怒りの感情をコントロールするのは年齢問わず、大事なことですが、子育て中の親の中には「5歳の息子が怒りっぽく、怒りが抑えられない場面が多い」「娘がすぐに感情的になる」など、わが子が怒りの感情をコントロールできていないことに不安を感じる人もいるようです。ネット上では「親が短気だと、子どもも短気になりやすいの?」「キレやすい子にならないよう育てるにはどうすればいい?」といった疑問の声もあります。

 わが子を「短気な子ども」「怒りっぽい子ども」にしないための育児について、子育てアドバイザーの佐藤めぐみさんに聞きました。

0歳半ばに基本感情がそろう

Q.一般的に、子どもが「怒り」の感情を抱いたり、態度や表情に表し始めたりする時期はいつごろでしょうか。

佐藤さん「怒りは人間の基本感情の一つとされています。感情に関する発達理論においても、0歳半ばには基本感情が出そろうとされているので、子どもが怒りの感情を抱くのはごく幼少期からといえます。その後、親が子どもの怒りの感情を目の当たりにする場面が増えてくるのは、イヤイヤ期あたりではないでしょうか。2歳の頃にみられる反抗期では、親子がぶつかることが増えるので、子どもが顔を真っ赤にして泣き叫ぶような姿を見ることも多いかと思います」

Q.短気、怒りっぽい子どもに育つ要因や背景には、どのようなことが考えられますか。

佐藤さん「気質的に、もともと気難しい子はいます。きょうだいで同じように育てているつもりなのに、リアクションが明らかに違うといった場合、もともとの性格的な部分が影響していることが多いと考えられます。

一方、生まれてからの環境がきっかけで怒りやすくなっている子もいます。例えば、赤ちゃんの時期から、適切な世話をしてもらっていなかったり、十分な愛情を受けていなかったりする場合、気持ちが不安定になり、不満がたまってしまうので、ちょっとしたきっかけで爆発してしまうこともあるでしょう。

逆に、親が手をかけ過ぎてしまうことがきっかけになる場合もあります。もし、子どもが『つらい』『嫌だな』と感じる前に親が代わりにやってあげてしまうことが日常になっていたら、何かに向き合って取り組む機会が減るため、負の感情を乗り越える学習が不足してしまうことになります。その場合、普通であれば耐えられる負荷でさえ、『こんなの耐えられない』と感じやすくなり、怒りが出やすくなってしまいます」

Q.子どもの短気な性格の形成には、親の性格や振る舞いなども影響するのでしょうか。

佐藤さん「親が物事をどう見ているかは、子どもに伝わりやすいものです。例えば、レジで並んでいるとき、『こんなに並ぶなんて超ムカつく!』などと小言を並べたり、急いでいるときに赤信号になって、『あ〜最悪』と悪態をついたり…こういう場面を目の当たりにすると、子どもは『こういうときはこう解釈するんだ』と学習しがちです。

よく、育児本や育児情報のウェブサイトでは『子どもに対して、どんな言葉掛けをしたらいいか』といった特集がありますが、子どもは自分に直接語られる言葉だけに影響されるわけではありません。『観察学習』といって、見聞きしたことも取り込んでいくのです。その点で、親自身が自分の思うようにならない場面に直面したとき、どんな反応を示すのかが大事になります。

一般的には、人の心の中は見えにくいイメージがありますが、実は私たちがボソッと口にする独り言には、その思いが出ていることがとても多いので、お子さんが横にいるときには特に配慮すべきです」

Q.子どもが怒りの感情をうまくコントロールできるようになるために親がやってはいけないNG行為や、心掛けるとよいことはありますか。

佐藤さん「子どもが怒っているときやキレているとき、その場で『怒るのはやめなさい』『そんなふうにキレちゃだめ』と直接注意しても、それで鎮まることは決してありません。むしろ、逆なでしてしまうのがオチでしょう。その場でできることは非常に限られてしまうので、普段の心掛けが大事になります。

先述のような、怒りを誘発しそうな場面で、親が何とかしのぐ姿を見せていくことはとても有効な学習になります。自分の怒りやイライラにうまく対処できていない人はもちろん、割とうまくできているという人も『自分の怒り対処の場面は子どもの学習の機会だ』ということを気に掛けてみてほしいと思います」

Q.子どもが既に「キレやすい」「感情的になりやすい」様子を見せている場合、そうした状態を改善する方法はあるのでしょうか。

佐藤さん「もともとの性分という場合は基本的に『その子らしさ』として残りやすいので、うまく付き合っていく視点が大事になりますが、キレることを学習してしまった場合、改善は十分に可能だと思います。怒りの感情は自分自身の許せる範囲が狭ければ狭いほど誘発されやすくなります。

家族に対して、友達に対して、学校に対して、身の回りのあらゆる物事に対して、許容範囲が極端に狭いと『許せない!』と感じることが増えるので、怒る回数が増えてしまうのです。この許容範囲の狭さは『絶対○○だ』『○○じゃなきゃだめだ』というような言動として出てくることが多いです。

この場合、心の中でも『ああすべきだ』『こうすべきだ』という強いマイルールがあって、その子を縛ってしまっているものです。この『すべきだ』は親の言動や姿勢から習得していることもとても多いので、まず、親の方から、『できれば、○○だといいな』『こういうこともあるよね』というような、許容を広げた見方を意識できるといいと思います」

Q.「子どもをキレやすい子にしたくない」と考える親は多いようですが、アドバイスはありますか。

佐藤さん「先述の『許容範囲を広げていく』アプローチに加え、じっくり取り組む経験を積んでいくことも有効でしょう。親はかわいいわが子に、できれば、嫌な思いをしてほしくないですし、できれば、ご機嫌でいてほしいと願うものです。しかし、それが時に災いし、子どもが踏ん張って壁を乗り越える前に『かわいそうだから』と手を差し伸べてしまうことがあります。

例えば、パズルや積み木などの遊びを通しても『なかなか、ピースが見つけられない』『あと少しのところで毎回、崩れてしまう』ときに親の手を借りて、簡単に成し遂げてしまえば、『物事は労せずして突破できる』ということに慣れていってしまいます。すると、ちょっとした踏ん張りが必要な場面で耐えられず、怒りやかんしゃくとなって出てしまうことがあるのです。

子どもの負の感情を親が極端に怖がらず、いい汗をかかせてあげることは怒りへの耐性につながっていくので、意識してみてください」