稲垣吾郎さん、草なぎ剛さん、香取慎吾さんによる「新しい地図」が多岐にわたる活動に取り組み、躍進を続けています。その中でも、今回は役者としての活動に注目し、それぞれの魅力とともに振り返ります。

 香取さんはNHK大河ドラマ「新選組!」(NHK総合)、「人にやさしく」(フジテレビ系)、「家族ノカタチ」(TBS系)など、草なぎさんは「僕の生きる道」(フジテレビ系)、「銭の戦争」(関西テレビ・フジテレビ系)、「嘘の戦争」(同)、稲垣さんは「不機嫌な果実」(テレビ朝日系)、映画「十三人の刺客」(2010年)など、独立する前から、印象に残る演技を数多く見せてきました。最近は、より挑戦的な役を演じている印象が強く残っています。

「アノニマス」から感じる年齢の厚み

 まずは香取さんについてです。近年の作品では、映画「凪待ち」(2019年)での演技に度肝を抜かれました。毎日をふらふらと過ごし、酒とギャンブルに溺れる主人公・郁男を演じていますが、これまでの作品の中でも一、二を争うほど、人間が闇落ちしていく姿が映し出されています。

 そんな郁男を、見続けるのがしんどくなるほどのリアルな再現性で体現し、これまでの香取さんのイメージをいい意味で大きく変えるとともに、役者として大きな変貌を遂げ、さらなる躍進につながるきっかけとなった作品であると感じます。

 さらに直近では、ウェブドラマ「誰かが、見ている」(Amazonプライム・ビデオ)や、現在放送中のテレビ東京系連続ドラマ「アノニマス〜警視庁“指殺人”対策室〜」(毎週月曜 後10:00)と、コミカルからシリアスへと振れ幅のある作品へ立て続けに出演しています。

 どちらかというと、コミカルで明るい印象の強い香取さんですが、年を重ねるごとに厚みが出てきているように感じ、それが役の説得力としてにじみ出ているのが「アノニマス」です。

 彼が発するからこそ、一言一言により重みを感じるのです。香取さんの役としての存在感の大きさを実感する作品となっており、題材としても、彼が出演する意味を強く感じ、毎回考えさせられる骨太な作品になっています。作品を底上げするような空気をつくれる役者であると感じます。

 続いて、草なぎさんは元々、繊細さと大胆さを兼ね備える役者として、「僕の生きる道」「銭の戦争」など、機微を表現することが求められる役や任侠を感じさせる役に優れている印象を持っていました。相手をにらみ付ける鋭い目つきと穏やかな優しい目つき、どちらも様になるのが印象的です。

 近年では、映画「まく子」(2019年)、「台風家族」(同)と出演作が続きましたが、特に注目されたのが「ミッドナイトスワン」(2020年)です。今まで演じたことがなかったトランスジェンダーの役を見事に体現していました。

 トランスジェンダーであるがゆえの葛藤、自分にも他人にも厳しくあった姿から母親としての優しさが芽生えていく姿まで、表情の変化も含めて、まさに今までの集大成を感じるとともに、これからのさらなる役幅を感じさせるような、新境地ともなる演技であると感じました。

 草なぎさんの演技には、どの役でもその役になり切る憑依(ひょうい)性を感じられ、印象に残り続けることが多いのですが「ミッドナイトスワン」もまさにそうでした。同作はさまざまな映画賞にノミネート・受賞し、「日本アカデミー賞」では作品賞・主演男優賞をはじめ、新人俳優賞を含めた9部門で賞を獲得しました。

 現在は、NHK大河ドラマ「青天を衝け」(毎週日曜 後8:00)で重要な役どころになりそうな徳川慶喜役で出演。また、震災から10年の被災者の心の葛藤や復興への歩みを描くNHK・宮城発のドラマ「ペペロンチーノ」で主演を務めることが発表されており、今後もより幅広く、さまざまな役を演じていくのではないでしょうか。

「半世界」で変わった稲垣吾郎のイメージ

 最後に稲垣さんについてですが、役者として最大の魅力は独特のミステリアスな雰囲気を持っていて、それが役になると、彼にしかできない役としてリンクする点です。

 稲垣さんにしか出せない空気感があって、それはどこか異世界に住んでいるような感覚を覚えるほどです。それゆえに、市井に溶け込んでいく役は難しいのではないかと、ある作品に出会うまでは感じていました。

 そのイメージがガラッと変わったのが、映画「半世界」(2019年)での演技です。とある地方都市のさらに郊外に住み、父から受け継いだ山中の炭焼き窯で備長炭を製炭することを仕事とする主人公・高村紘を演じています。

 この役では、幼い頃から友人や町の人々との触れ合い、さらに夫婦や親子関係にまつわるあらゆる人間模様が描かれています。その中で、稲垣さんは等身大の人間味あふれる役で市井に溶け込み、見事に演じ切っていました。同作を見て率直に感じたのは、稲垣さんはこういう役もできるのかという驚きです。

 さらに、稲垣さんの最大の魅力が遺憾なく発揮されたのが映画「ばるぼら」(2020年)です。同作では「半世界」とは打って変わって、ミステリアスな往年の天才小説家を演じています。普段の生活の中では何を考えているのかが分からず、異質な空気感をまとっていて、文学小説を映像化した異世界感が見事に体現されていました。

 それらに加えて、徐々に狂気性を増していき、闇落ちしていく姿までもを演じています。同作のポイントは狂気性と美しさの共存であり、どちらかに偏っていると再現性は低くなっていたと思われます。落ちていく人間の姿がここまで美しいと感じたことはまれで、この役は稲垣さんだからこそ体現できたのではと思いました。

 今後はドラマ「きれいのくに」(NHK総合)への出演も予定されている一方、稲垣さんは舞台での活躍も目覚ましいです。今年4月からは「サンソン−ルイ16世の首を刎ねた男−」の上映が決定しており、死刑執行人であるサンソンを演じる予定で、さらなる飛躍が期待されます。

 それぞれの魅力が光り、年を重ねてもチャレンジをし続ける稲垣さん、草なぎさん、香取さん。3人での活動もそれぞれの個人活動も含めて、今後も「新しい地図」の活躍から目が離せません。