今、歴史漫画がアツい。アニメ化や実写ドラマ·映画化された作品も数多く、少年漫画から青年向け漫画、果ては少女漫画まで、歴史漫画が多数出版されている。

本記事では歴史好きの元書店員ライターが、「読まなければ損だ」と太鼓判を押す歴史漫画を紹介。大人が読んで歴史を見つめ直すのはもちろん、「歴史の授業が苦手だ」という子どもたちも楽しめる作品を厳選した。読みやすさ別に難易度もつけているので、ぜひ親子で一緒に歴史漫画を楽しんでほしい。

子どもにも読ませたい歴史漫画の魅力とは

「歴史」というと学校教育で年表を作ったり、ややこしい名前や年号、国名を覚えたりするというイメージを持つ人も多いだろう。実際に学校で学び試験科目として扱う歴史は、単語を覚えて点を取る「暗記科目」だと言われる。

しかし、歴史そのものは遥か昔から連綿と続いており、その流れのなかで様々な思惑や政治的判断などが絡み合って事件が起きるものだ。この背景を理解しないまま、歴史的事件や登場する人物の名前だけを覚えても、学びは身につかないだろう。

そこで、歴史に苦手意識をもつ子どもたちにこそ歴史漫画を読むことをおすすめしたい。歴史漫画では、歴史上の偉人や英雄がよりアイコニックに描かれているため、キャラクターとして名前や情報を取り入れやすい。また、漫画を読んでいくうちに歴史の流れや事件の背景も自然と理解できるため、教科書に載っている内容もリアルにイメージしやすいだろう。

なにより、「事実は小説より奇なり」とも言われるように史実を交えつつ描かれているにも関わらず、オールフィクションの漫画に負けないくらい面白く、魅力的だ。「勉強しよう」と身構えることなく、ひとつの漫画作品として楽しんでいると、いつの間にか知識が増えるというお得感もある。

もちろん、子どもだけでなく大人にも歴史漫画はおすすめだ。歴史上の人物たちの生き方には、ビジネスに役立つ知恵や教訓が溢れている。実際、著名な経営者のなかには歴史上の偉人を「尊敬する人物」として挙げたり、偉人から経営手腕を学んだりする人もいる。歴史好きの上司や先輩との会話を盛り上げる手がかりにもなるだろう。

歴史漫画を選ぶポイント

歴史漫画を読みたいと思っても、どうやって最初の1冊を選べばいいか迷ってしまうかもしれない。ここでは歴史漫画を選ぶ上で押さえておきたいポイントを紹介する。

学習漫画シリーズは最新のものがおすすめ

子どもに読ませたい歴史漫画としてまず思いつくのは、「学習漫画シリーズ」だ。学校の図書室にはだいたい置いてあり、入学や進級のお祝いとして祖父母や知り合いから贈られることも多いだろう。書店では3月〜4月頃になると、化粧箱入りの学習漫画シリーズが店頭に陳列されるので、この時期を見計らって購入するのもおすすめだ。

古くから出版されている学習漫画シリーズだが、購入の際には必ず最新版のものを選ぼう。シリーズを揃えるとそれなりの金額になることもあり、つい古本屋での購入や家族のおさがりを与えがちだが、歴史は日々変化している。例えば、近年話題になったのが「鎌倉幕府成立年」だ。

以前は、鎌倉幕府の成立年を覚えるために「いい国(1192)つくろう鎌倉幕府」という語呂合わせを使用していたが、実際は1185年であるという新説が登場したことから「いい箱(1185)つくろう鎌倉幕府」で覚えたほうがいいとする教師や講師もいる。その他、「大化の改新」が「乙巳の変」に変更されたり、日本最古の貨幣は「和同開珎」ではなく「富本銭」だったりと、歴史は新しい発見があるたびに変更されていくのだ。

学習漫画シリーズもこれに合わせて改訂版が発行されるため、最新版であるかに注意して選びたい。また教科書は通常4年に1回改訂されるので、改訂前後は学習漫画シリーズの購入を待ってみるのも手だ。これは最新の改訂内容を盛り込んでいるものと改訂前のものが書店の店頭に混ざって置いてある可能性が高いからだ。

さらに、学習漫画シリーズにも出版社ごとに特徴があるため、購入の際は出版社にも注目してほしい。例えば、KADOKAWAの「角川まんが学習シリーズ」は日本史版の発売から5年連続で売上1位、世界史版は2021年2月に発売されるやいなや、その年の上半期ランキングで売上1位を記録した売れ筋商品だ。どちらも「東大流」の歴史勉強法を意識して作られているため、わかりやすいつくりながら情報量は大学入学レベルとされている。

集英社の「学習まんが 日本の歴史」は、表紙イラストを週刊少年ジャンプなど集英社の漫画雑誌で連載経験のある人気作家が担当していることで話題となった。「ジョジョ」シリーズの荒木飛呂彦や「キングダム」の原泰久など、錚々たる顔ぶれだ。本の中身は別の漫画家が描いているが、「絵がきれいで読みやすい」という読者の声がある。他社に比べ、近現代史に巻数を割いているのも特徴だ。

学習参考書を多数出版している学研の「学研まんが NEW日本の歴史」は、2021年2月にリニューアルされ、学習まんがシリーズ初のDVD付きとなった。NHKの資料映像や再現ドラマ、アニメーションやコント仕立ての映像などを使用し、漫画と併用することでより深く歴史が学べる。全12巻と巻数が少ないのであっさり読めるだろう。

