ビタミンは体に必要な栄養素といわれていますが、「ビタミンA」「ビタミンC」「ビタミンD」など種類が多いため、実際にどのような働きがあるのか分かりにくいと感じる人は多いのではないでしょうか。

 ビタミンにはどのような働きがあるのでしょうか。ビタミンが不足すると、体にどのような影響を与えるのでしょうか。みずほ台サンクリニック(埼玉県富士見市)理事長の石橋彩里医師に聞きました。

不足すると、疲労や貧血の原因に

Q.そもそも、体に必要なビタミンの種類について、教えてください。

石橋さん「体に必要なビタミンは、『脂溶性ビタミン』と『水溶性ビタミン』に分けられます。分類は以下の通りです」

■脂溶性ビタミン
ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK。

■水溶性ビタミン
ビタミンB群(1、2、6、12)、ビタミンC、葉酸、ナイアシン、ビオチン、パントテン酸。

Q.では、ビタミンにはどのような働きがあるのでしょうか。ビタミンが多く含まれる食品や、ビタミンが不足した場合の体への影響も含めて、教えてください。

石橋さん「ビタミンが不足すると、体にさまざまな悪影響を及ぼします。ビタミンの主な働きやビタミンが多く含まれる食品、不足したときに体に及ぼす影響は以下の通りです」

■ビタミンA
目の細胞や皮膚、粘膜を健康的に維持するのに欠かせない栄養素です。不足すると皮膚や粘膜の乾燥のほか、免疫機能が低下し、乳幼児の場合は失明する可能性もあります。主にウナギやレバーに多く含まれています。

■ビタミンB1
糖質の代謝に欠かせない栄養素です。不足すると脳や神経に影響し、疲労の症状が出るようになります。主に豚肉や大豆に多く含まれています。

■ビタミンB2、ビタミンB6
ビタミンB2は脂質の代謝を促すのに必要な栄養素です。また、ビタミンB6はたんぱく質を構成するアミノ酸の代謝に欠かせない栄養素です。これらの栄養素が不足すると、口腔(こうくう)内や皮膚に炎症が起こるリスクが高まります。ビタミンB2はレバーや魚介類といった食品に、ビタミンB6は肉類やニンニクなどの食品にそれぞれ多く含まれています。

■ビタミンB12
アミノ酸や葉酸などの代謝に欠かせない栄養素です。不足すると息切れや疲労、貧血といった症状が生じるようになります。主にサンマやアサリに多く含まれています。

■ビタミンC
皮膚などを構成するコラーゲンの合成に欠かせない栄養素で、皮膚や粘膜の維持に役立つだけでなく、ストレスへの抵抗力を高めたり、鉄の吸収をよくしたりする働きもあります。不足すると、疲労や倦怠(けんたい)感が出るようになるほか、皮下や歯茎からの出血、筋肉減少、呼吸困難といった症状が生じるようになります。主にミカンやレモンなどのかんきつ類に多く含まれています。

■ビタミンD
骨を形成するのに重要な栄養素です。不足すると骨折のリスクが上昇するほか、関節痛などの症状が生じるようになります。サンマやマグロ、カツオなどに多く含まれています。

■ビタミンK
血液を凝固させる働きがある栄養素です。不足すると、けがをしたときに血液が固まるのに時間がかかりやすくなります。主にブロッコリーや納豆に多く含まれています。

■ナイアシン
エネルギー産生のほか、糖質や脂質、たんぱく質の代謝など、さまざまな機能がある栄養素です。不足すると、下痢や皮膚炎などの症状が生じるようになります。主にレバーなどの肉類に多く含まれています。

■葉酸
ビタミン12とともに赤血球を作る働きがある栄養素です。不足すると貧血や疲労といった症状が生じるほか、妊娠中の女性の場合、胎児の成長に影響します。主にレバーや緑黄色野菜に多く含まれています。

■パントテン酸
主にエネルギー代謝に欠かせない栄養素です。不足すると、不眠や消化管の機能不全といった症状が出るほか、体の成長が止まるようになります。主に豆類や牛乳に多く含まれています。

■ビオチン
糖やアミノ酸、脂質などのエネルギー代謝に関わっている栄養素です。不足すると脱毛や食欲不振、けいれんなどの症状が生じるようになります。主にレバーなどの肉類や卵黄に多く含まれています。

Q.ビタミンは普段の食生活で不足しがちな栄養素なのでしょうか。

石橋さん「現代は食生活が豊かなので極端に不足することはありませんが、偏った食生活や不摂生な生活習慣、無理なダイエットにより不足する可能性があります。

また、ビタミンCのように人間の体内で作ることができないビタミンもあります。その場合、食事だけでなく、サプリや点滴などで摂取する必要があります」

ビタミンをどうやって摂取する?

Q.ビタミンは、どのような方法で摂取すればよいのでしょうか。食品の望ましい調理方法や摂取方法について、教えてください。

石橋さん「脂溶性ビタミン、水溶性ビタミンといったように、ビタミンの種類によって適切な調理方法や摂取方法に違いがあります。

水溶性ビタミンは、文字通り水溶性なので、加熱した際に出る水分や煮汁にビタミンが含まれます。そのため、スープにするとビタミンを効率的に摂取できます。

また野菜に含まれるビタミンですが、ブロッコリーやキャベツのように生で食べるより蒸した方が効率的に摂取できるケース、カリフラワーやアボカドのように生で食べた方が効率よく摂取できるケースがあり、種類によって適切な摂取方法が異なります。

一方、脂溶性ビタミンは、油でコーティングしたり、片栗粉でとろみを付けたりした上で調理すると、栄養の吸収率が上がります」

Q.ビタミンを摂取し過ぎると、どうなるのでしょうか。体に悪影響を及ぼす可能性はありますか。

石橋さん「水溶性ビタミンは、過剰摂取しても尿として体外に排出されますが、脂溶性ビタミンは吸収されやすく尿で排出できないため、過剰摂取すると悪影響を及ぼすことがあります。

ビタミンAを過剰摂取すると、食欲不振や吐き気、脱毛などの症状が生じます。また、ビタミンDの過剰摂取は、血中カルシウム濃度の上昇により、腎臓や血管にカルシウムの沈着が起こります。その場合、腎機能障害などの症状が生じる可能性があります」