短い梅雨に喜びつつ向かった初夏の千葉県房総半島。断崖絶壁の絶景を望むキャンプ場で、江戸前の海産物と千葉が誇る名水を仕入れて、思うがままに海鮮バーベキューを楽しんだ。

■千葉の味を存分に堪能する海鮮キャンプの始まり

とかく酷暑といわれることが多い昨今の日本の夏。2022年に至っては異例の早さで梅雨が明け、長い夏の始まりに驚いたのも記憶に新しい。本格的な夏の到来を前に体を慣らそうと向かったのは、千葉県南房総市にある「カッパドキアFAMILY」というキャンプ場だ。

切り立った断崖を背にしたサイトからの見晴らしは壮大で、天気が良ければ東京湾に浮かぶ富士山や、海に沈む夕陽が楽しめるという。期待と一緒にキャンプギアを車へ詰め込み、アクアラインをひた走る。

海を望むキャンプ場で過ごすなら、食事は海の幸をいただきたい。安直ではあるが地産の食材で料理を楽しむのもキャンプの醍醐味といえる。

まず最初に立ち寄ったのは木更津市の「厚生水産 富士見営業所」。隣接するカキ小屋が人気の魚介直売店だ。ここは車海老の屋内養殖発祥の地で、屋内いけすと冷却おがくず保存を日本で初めて成功させ、創業者の名前から「杉井式」として特許と実用新案が認められた歴史ある水産会社。

店内奥には立派ないけすがあり、鮮度抜群の魚介類が豊富に並んでいる。店員と相談しながら、ハマグリ、ホタテ、大ぶりの車海老、アサリなどを購入することにした。


ハマグリやホンビノス貝も並んでいる。


サザエやカキなど粒の揃った鮮度の良い魚介が安く購入できる。

どれを買うか迷うほどの品揃えだ。
三陸産の大ぶりなホタテ(1個540円)。

いけすで養殖される自慢の車海老(大)は3匹で2000円。

その足で次に向かったのは城下町の風情が残る君津市久留里だ。名水の町として知られ、町中には一般開放された井戸が6つほどあるという。せっかくなら平成の名水百選にも選ばれた久留里の水を汲んで行きたい。

さらに久留里には豊富に湧き出る水を使った酒蔵が5つあるという。ならばと立ち寄ったのは貴重品種の紅小町を使った芋焼酎「紅小町」や「房総ウイスキー」で知られる酒蔵「須藤本家」。

今夜は海鮮料理を肴に、久留里の名酒を名水で割って長い夜を思うがままに堪能しよう。


久留里の国道沿いにある「高澤の水」。

君津市の「須藤本家」に立ち寄る。

独り宴のメニューが整ったところで、足りない食材を確保することにした。地元スーパーで調味料や追加の魚介を購入しつつ訪れたのは「道の駅 保田小学校」だ。

廃校となった小学校をリノベーションした人気の道の駅で、体育館を活用した巨大マルシェ「きょなん楽市」がお目当て。地元農家が手塩にかけて育てた野菜や、千葉県産の加工食品、酒類などが豊富に揃う。朝食用の食材や野菜、地ビールなどを買い込んだ。


千葉の特産品の品揃えは地域No1だという。道の駅オリジナル商品も並び、見ているだけでも楽しい。

朝食用に購入した「いわしハンバーグ」(594円)。

●その場で浜焼きも楽しめる

魚介類専門店として知られ、品質の高さ、鮮度の良さは折り紙付き。カキ小屋では購入したばかりの魚介をバーベキューで味わうことができる人気スポット。


昭和15年(1940)に「杉井式」の特許などが認められ、翌年に創業した厚生水産。隣接するカキ小屋で浜焼きを楽しむことも可能だ。

厚生水産 富士見営業所
千葉県木更津市富士見3-4-43
TEL:0438-22-2222
営業時間:8:00〜17:30
定休日:元日
アクセス:館山自動車道「木更津南IC」より約10分