他にも学習漫画シリーズの老舗・小学館版や、各時代の専門家が監修している講談社版などもおすすめだ。

国·地域で選ぶ

歴史の学習では日本史と世界史に分かれていたように、歴史漫画も舞台が国や地域で分かれている。日本を舞台にした歴史漫画が読みたいのか、別の国の歴史漫画を読みたいのかで選ぶ作品も変わってくるだろう。

日本を舞台にした作品の場合、やはり取っ付きやすいのが利点だ。日本史に触れたことがない人はほとんどいないだろうし、文化や言語に大きな違いがないため名前や固有名詞が頭に入りやすい。

地理を理解しているというのも、歴史漫画を読む上では重要だ。例えば戦国時代の漫画で上杉謙信(新潟県)と武田信玄(山梨県)が川中島(長野県)で戦ったと聞くと、「確かに長野県は山梨県と新潟県の間にあるな」とイメージできる。これが海外になってしまうと、位置関係を把握するところから始めなければならず、ストーリーに没頭しにくい。

また、住んでいる県や周辺地域を舞台にした作品だと、「あの城跡で戦いがあったのか」や「普段通り過ぎる場所にはこんな歴史があったのか」という楽しみ方もできる。

一方、中国史や世界史を描いた作品のよさは「いちから勉強できる」、「フィクションとしても楽しめる」という点だ。世界史の場合、国の数が多いため学校の授業でもかいつまんでしか勉強できないが、漫画を読むことで「点」でしか学べなかったものが「線」で繋がり、より理解を深められるだろう。

余計な知識が入り込みにくい分、フィクションとしての漫画を楽しめるのもいい。特に歴史が苦手な人は、一度「歴史漫画」であることを忘れて、アクションや戦記として作品を読んでみるのも大事だ。日本史だと、勉強した思い出があるため「歴史漫画」と身構えてしまうかもしれないが、中国史なら「古代中国を舞台にしたアクションファンタジー」、世界史なら「ヨーロッパを舞台にした架空戦記」など、歴史漫画と思わず読み始めてみよう。

他にも、西欧·東欧、アジア、中国など各国の文化や独自の街並み、装束などからピンとくる国を選ぶのもおすすめだ。

時代で選ぶ

人類の歴史は長いため、歴史漫画はひとつの時代について描いたものが多い。どの時代を読みたいのかも考えてみよう。ここでは日本の各時代について、特徴や選ぶ上でのポイントを紹介する。

・古代
弥生時代周辺や、これ以前を舞台にした漫画はあまり多くないが、日本書紀や邪馬台国、卑弥呼などミステリアスな題材があるため、ファンタジーチックに描かれるのが特徴だ。ちなみに、この時代は中国史では秦〜三国時代頃にあたり、中国の歴史漫画では人気がある。

・飛鳥·奈良時代
日本に「律令制」など中央集権型の仕組みが生まれたのがこの時代だ。そのため、肉親同士の政権争いや、同僚同士の権力争いなどが描かれることが多い。政治的な話を読むのが好きならおすすめだ。

・平安時代
十二単の女性や貴族といった、きらびやかな宮中の物語が描かれる平安時代前半と、平清盛や源義経といった偉人が活躍する源平合戦など、武家政権のはじまりにあたる平安時代後半で大きくイメージが異なる。どちらが好みかによっても選ぶ作品が変わってくるだろう。

・鎌倉時代
源頼朝により武家政権が確立した時代だが、実際は20年程度で源氏による政治は終わり、時代のほとんどが北条氏と朝廷との争いが占めている。日本史上で一番ややこしい時代とも言えるので、漫画でわかりやすく学ぼう。「御恩と奉公」や「元寇」など、教科書で習う用語が頻出する。

・室町時代
金閣寺·銀閣寺の建立や、能·狂言や茶道·華道などの文化が花開いた時代だ。応仁の乱までが「室町時代」、応仁の乱以降が「戦国時代」と分けられることもある。これまでは日本史のなかでも地味な時代と言われていたが、近年、研究書がベストセラーになるなど注目度がアップした。

・戦国·安土桃山時代
日本史で最も人気があり、漫画の題材としても数多く使われているのが戦国·安土桃山時代だろう。戦国時代初期から徳川幕府の成立まで、どの時代、どの地域にも魅力に溢れている。歴史漫画初心者なら、ぜひこの時代を描いた作品から手に取ってみてほしい。

・江戸時代
江戸時代は250年以上にわたるため、同時代を舞台にした漫画でもバラエティ豊かだ。江戸時代初期は大奥制度など政治的な話が多く、中期は町民文化を描くものが多い。「時代劇」の舞台も江戸中期頃が一般的だ。最後期は「幕末」とも言われ、新選組や坂本龍馬、西郷隆盛など戦国時代にも負けない人気がある。

・明治時代以降(近代)
明治時代は、現代の日本の土台となる時代だ。それまでの戦争はほとんどが日本国内の内戦だったが、明治時代は日清·日露戦争など外国との戦争が起きた。近代化する日本を描く作品が数多い。大正時代は主に和洋折衷の文化が注目され、昭和に入ると第二次世界大戦頃の悲劇と混迷が描かれる。

完結しているものを選ぶ

歴史漫画に限らず、漫画を選ぶ際は完結作品かどうかも重要だ。次巻や次号が出るまで待たなければいけない連載中の作品とは違い、完結作品ならストーリーを一気に読め、物語への没入感が得られるだろう。

