間になっており、しっかりと注がれる外光と高い天井で、室内はとても明るく感じられる。

工事を担当した「かしの木建設」(千葉)の吉田亮輔さんは「天井材を張らない分、通常より工事費が安くなることが多い。お金のかからない空間演出として検討する人が増えている」と話す。

ただ、注意点もある。はりを見せるために天井材がなくなれば、上階の音が響きやすくなる。新築であれば、上階に配置する部屋を人の出入りの時間が少ない寝室にするなど、間取りを工夫したい。

照明は天井が高くなる分、明るさが足りなくなったり、はりが邪魔になったりすることがある。また、空間が広がるために冷暖房の効率も下がる。吹き抜けにすれば、はりの上にホコリもたまりやすい。

吉田さんは「印象だけでなく、工務店などとメリットやデメリットについて話し合ってから決めるとよいでしょう」と話している。

インテリアとしてのはりが注目される中、人気を集めているのが化粧梁だ。建物の荷重を支えるという、はり本来の目的とは異なる装飾用のはりで、後から設置することができる。

建築資材販売「ナガイ」(長野)の「ヴィンテージ化粧梁」はその一つだ。本物の木で製作しており、色味や質感の異なる7種類から選ぶことができる。価格は6万2700円(1平方メートル、工事費別)。「大規模なリフォームをしなくても部屋の雰囲気を変えることができると好評」という。(読売新聞生活部 加藤亮)