●平成の名水百選にも選出された

久留里の数ある井戸水の中でも美味しいと評判の「高澤の水」。国道410号沿いにあり、駐車場から30mほど歩く。

高澤の水
千葉県君津市久留里
アクセス:圏央道「木更津東IC」より約15分

●久留里の名水と挑戦する酒造り

明治18年(1885)創業の老舗酒蔵。代表銘柄は「天乃原」で、久留里の天然湧水を仕込みに使用する。近年は千葉県初の地ウイスキー「房総ウイスキー」が注目を集め、伝統と進化の両立を続けているのだ。

須藤本家
千葉県君津市青柳16-10 
TEL:0439-27-2024
アクセス:圏央道「木更津東IC」より約13分

●廃校を再生した複合施設

宿泊可能な道の駅として平成27年(2015)にオープン。給食メニューが食べられる「里山食堂」や温浴施設「里の小湯」、特産品の直売所「里山市場きょなん楽市」など、魅力たっぷりだ。

道の駅 保田小学校
千葉県安房郡鋸南町保田724
TEL:0470-29-5530
営業時間:9:00〜17:00
定休日:無休
アクセス:富津館山道路「鋸南保田IC」よりすぐ

■最高のロケーションで食べて食べて食べまくる

道の駅 保田小学校から車を走らせること約10分。細い山道を抜けたどり着いた「カッパドキアFAMILY」は、噂に違わぬ断崖が目の前にそびえ立つ。そのロケーションに圧倒されつつチェックインしたのは、オーシャンビューサイトの中で最も断崖に近いT9サイト。

パップテントはタープいらずのため設営の楽さが特徴。ソロの場合はこれ一つということも多い。

どのサイトも地面はフラットで、草刈りも完璧。そのため初心者でも安心して設営ができるが、ペグには注意したい。場所によっては打ち込んで5㎝ほどで岩に当たってしまうのだ。鋳物のハードなペグを使用しなければ、折れてしまったり曲がってしまうだろう。

若干、ペグ打ちに苦心しつつもテントとコットを組み立て、ひと通りサイト設営が完了したら、まずは一杯“おつかれビール”と決め込むことにした。あっという間に地ビールを1本流し込み、さて何から調理しようか。

まず初めに取りかかったのは朝イチで購入した魚介の炭焼き。下ごしらえは熱で丸まらないよう車海老に串打ちするだけ。大粒のハマグリとホタテも並べ、じっくりと焼いていく。貝が開いて頃合いのところで昆布醤油を垂らせば、豪華海鮮バーベキューの完成だ。


車海老は尻尾の腹側から串を刺す。

メインの海鮮バーベキュー。どれも新鮮なので味が濃い。

手間要らずのアサリの酒蒸し。

タラのホイル焼きはニンニクと味噌、マヨネーズでソースを作る。

車海老は味付けの必要なしで、ちょうど良い塩加減。殻まで柔らかくバリバリと食べ尽くす。あっという間にすべて平らげた後は、炭火を生かしてアサリの酒蒸しをメスティンで。さっと洗った砂抜き済みアサリを日本酒で蒸すだけのシンプルさだが、味は絶品。

ほかにマグロのワサビ醤油ソテーや、タラのニンニク味噌ホイル焼き、タコの和風アヒージョなど食欲の赴くままに作っては食べ、作っては食べを繰り返し、夜が更けていくのである。

かたわらには芋焼酎「紅小町」。クセがなくまろやかな久留里の名水で割って飲めば、芋本来の豊潤な香りがさらに引き立ち飲み口も爽やか。「房総ウイスキー」は華やかな甘さと香りが、魚介の風味にも合う。食中酒としても成立するバランスの良さだ。