特に歴史漫画の場合、ストーリーをまとめて読んだほうが時代の流れや登場人物たちの動きが理解しやすいというメリットもある。連載雑誌が週刊や隔週刊なら2〜3ヶ月に1冊のペースで単行本化されるが、月刊だと4〜5ヶ月に1冊、季刊だと1年に1冊以下のペースになってしまうので、前回の話を忘れてしまったり、途中で飽きて読まなくなってしまったりする可能性も高い。これから歴史漫画を読むなら、完結作品から選んでみるのもひとつの手だ

身近に感じられる日本史の漫画17選

ここからはおすすめの漫画を紹介していく。話の面白さはもちろん、時代背景などもしっかりと書き込まれている作品を主に取り上げるので、歴史学習にも活かしてほしい。各作品についている難易度は、内容の難しさや読み解きにくさ、残酷描写などを加味して設定しているので子どもに読ませる際には気にかけておいてほしい。まずは身近な世界観の日本史漫画だ。

卑弥呼−真説·邪馬台国伝−

卑弥呼 −真説・邪馬台国伝−(1) (ビッグコミックス)

時代:弥生時代/難易度:高
「20世紀少年」や「MASTER KEATON(マスターキートン)」のプロデュースや脚本を手掛けた長崎尚志がリチャード・ウー名義で原作を担当。作画は「天智と天武 −新説・日本書紀−」を圧倒的な画力と構成力で描き上げた中村真理子だ。

神の声を聴く巫女や呪術師など、神がかった能力を持つ女王として、ファンタジー的に描かれることの多い卑弥呼と邪馬台国を、あくまでもリアルな歴史漫画として作り上げているのが新しい。弥生時代の戦いや文化など、教科書では学べない情報が盛りだくさんだ。主人公ヤノハが、苛烈な性格と戦術の才能で伝説の女王となるまでを描く。既刊7巻(2021年9月時点、以下同)。

天上の虹「持統天皇物語」

天上の虹(1) (講談社漫画文庫)

時代:飛鳥時代/難易度:中
数多くの名作を世に送り出してきた里中満智子が1983年の連載から30年以上を費やし描き上げた、大河歴史漫画。父の天智天皇と、夫の天武天皇の意志を継ぎ、女帝として君臨した持統天皇の生涯を描く。

即位から崩御までの10年余りで、大宝律令の制定や、倭国から「日本」への呼称の変更、中国式の都城·藤原京への遷都など、現代日本の礎を作った持統天皇の「ひとりの女性」としての生き様には、今の女性たちの人生にも通じるものがある。泥沼の恋愛関係や人間模様なども描かれているものの、流麗な筆致でさらりと読めてしまう。コミック全23巻、文庫版で全11巻の完結作品。

阿·吽

阿・吽(1) (ビッグコミックススペシャル)

時代:平安時代/難易度:高
遣唐使の一員として大陸にわたり、のちに天台宗の祖となる最澄と、真言宗の祖となる空海。日本仏教界に名を残す2人は、いかにして仏教を修めていったのか。熱狂、あるいは狂信ともいえる最澄と空海の姿を、圧倒的な表現力で描き起こしている作品だ。

平安時代というと華やかなイメージが強いが、実際は飢饉や疫病により庶民は困窮しており、平安京に通ずる道には常に死体が転がっていたとも言われている。そんな時代に、最澄と空海は心の拠り所を仏の道に求めていくのだ。作者のおかざき真里はイラストレーターとしても活躍しており、本作の中でも1枚絵として独特のセンスが光る。監修·協力は阿吽社が行なっている。既刊13巻。

応天の門

応天の門 1巻 (バンチコミックス)

時代:平安時代/難易度:中
受験生がお世話になる神様といえば、天満宮の菅原道真だろう。現代では学問の神だが、一時は都に仇なす大怨霊として恐れられていた。「応天の門」はそんな菅原道真の若かりし頃がテーマのクライム・サスペンス歴史漫画だ。

家にひきこもっては本の虫になっている「頭でっかち」の学生・菅原道真と、美男子と名高いモテ男で、宮中を守る武人でもある在原業平が、都で起きる怪事件を解決していく。ドラマの「相棒」や、シャーロック・ホームズシリーズのような謎解きバディものだが、根底には866年に起きた「応天門の変」が関わっている。はじめのほうは1話完結で読みやすいのでおすすめだ。作者は灰原薬。既刊14巻。

遮那王 義経

遮那王 義経(1) (月刊少年マガジンコミックス)

時代:平安〜鎌倉時代/難易度:低
旅芸人の少年·漂太(ひょうた)はある日、自分とそっくりの外見をしている牛若丸と出会う。牛若丸の願いを受け、入れ替わって過ごしているうちに大親友となる2人だったが、生まれつき病弱だった牛若丸は「平家打倒」の夢半ばで命を落とす。漂太は牛若丸の志を継ぐために偽の牛若丸として生きていくことに。「源義経は2人いた」という驚きの設定だが、ストーリーは硬派な義経の一代記だ。

漂太と牛若丸が出会い、名と思いを受け継ぐまでの「遮那王 義経」と、奥州藤原氏のもとに身を寄せる「遮那王 義経 奥州編」、義経の最期までの「遮那王 義経 源平の合戦」の3部構成となっている。作者は沢田ひろふみ。完結作品。

