人間は感情の生き物だといわれます。好ましくない感情に支配されて、人間関係を壊したという経験がある人は多いと思います。では最も好ましくない感情とは何だと思いますか? それは「ねたみ」であると断言しましょう。あなたが豊かな人生を歩みたいなら、ねたみの感情を理解して、どのような影響を及ぼすのか理解しなければなりません。

 今回紹介する1冊は、「新訳 お金と引き寄せの法則 豊かさ、健康と幸せを引き寄せる」(エスター・ヒックス、ジェリー・ヒックス著、本田健 訳/SBクリエイティブ)です。「お金の引き寄せ本」として支持され続けている1冊が、ベストセラー作家の本田健さんによる新訳でよみがえりました。

成功しないのは自分の責任

 成功のために考えられること、やるべきことも精いっぱい頑張ったのに成功できなければ、自己防衛の感情を感じやすくなります。自分が望む成功を手にしている他人を見たら、怒りすら感じてくるかもしれません。時には、自分ができなかった成功を手にした人たちを見るのがつらくて、彼らを非難してしまうでしょう。こうした状況について、本田さんは著書で次のように解説します。

「『欲しくてたまらない経済的な成功』をあからさまに非難すると、それが手に入らないばかりか、健康と幸せという天賦の権利を放棄することにもなります。『世界のどこかで誰かが陰謀のような形で、グルになって自分の成功を阻んでいる』という間違った考えを持つ人もたくさんいます」(本田さん)

「今まで一生懸命やってきたのに成功できないのは、悪い勢力が搾取しているからに違いないと信じてしまうのです。でも、確信をもって言いたいのは、あなたの望むものが今ないことも経験したくないことに関しても、問題の核心はそんなところにはありません。誰もあなたの成功を妨げたこともなければ、誰かがあなたを成功させてくれることもないのです」(同)

 つまり、本田さんは、あなたの成功は、すべてあなた次第だと言います。あなたがすべての主導権を握っているのだと。

 また、本田さんは、「人生が思うようにいかないとき、ほとんどの人は、自分以外の何かが邪魔しているせいだ、と勝手に思い込むようになります。『わざわざ自分で成功を遠ざける人なんていない』と考えるからです。望まない状況を何かのせいにしたほうが、気分がましになるかもしれません。うまくいかないことを自分以外の何かのせいにすると大きな跳ね返りがあります」と、うまくいかないときに人が陥りがちな心理状態について解説します。

 その上で、「自分の成功を誰かに委ねたり、成功できないことを何かのせいにしたりすると、『自分で変化を起こす力を失ってしまう』のです。この強烈な違和感は『望むものが手に入っていない』という意識を刺激して、自分よりも成功している人々への嫉妬、成功を邪魔していると見なした人々への憤り、自己批判という最も心が痛む、非生産的な思いを生み出すのです」と、他人への嫉妬がデメリットでしかない点を強調しています。

ねたみの原因は?

 自分にないものを他人が持っているとき、自分が取り残されてしまうとき、欲しいと思っていたものが手に入らなかったとき、人は猛烈に「怒り」「悲しみ」「不安」を感じることがあります。これらの感情のことを「ねたみ」と言います。

 心理学研究が進んでいる米国では、多くの研究が発表されています。EQ(感情能力)理論の提唱者でもある、第23代イエール大学学長のピーター・サロベイ博士らが中心となって発表した「The Psychology of Jealousy and Envy」によると、ねたみは主に「怒り」「悲しみ」「不安」の感情から成立するとされています。

 人はねたみを覚えると他人を邪魔したくなりますが、これは自分の身を滅ぼしかねない感情であることを理解しなければなりません。ねたみを抱いたところで、状況が改善することはないからです。

 分かりやすいケースに置き換えてみます。米国大手企業「アマゾン」創業者のジェフ・ベゾス氏、投資家のウォーレン・バフェット氏らは世界有数の大富豪ですが、彼らをねたむ人は少ないと思います。あまりにも自分からかけ離れた存在だと、ねたみの感情は湧きません。

 しかし、社内の人事など身近な出来事にはねたみを感じるものです。特に昇進・昇格はねたみの対象になります。「無能なゴマすり野郎が」「あんなヤツが出世したら会社がダメになる」など、社内の人へのねたみはとどまることを知りません。

 ねたみのマイナス面に気付いた人は、その場から離れていくでしょう。人の成功をねたんでばかりいると、自分自身に行動を注げなくなります。ねたみはポジティブな感情ではありません。ねたむ感情が増大すると、人の不幸を強く願うようになっていきます。不幸が降りかかるように、失敗するように願うようになります。

ねたみの連鎖に巻き込まれない

 本田さんの著書の内容を基に、ねたみの仕組みを解説します。今、あなたは仕事で成功を収めて充実した日々を送り、家庭も満ち足りた状態だと仮定します。その場合、恐らく他人をねたむことなど考えもしないはずです。ところが、日々の生活が満ち足りていない人は、他人に対するねたみの感情を抑えることができません。

 そして、より強い満足感を得られるように刺激の強いものを求めて、ねたみの量が増えていきます。この連鎖に気付かないと、頭の中は「ネガティブ思考」に染まっていきます。しかし、ねたみの感情は、自分を傷つけていきます。ブーメランのごとく跳ね返り、負の感情を蓄積して自分をむしばむようになります。

 この仕組みを理解しない限り、行動を改めることはできません。「ねたみは不幸を引き寄せる」ことを頭の片隅に入れておきたいものです。