回転ずしチェーン大手「はま寿司」の仕入れ価格などの営業秘密のデータを不正に取得したとして、警視庁は9月30日、同社の元取締役で、「かっぱ寿司」を運営するカッパ・クリエイト(横浜市)の社長だった田辺公己容疑者ら2人を不正競争防止法違反(営業秘密領得など)容疑で逮捕しました。また、カッパ・クリエイトは10月3日、同社が書類送検されたことや、田辺容疑者が社長を辞任したことを発表しました。

 自社の営業秘密を外部に提供した場合や他社の営業秘密を不正に入手した場合、どのような法的責任を問われる可能性があるのでしょうか。芝綜合法律事務所の牧野和夫弁護士に聞きました。

有用な非公開情報は「営業秘密」に該当

Q.そもそも、どのような情報が「営業秘密」に該当するのでしょうか。

牧野さん「企業が秘密管理している有用な非公開情報が対象となります。例えば、営業データ(顧客リストや売り上げデータ、仕入れ価格など)のほか、製造ノウハウや技術情報も『営業秘密』に該当します。コカ・コーラの原液の製造方法なども有名な実例です」

Q.自社の営業秘密を外部に提供した場合や他社の営業秘密を不正に入手した場合、どのような法的責任を問われる可能性があるのでしょうか。

牧野さん「自社の営業秘密を不正に第三者に開示したり、競合他社の営業秘密を不正に取得したりした場合、不正競争防止法が定める『不正競争』に該当し、同法違反で刑事責任(10年以下の懲役もしくは2000万円以下の罰金)のほか、民事責任(損害賠償責任など)も負うことになります」

Q.今回の事件では、競合他社の「はま寿司」の仕入れ価格などのデータがカッパ・クリエイトの社内で共有されていたそうです。もし、企業が組織ぐるみで他社の営業秘密を不正に入手したり利用したりした場合、その企業はどのような法的責任を問われる可能性があるのでしょうか。

牧野さん「企業が組織的に営業秘密を不正に取得したり、不正に利用したりした場合、『不正競争』をした個人の処罰に加えて、企業側が5億円以下の罰金を科され、より厳しい刑事責任を問われます」

Q.不正に入手された他社の営業秘密が社内で共有された場合、その情報を知った社員がその時点で法的責任を問われる可能性はありますか。

牧野さん「他社の営業秘密を知っただけでは、法的責任を問われません。ただし、営業秘密が不正に取得されたことを知った後に第三者に開示したり、利用したりした場合、『不正競争』として先述の刑事責任を負います」

Q.退職する社員に対して、企業が誓約書などを通じて同業他社への転職を禁じることは可能なのでしょうか。

牧野さん「業界によっては、退職時に例えば、『退職直後の6カ月間は、競争他社への転職などの競業をしない』と誓約書を書かせたり、加えて競業が発覚した場合、退職金の全額返還や一部返還を請求したりするケースがみられます。ただし、退職金の全額返還請求や競業の禁止期間が長いケースは、公序良俗違反で無効とされた裁判例もあります」

Q.以前に比べて、営業秘密の持ち出しが発覚するケースが多いと思います。なぜでしょうか。

牧野さん「会社のデータ管理が以前よりも厳しく行われており、持ち出した場合、ログ(記録)が必ず残ることが影響しているのではないでしょうか」