アンゴルモア 元寇合戦記

アンゴルモア 元寇合戦記 博多編 (1) (角川コミックス・エース)

時代:鎌倉時代/難易度:低
蒙古襲来、あるいは元寇と呼ばれるモンゴル軍(当時の元)の日本侵攻に焦点を置いた珍しい作品。流人(流罪になった罪人)として対馬に流された朽井迅三郎(くちい・じんざぶろう)だったが、そこは対モンゴル軍の最前線だった。対馬の住民と、寄せ集めの罪人を率いて屈強なモンゴル兵と戦うことになった迅三郎は、果たして生き延びることができるのか、注目だ。

主人公の迅三郎はフィクションの人物だが、鎌倉末期の戦術や、モンゴル軍の強さの理由など元寇のすべてが詳細に描かれている。作者はたかぎ七彦。現在は続編の「アンゴルモア 元寇合戦記 博多編」がWebで連載中だ。対馬編は完結しており、アニメ化もされている。

山賊王

山賊王(1) (月刊少年マガジンコミックス)

時代:鎌倉〜南北朝時代/難易度:低
執権·北条高時に父親を殺された農民の少年·樹長門(いつき・ながと)は、自身が持つ「星型のあざ」と同じあざをその身に宿す男・楠木正成と出会う。この星型のあざは、北条一族と鎌倉幕府を倒す運命を持つ者に現れる印だった。長門は不思議な力を持つ先祖伝来の刀と、時の権力者に歯向かう気概をもった悪党たちと共に父の仇討ちを目指すが…。

楠木正成や足利尊氏、新田義貞らによる北条家打倒の挙兵と、鎌倉幕府の倒幕戦争までを描いた作品だ。稀代の軍師と言われる楠木正成ら悪党の編みだすゲリラ戦法が面白い。作者は「遮那王 義経」の沢田ひろふみ。全13巻の完結作品。

逃げ上手の若君

逃げ上手の若君 1 (ジャンプコミックス)

時代:室町時代/難易度:低
今一番注目されている歴史漫画といえば、「逃げ上手の若君」だろう。作者はTVドラマや映画化された「暗殺教室」の松井優征。主人公の北条時行は、前述の「山賊王」では悪役として描かれる北条高時の息子だ。父・高時が信頼していた足利尊氏の謀反によって討ち取られ、一族郎党が皆殺しにされる中、時行はどこまでも逃げ延び、尊氏に復讐する道を選ぶ。

武芸も争いごとも苦手ながら、逃げ足だけは誰よりも早い時行の逃避行&仇討ち物語だ。歴史上の悪役というイメージある北条氏の最後の後継者がヒーローであるという意欲作だ。掲載されている週刊少年ジャンプらしい軽い読み口で、歴史が苦手な人でも読み進めやすいだろう。既刊2巻。

新九郎、奔る!

新九郎、奔る!(1) (ビッグコミックス)

時代:室町時代/難易度:低
「機動警察パトレイバー」を描いた男性漫画家のゆうきまさみが送る、戦国青春ストーリーだ。主人公は伊勢新九郎。のちに北条早雲を名乗り、戦国大名の先駆けと呼ばれるようになる男である。北条早雲の人生は謎が多く、従来名もない浪人から成り上がった「下剋上」の象徴と思われていた。しかし、近年では伊勢新九郎というれっきとした武家の出身である説が有力だとされている。

本作ではそのような最新研究を汲みながら、応仁の乱に端を発する世の混迷の中を新九郎がいかにして駆け抜け、関東で一大大名となったのかが描かれている。ベテランの巧みさで、ややこしい応仁の乱周辺の時代背景や人物模様がわかりやすく構成されており、とても読みやすい。既刊8巻(2021年9月10日現在)。

信長協奏曲

信長協奏曲(1) (ゲッサン少年サンデーコミックス)

時代:戦国〜安土桃山時代/難易度:低
アニメ化に加えドラマ・映画で実写化された人気作だ。ある日、現代日本から戦国時代にタイムスリップしてしまった高校生のサブローは、家出をした信長と間違えて織田家に連れ戻され、そのまま信長として生きる羽目になってしまう。危機感が薄く、どこかぼんやりしているサブローだが、突飛な発想となぜか人を惹き付けるカリスマ性から意図せず史実の信長と同じ道筋を歩んでいくことに。

石井あゆみのあっさりとした独特の絵柄が、歴史漫画と実にマッチしている。歴史に詳しくなくても楽しめるが、信長の逸話や伝説を知っていると「あの話は信長が現代人だったからか!」と納得させられてしまう。タイムスリップものというSFのはずだが、どんな歴史漫画よりもリアルだ。既刊21巻。

へうげもの

へうげもの(1) (モーニングコミックス)

時代:戦国〜安土桃山時代/難易度:中
命がけで戦い、領地を増やしたり名を残したりすることこそ本懐だった武将たちのなかで、茶の湯に興じ「数寄(風流)」に人生を賭けた男がいた。その男こそが、本作の主人公・古田織部だ。武将でありながら千利休の弟子として茶道を極め、自らの名前を冠した焼き物「織部焼」まで作ってしまう異色の大名だった織部の人生が描かれている。

