10月から放送され、回を追うごとに話題が高まっている連続ドラマ「silent」(フジテレビ系)。主人公・青羽紬(川口春奈さん)と、「若年発症型両側性感音難聴」を患い、ほとんどの聴力を失ったかつての恋人、佐倉想(目黒蓮さん)の“偶然の再会”から始まるラブストーリーで、展開を見守る視聴者の声がSNSで盛り上がりをみせています。

 この「若年発症型両側性感音難聴」という病気についても、「今まで知らなかった」「ドラマで初めて知りました」「進行が早い病気なのかな」「改善することもあるの?」など、関心が寄せられているようです。劇中に登場する「若年発症型両側性感音難聴」とはどんな病気なのか、東京みみ・はな・のど サージクリニック(東京都多摩市)名誉院長の市村恵一さん(耳鼻咽喉科)に聞きました。

発症メカニズムが明らかでない「指定難病」

Q.「若年発症型両側性感音難聴」とは、どんな病気ですか。

市村さん「『若年発症型両側性感音難聴』は40歳未満で発症し、両耳とも次第に進行する難聴が主な症状の病気です。

難聴には、音を伝える部分が障害される『伝音難聴』(鼓膜に穴が開いている、耳あかで詰まるなど)と、音を感じ取る部分が障害される『感音難聴』がありますが、感音難聴のうち、原因不明のものの中で両側性に難聴が進行する病気を『特発性両側性感音難聴』といいます。さらに、こうした病態の中で、40歳未満で発症し、原因遺伝子が見つけられ(ただし、発症メカニズムは不明)、かつ、その他の原因(騒音、外傷、薬剤、急性ウイルス感染など)が否定されるものを『若年発症型両側性感音難聴』といいます。

原因となる遺伝子は現在11種が分かっていますが、今後増える可能性があります。また、各遺伝子変異が原因となる難聴者の割合は、老人性難聴を除く難聴者全体の0.14〜1.9%であることが明らかとなっています。目まいや耳鳴りなどを合併する例も多く、生活の質を低下させ、社会生活や日常生活に大きな支障を来します。そのため、『指定難病304』として難病に指定されています」

Q.この病気を発症する(しやすい)人の特徴はあるのでしょうか。

市村さん「遺伝子が関与する病気なので、遺伝することがあります。関係する遺伝子により、両親のどちらかが難聴である場合、子どもも難聴を発症することもありますし、両親が難聴でなくても、子どもが難聴を発症することもあります。遺伝子の型により、発症年齢はさまざまです」

Q.病気の進行スピードはどのくらいなのでしょうか。

市村さん「一般的には軽度難聴から発症し、その後、徐々に進行していきます。発症時期、聴力のタイプや程度、進行の速さは原因遺伝子により異なります。また、『両側重度難聴』や『ろう』となってしまう例もあります。遺伝子が関与することは明らかなものの、発症のメカニズムに関しては必ずしも明らかになっていないのが現状です」

Q.どのような治療が行われるのですか。

市村さん「先述した通り、難聴が進行すると日常生活や社会生活に大きな支障を来すため、治療が必要ですが、有効な治療法は確立されていません。現在は聴力に応じて、補聴器や人工内耳を用い、聴力を補う治療が対症療法的に行われています。急速に進行した場合には、突然聞こえが悪くなる『急性感音難聴』(突発性難聴など)と同様に、血管拡張薬やビタミン製剤、副腎皮質ステロイドが用いられるものの、その効果は明確ではありません」

Q.発症を防ぐことは可能なのでしょうか。

市村さん「現段階では、発症を防ぐことはできません。ただし、親がこの病気の場合、子どもの遺伝子検査をして発症の可能性を知ることはできます」

Q.ドラマで取り上げられたことで、「若年発症型両側性感音難聴」に関心を寄せる人が増えてきているようです。

市村さん「難聴を患っている人に対しては、大きな声を出すよりも、しっかりと顔を向け、ゆっくり、ゆったりとした話し方をしてあげましょう。

『若年発症型両側性感音難聴』は現段階では発症を防ぐことができませんが、難聴の中には予防し得るものもあります。スマホで音楽を聞く際、大きな音量で長時間聞くことは難聴の危険因子なので制限しましょう。『難聴が徐々に進行している』と感じた場合、早めに耳鼻咽喉科を受診し、聴力検査を受けることが重要です」