マグロは柵のまま鉄板で焼き目をつけるだけ。

ソロキャンプ飯の醍醐味は誰にも気を使わず、食べたいものを食べたい時に、好きなように調理して食べられることだろう。

芋の香りがかなり豊潤で、芋焼酎好きにはたまらない仕上がりの「紅小町」。

焚き火で作るタコの和風アヒージョ。味付けはニンニクと白出汁のみ。

■生憎な空模様の二日目。思いつきで立ち寄る名所

宵の口にしとしと降り出した雨も夏の風情の一つと、焚き火を絶やさぬよう見守りながら酒に酔いしれる。ほろ酔いのまま床に着けば、ささやかな虫の音を子守唄にぐっすりだ。

すぐに止みそうな雨脚なので気にせず焚き火を続行。

翌朝、雨は上がったものの曇天模様。好意的に捉えれば撤収時に体力を奪われなくて済むと前向きに言い聞かせ、富士山を望む絶景の朝食は諦めた。だが食事自体はしっかりと摂りたいところ。

道の駅で仕入れた「いわしハンバーグ」と青シソ、チーズをホットサンドにした。腹ごしらえが完了したら、気温が上がりきる前に撤収作業に取り掛かる。

天気が良ければキャンプサイトから東京湾越しの富士山を望む、抜群の絶景キャンプ場だ。


朝食は焚き火でホットサンドを作ることに。

いわしハンバーグがメインの手抜きの一品。青シソとチーズがアクセントになって美味。

順調に撤収が完了してキャンプ場に別れを告げ、涼を求めて向かった先は「灯籠坂大師の切通しトンネル」だ。近年では“映えスポット”として人気の場所だという。手掘りで抜かれたトンネルのスケール感に驚きつつ、冷んやりとしたトンネル散歩を楽しんだ。

せっかくなので、もう一カ所どこかへ立ち寄りたい。スマホで近隣のスポットを調べたところ東京湾を見晴らす巨大観音、その名も「東京湾観音」があるという。

のどかな農村風景の中、突如として現れる白亜の観音は、東京湾を一望する丘の上に鎮座し、高さ56mの胎内には324段の螺旋階段が設えられ拝観しながら登ることができる。撤収で疲れてはいたがこれも何かの思し召しと思い、最上階まで行くことに。残念ながら生憎の天気で東京湾は霞んでいたが、良い旅の締め括りとなった。


絶景の「燈籠坂大師の切通しトンネル」。


「東京湾観音」は真下へ行くとさすがの迫力。

胎内にはさまざまな仏様や観音像が安置される。

●空海ゆかりの手掘り洞穴

弘法大師空海が行脚中に腰を休めたと伝わる東善寺の飛地境内が灯籠坂大師。その大師堂へ続く参道がこの切通しトンネルだ。明治から大正頃に手掘りで造られたとされ、昭和初期に切下げ工事を行い現在の形となった。

燈籠坂大師の切通しトンネル
千葉県富津市萩生8-2
アクセス:館山自動車道「富津竹岡IC」より約5分

●世界平和を祈念する

南房総国定公園の大坪山に鎮座する東京湾観音。昭和36年(1961)、世界平和を祈念して宇佐美政衛氏が私財で建立した。原型作者は彫刻家の長谷川昴氏で、柔和で優しい顔立ちの観音様が東京湾を見守っている。

天上界(最上階)からの見晴らし。晴れていれば遠く富士山も。

東京湾観音
千葉県富津市小久保1588
TEL:0439-65-1222
営業時間:8:00〜17:00(受付は〜16:00)
定休日:無休
アクセス:館山自動車道「富津中央IC」より約5分

■キャンプサイト情報

●カッパドキアFAMILY

遺跡のような断崖と海を望むキャンプ場。元は非公開の会員制だったが現在は一般に開かれている。平日であれば予約がなくてもチェックイン可能な場合も。詳しくは問い合わせを。

千葉県南房総市高崎886-4
TEL:080-9219-9651
営業:通年
料金:使用料大人660円、車1台6600円〜
チェックイン:13:00〜17:00、チェックアウト:11:00
アクセス:館山自動車道「鋸南富山IC」より約15分
公式サイト:https://sunnybase.net/cappa/
※開設期間、シーズン料金などの詳細はHPでご確認ください。

Text/Tomo Tamura Photo/Fumihiko Ikemoto

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