本作の特徴は、「シリアスなギャグ漫画」であることだ。登場人物の顔芸や「はにゃぁ」や「めたぁ」など、独特の擬音などギャグテイストのシーンが多いのだが、キャラクターたちはそれをすべて真剣に行っている。そんな矛盾こそ面白いという「粋」の極地のような漫画だ。作者は山田芳裕。全25巻の完結作品。

信長の忍び

信長の忍び 1 (ジェッツコミックス)

時代:戦国〜安土桃山時代/難易度:低
信長に仕える忍者の少女の視点から描かれる、4コマ漫画。基本的にはギャグ漫画だが、きちんと史実のネタや逸話のネタを拾っているため、楽しんで読んでいるうちに歴史が学べるというお得な作品だ。

作者の重野なおきは他にも同様の4コマ歴史漫画を多数発表しており、真田幸村らについて描いた「真田魂」、黒田官兵衛について描いた「軍師 黒田官兵衛伝」、伊達政宗を描いた「政宗さまと景綱くん」、明智光秀が主役の「明智光秀放浪記」など様々な武将を題材にしている。「信長の忍び」を読んで特定の武将が気になったら、同じ重野なおき作品で深堀してみるのもいいだろう。既刊18巻。

風雲児たち

風雲児たち 1巻 (SPコミックス)

時代:安土桃山〜江戸時代/難易度:低
「幕末を描くならば、戦国時代から描かなければいけない」という、作者・みなもと太郎の情熱によって、戦国時代の「関ヶ原の戦い」からスタートする本作。

戦国時代の終焉と江戸時代の興り、徳川幕府の政治体制や、当時の文化人、研究者、思想家たちの生き様を描きつつ、250年以上にわたった江戸時代の様々な思惑や出来事が、最終的にすべて幕末の動乱に帰結していくという流れがわかりやすく、見事に描かれている。惜しむらくは、作者が最も描きたかったであろう幕末編の執筆中に病に倒れ、志半ばで亡くなられたことだろう。第1部は完結、第2部である幕末編は、既刊34巻で未完となった。

大奥

大奥 1 (ジェッツコミックス)

時代:江戸時代/難易度:中
史実では男性である江戸時代の将軍を女性に、そして大奥を男性たちが集められた場所にと、男女を逆転させて描いたのがよしながふみの「大奥」だ。三代将軍・家光の治世下に、突如として「男性のみに発症」する謎の伝染病が流行り、男性の人口が激減。徳川将軍家も例外ではなく、このままでは将軍家が途絶えてしまう。苦渋の決断の末、女性が将軍を継いでいくことになる。男女が逆転した世界観だが、話の流れはフィクションを交えつつも、史実に忠実に進んでいく。

家光の時代から、大政奉還が起きるまで、規模は縮小されつつも残り続けてきた「大奥」という制度から江戸時代の歴史を紐解く傑作だ。女性向けの作品ではあるが、男性でも楽しめるのでぜひ読んでみてほしい。全19巻の完結作品。

ちるらん 新撰組鎮魂歌

ちるらん 新撰組鎮魂歌 1巻

時代:江戸時代(幕末)/難易度:低
誰もが知る新選組の物語を、土方歳三を主役に描いた作品。ヤンキー漫画のようなテイストで、キャラクターデザインが派手だったり、次から次へと強敵が現れたりと、今回紹介する作品の中でもかなり「漫画チック」なストーリーである

。フィクション部分も多いが、新選組がいち剣術道場だった頃から、長州や薩摩など新政府軍との戦いまで、しっかりと描写されている。特に、大政奉還以降、新選組が壊滅に追い込まれていく流れを丹念に描いている作品はあまり多くないので、新選組好きにもおすすめだ。敵も味方もキャラクターが立っているので、新選組入門編としても読みやすい。作画·橋本エイジ、原作·梅村真也。既刊30巻。

ふしぎの国のバード

ふしぎの国のバード 1巻 (HARTA COMIX)

時代:明治時代/難易度:低
外国人が自由に往来できなかった明治の日本で、北海道を目指し、地方や未踏の田舎を旅した実在の女性冒険家イザベラ・バードの著書「日本奥地紀行」を元にした作品。歴史上の大きな出来事はほとんど登場しないが、当時の東京と地方の文明格差や、地方特有の文化を、外国人であるイザベラの目を通して一緒に知り、学ぶことができる。

英語を話すどころか、外国人と触れ合ったこともない明治の地方で、驚いたり学んだりするイザベラの感覚は現代日本人に近く、共感しやすいだろう。現地の日本人が話す言葉は読めない文字で描かれる(イザベラが理解できない言葉のため)など、ディティールに作者のこだわりが見える。佐々大河著。既刊8巻。

ペリリュー ―楽園のゲルニカ―

ペリリュー ─楽園のゲルニカ─ 1 (ヤングアニマルコミックス)

時代:昭和時代/難易度:低
現在のパラオ諸島にある小さな島「ペリリュー島」は、第二次世界大戦の最中、2ヶ月半におよぶ死闘が繰り広げられ多くの死者を出した。4万人の米軍に対し、日本軍は非戦闘員の労働者も含め1万人程度と、圧倒的な人数差と物量のなか、日本軍兵士たちはゲリラ戦で徹底抗戦したという。

戦艦大和をはじめとする海戦や特攻隊などに比べ、その戦況や悲惨さが知られていないペリリュー島の戦いに焦点をあて、どのように戦い、どうやって終結したのかを描いた戦争漫画だ。絵柄が可愛らしく「戦争漫画っぽさがない」と話題になったが、内容は徹底的な取材のもとに描かれたリアルな作品である。「戦争を終わらせることの難しさ」がテーマの、今読んでおきたい作品。著者は武田一義、原案協力に平塚柾緒。完結作品。

壮大な中国史の漫画5選

世界四大文明のひとつでもある中国は歴史が非常に長く、また日本にはない規模で、壮大な物語が多いのが魅力だ。登場人物が多く複雑な中国史も、漫画を通してみることで頭の中で整理しやすくなる。

キングダム

キングダム 1 (ヤングジャンプコミックスDIGITAL)

時代:春秋戦国時代/難易度:中
累計発行部数が8千万部超えとされる大人気漫画である。実写映画化も成功していて、公開年の邦画興行収入第1位を記録し、続編の制作も決定しているという。孤児の少年・信(しん)は、中国統一を目指す秦国の少年王・政(せい)と出会う。この政こそ、後の「始皇帝」となる中国最初の皇帝の幼き姿だった。

武を鍛え上げ将軍へと成り上がっていく信と、偉大なる王になろうとする政の友情や主従関係、周囲の魅力的な登場人物など、アツい要素が揃っている。司馬遷によってまとめられた「史記」にある記述などを基にストーリーが組み立てられており、登場人物の多くが実在する人物だ。これまで兵馬俑や万里の長城などでしか注目されて来なかった始皇帝の半生が学べる。既刊62巻。

龍帥の翼 史記・留侯世家異伝

龍帥の翼 史記・留侯世家異伝(1) (月刊少年マガジンコミックス)

時代:秦〜前漢時代/難易度:中
始皇帝の死後に興る「漢」の軍師だった張良を主人公とした漫画だ。張良(子房)といえば名軍師の代名詞としても知られ、中国史を舞台にした物語のなかでは形容詞的に度々用いられるので名前だけでも知っておきたい人物だ。「わが子房」や「○○の張良」と書かれていたら、「張良の如き有能な軍師である」という褒め言葉だ。

本作も「史記」をもとに描かれているが、前述の「キングダム」より忠実度が増す。人名や固有名詞の表記は史記に基づいており、時代考証もしっかりと行なわれているという。格闘漫画「修羅の門」を描いた川原正敏が作者で、本作中でも格闘シーン·戦闘シーンが魅力的だ。既刊20巻。

三国志

三国志 (1) 桃園の誓い (希望コミックス (16))

時代:三国時代/難易度:低
三国時代、および「三国志」、「三国志演義」は、中国史のなかで最も人気のある時代だ。三国志をモチーフにした漫画は数多く出版されているが、やはり横山光輝の三国志を避けては通れない。三国志初心者ならまずこちらの作品を読んで、三国時代の流れをつかんでおくといいだろう。

必要以上の脚色はなく、学習漫画に近い雰囲気で淡々と進んでいくが、登場人物たちは魅力に溢れている。文庫サイズの手に取りやすいバージョンも販売されているので、興味をもったらここからはじめるのがおすすめだ。横山光輝は他にも「項羽と劉邦」や「水滸伝」など中国史作品を多く描いているので、こちらもあわせて読んでみてはいかがだろうか。単行版は全60巻の完結作品。

蒼天航路

蒼天航路(1) (モーニングコミックス)

時代:三国時代/難易度:中
同じく三国時代からもう1シリーズ紹介する。こちらは、従来の三国志作品では悪役として描かれがちだった曹操を主人公にした漫画だ。なぜ曹操が悪役にされるかというと、三国志漫画の多くが参考にしている「三国志演義」は史書というより小説に近く蜀の劉備を主役として描いているからだ。

本作「蒼天航路」はこの三国志演義から距離を置き、正史をもとに構築している。また、主人公は曹操および魏の武将たちだが、他国の武将も一人ひとりキャラメイクされているため、群像劇とも言えるだろう。「キングダム」に近い雰囲気があり、キングダム好きならハマること間違いなしだ。作画は王欣太、原作·原案は李學仁。単行版は全36巻の完結作品。

長歌行

長歌行 1 (ヤングジャンプコミックスDIGITAL)

時代:唐時代/難易度:中
唐の初代皇帝が崩御し、その息子である李建成、李世民、李元吉らの間で後継者争いが勃発。次男の李世民は兄・李建成と弟・李元吉を殺害し二代目皇帝の座を奪い取った。太宗と名乗った李世民は自分が殺した兄弟たちの家族までをも殺害しようとするが、太宗の追手からただひとり、李建成の娘・長歌だけが逃げ延びる。長歌は太宗への復讐を誓い長い旅へと出るが、そこには多くの苦難が待ち受けていた…。

中国の漫画雑誌と日本のウルトラジャンプの両方で連載されていた作品で、作者は中国の漫画家·夏達。作者の体調不良などにより2016年から休載のままとなっている。既刊8巻。

時代も場所も飛び越えて夢中になれる世界史の漫画8選

世界史を扱う漫画の面白さは、国によって様々な歴史があり、見え方も違うところだ。ひとつの国だけを見ているとわからない因果関係も、複数の国から見ることで明らかになる。世界史漫画を読むときは視野を広げてみるのがおすすめだ。

Axis powers ヘタリア

ヘタリア Axis Powers

時代:近現代/難易度:低
世界史漫画を初めて読むのなら、まずこの作品に目を通してほしい。本作は世界の国を擬人化したコメディ漫画だ。キャラクターの性格は「国民性」や「歴史」を大げさにして反映したもので、例えば日本なら「善処します」が口癖でオタク趣味がある男性だったり、ドイツは真面目で頭が固い、筋骨隆々の青年だったりする。

主に第二次世界大戦時のエピソードを紹介しているが、国の成り立ちなどの題材も漫画化されているため、各国の建国〜安定までの物語をざっと知るにはとてもいい漫画だ。それぞれの国の関係性もキャラクターに反映されている。「ヘタリア」でそれぞれの国に対する知識を得てから各国の漫画を読んでみよう。作者は日丸屋秀和。現在も連載中。

ヒストリエ

ヒストリエ(1) (アフタヌーンコミックス)

時代:古代/難易度:中
古代マケドニアの王・アレキサンダー大王(アレクサンドロス三世)の書記官だったエウメネスの生涯を描いた作品。作者は「寄生獣」の岩明均。史実のエウメネスは前半生が謎に包まれている。そこを想像力で補填し幼少期から青年期までをじっくり描いているのも本作の面白い部分だ。

また、本作の舞台になっているのは、アリストテレスなど哲学者が多く生まれた時代である。全編を通して哲学的な問いかけが繰り返されるのも特徴だ。エウメネスや周囲の人々はその問いかけにどう答えるのか、そして自分ならばどう答えるか、エウメネスの生き様から自分の生き方まで見えてきそうな良作。既刊11巻。

アド・アストラ ―スキピオとハンニバル―

アド・アストラ ―スキピオとハンニバル― 1 (ヤングジャンプコミックスDIGITAL)

時代:古代/難易度:高
ハンニバルとスキピオと言えば、ヨーロッパ史でよく名前が挙がる名将であり好敵手である。ハンニバルはカルタゴ(現在のチュニジア辺り)の将で、一大帝国だったローマを度重なる戦で追いつめた。一方スキピオはローマ側の英雄で、ハンニバルと対等に戦った軍略家だ。

本作では2人の運命が緻密な筆致で描かれる。ストーリーに出てくる戦術や布陣も同時代に実際に使用されたものがリアルに描かれており、戦略シミュレーションゲームが好きな人にはたまらない。どちらも神がかった才能があるにも関わらず、歴史上では非業の死を遂げている人物だ。その辺りの天才ゆえの孤独や周囲の不理解をどのように料理しているかも見どころである。作者はカガミノハチ。全13巻の完結作品。

チェーザレ 〜破壊の創造者〜

チェーザレ 破壊の創造者(1) (モーニングコミックス)

時代:15世紀/難易度:高
15世紀イタリアに実在した、天才的な政治家であり軍人、貴族の男チェーザレ・ボルジアの若かりし頃からを描いた作品。チェーザレ・ボルジアというと実の妹との密通が噂されていたり、卑怯な手段で政敵を追い落とし権力を掌握したりした人物として取り上げられることが多いが、本作では誰よりも革新的な考えをもった優秀な人物で、カリスマ的魅力のある存在と捉えられている。

作者・惣領冬実の調査も綿密で、情報を精査した上で制作されている。作画も非常に細かく、繊細で美しい宗教画のような雰囲気がある。主役はチェーザレだが、主人公はチェーザレの学友・アンジェロで、彼の視点で物語が進んでいく。既刊12巻。

ヴラド・ドラクラ

ヴラド・ドラクラ 1巻 (HARTA COMIX)

時代:15世紀/難易度:中
ブラム・ストーカーによって生み出されたモンスター「ドラキュラ伯爵」。そのモデルになったと言われる、ワラキア(現在のルーマニア南部)の領主・ヴラド三世の真実の姿に迫る作品。

ヴラド三世は苛烈な性格で、自領に攻め込んできたオスマン・トルコ帝国の兵士の死体を串刺しにして晒した狂人とも言われる。しかし、実情は領主と言っても国内の貴族たちに実権を握られ、思うように領地運営もできないまま大国と戦わなければならなかったそうだ。本作では苦難のなかにありながら、それでも国を守り抜こうとした「護国の王」としてのヴラド三世の生涯が描かれている。著者は大窪晶与。既刊4巻。

乙女戦争 ディーヴチー・ヴァールカ

乙女戦争 ディーヴチー・ヴァールカ : 1 (アクションコミックス)

時代:15世紀/難易度:高
15世紀初頭に、ボヘミア(現在のチェコ周辺)で起きた、宗教戦争「フス戦争」を題材にしている。カトリック信者以外を異教徒として弾圧する聖ヨハネ騎士団に村を蹂躙され、自らも性暴力を受けた少女シャールカはフス派の戦士として、農民軍と共に強大な戦力を持つカトリック派と戦うことに。女子も動員する熾烈な戦争の姿や、復讐の悲惨さを、シャールカの視点から描いている。

フス戦争は世界史のなかでは地味な戦争だが、この後の長きにわたるカトリックとプロテスタントの争いや確執の端初となった戦いだ。登場人物には少女が多く、それもまた戦争の悲しさを物語る。何度も辛い目に遭いながらも平和を求めるシャールカの希望が叶う日が来るのかは本編を読んで確かめてもらいたい。作者は大西巷一。全12巻の完結作品。

ベルサイユのばら

ベルサイユのばら 1 (マーガレットコミックス)

時代:18世紀/難易度:低
西洋史がテーマの歴史漫画と言えば「ベルサイユのばら」だろう。「ベルばら」の愛称で親しまれ、宝塚歌劇団では何度も公演されるほど人気の演目である。18世紀末頃のフランスを舞台に、男装の麗人オスカルと王妃アントワネットの主従関係や、宮廷の恋愛模様が描かれた不朽の名作歴史漫画だ。

本作を読むと、王妃アントワネットがフランス王家に嫁いで来てから、フランス革命で処刑されるまでの流れがよくわかる。また、悪女として描かれやすい王妃アントワネットが、無邪気で悪意のない女性として表現されているのもポイント。作者の池田理代子は他にも歴史漫画を描いている。完結作品。

イノサン

イノサン 1 (ヤングジャンプコミックスDIGITAL)

時代:18世紀/難易度:高
前述の「ベルサイユのばら」で描かれる王妃アントワネットの処刑だが、その死刑を執行したのが今作品の主人公・シャルル=アンリ・サンソンだ。サンソン家は代々続く死刑執行人であり、「罪人を裁く正義の番人」や「死神」と呼ばれる存在だった。そんな存在の矛盾や、残酷な方法で処刑しなければならない苦しみに煩悶しながらもサンソンは死刑執行人として生きる決意を決める。しかし、フランス革命の波がサンソンをも飲み込もうとしていた…。

実在した死刑執行人シャルル=アンリ・サンソンと、その妹マリー=ジョセフ・サンソンの兄妹を描いたシリーズ。「イノサン」とその続編「イノサンRouge」の2部構成だ。作者は坂本眞一。既刊12巻。

大人も楽しめる伝記漫画5選

最後は、偉人の人生をわかりやすくまとめた伝記漫画を紹介する。これまでの紹介作品にも偉人について描かれたものがあるが、こちらは時代背景よりもさらに偉人の人生に焦点が置かれている。

昭和天皇物語

昭和天皇物語(1) (ビッグコミックス)

時代:昭和時代/難易度:中
半藤一利の「昭和史」を原作に、昭和天皇の歩んだ人生を追う。作画は能條純一、脚本協力に永福一成。明治に生まれ、25歳で天皇に即位、第二次世界大戦や戦後の高度経済成長期を生き抜いた、昭和天皇の見た日本の姿とはどのようなものだったのだろうか。同時代の人ながら教科書やテレビでしか目にしていなかった皇族の真の姿がわかる問題作だ。少年時代からお妃選びの方法、恩師との会話など、昭和天皇のみならず、皇室関係者の真実も垣間見える。既刊8巻(2021年10月に9巻発売予定)。

天地明察

天地明察(1) (アフタヌーンコミックス)

時代:江戸時代/難易度:低
冲方丁が2009年に発表した同名小説を漫画化した作品だ。江戸時代初期、算術や天文学にのめり込んだ武士がいた。彼の名は渋川春海。渋川は、幕府から改暦の命を受け、新しい暦づくりに着手する。それは天体の精密な観測や複雑な計算が必要な、一大プロジェクトだった。数々のトラブルに見舞われながらも人生を賭けてこのプロジェクトに立ち向かい日本初の国産の暦である「貞享暦」を作り上げるまでの過程を描いている。作画は槇えびし。全9巻の完結作品。

スティーブ・ジョブズ

スティーブ・ジョブズ(1) (Kissコミックス)

時代:近現代/難易度:低
Apple社の創始者の一人で、天才実業家のスティーブ・ジョブズの生涯を伝記作家ウォルター・アイザックソンがまとめたベストセラー「スティーブ·ジョブズ」を漫画化。作画は「テルマエ・ロマエ」、「プリニウス」のヤマザキマリ。コンプレックスや孤独を抱えながら生き抜いた、カリスマの素顔が明らかになる。全6巻の完結作品。

マンガで読む 新研究 織田信長

マンガで読む 新研究 織田信長

時代:戦国〜安土桃山時代/難易度:低
織田信長に関する伝記的作品。作者は「マンガで読む 戦国の徳川武将列伝」や「マンガで読む 信長武将列伝」など、戦国武将たちの人生や逸話を紹介する漫画作品を何冊も出版しているすずき孔。タイトルに「新研究」とあるように、従来の先進的な意識をもった革命児という信長像ではなく、近年の研究結果に基づいた新しい信長像を描いている。監修は柴裕之。1巻完結。

栄光なき天才たち

栄光なき天才たち 1巻

時代:近現代/難易度:低
輝かしい記録や成果を上げながらも、ちょっとした掛け違いで日の目を見なかった天才や、現代では評価されているが、当時は評価されなかった不遇の人など、歴史の影に隠れた才能を発掘して紹介する伝記漫画。グラハム・ベルと同じ電話機を開発しながらも、特許申請が遅れ栄光を掴みそこねたエリシャ・グレイなどが取り上げられている。作者は森田信吾。単行版は全17巻の完結作品。

まとめ

歴史漫画は大人が改めて歴史を知りたいときに読めるだけでなく、子どもたちの勉強にも役立つのでぜひ触れてみてほしい。どの漫画を読もうか迷ったら、日本史か世界史、そしてどの時代をテーマにした作品が気になるかで決めよう。小学生くらいの子どもなら理解しやすい学習漫画を選ぶのもおすすめだ。

もしなかなか作品が決まらないなら、本記事で紹介した中から気になる漫画をピックアップして読んでみよう。どれも面白さは折り紙付きだ。

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