調理中に包丁やスライサーを使っているときに、指を切ってしまったことはありませんか。特にスライサーで指を切ると傷が深くなるため、止血しにくいといわれています。包丁やスライサーで指を切った場合、出血を止めるにはどうすればよいのでしょうか。間違った方法で止血すると、どのようなリスクがあるのでしょうか。

 正しい応急処置について、なか整形外科 京都西院リハビリテーションクリニック(京都市右京区)院長で整形外科医の樋口直彦さんに聞きました。

指の付け根を圧迫すると出血止まらず

Q.包丁やスライサーで指を切った場合の応急処置の手順について、教えてください。スライサーで指を切ると、止血しにくいといわれていますが、本当なのでしょうか。

樋口さん「包丁やスライサーで指を切った場合は、まず水道水で傷口を十分に洗い流した後、清潔なガーゼや布で傷口を圧迫して出血を止めてください。このように、傷口を直接圧迫して出血を止める方法を『直接圧迫止血法』といいます。

スライサーで指を切ると傷が深くなり、止血が難しいケースがありますが、それでもまずは直接圧迫止血法を行うことが重要です」

Q.指を切ったときに傷口に消毒液を付けても問題はないのでしょうか。

樋口さん「消毒薬により、傷を治す細胞もやっつけてしまうと考えられているため、現在、消毒薬の使用は推奨されていません。消毒液を使っても傷は問題なく治りますが、消毒薬を傷口にちょんちょんと付けるだけよりも、水でしっかり洗い流す方が傷の治癒に効果があります」

Q.指を切ったときにやってはいけない行為はあるのでしょうか。例えば、止血後にばんそうこうを使っても問題はないのでしょうか。

樋口さん「間違った止血方法として、指の傷口に直接、圧力をかける代わりに指の付け根を強く縛ったり、傷口以外の部位を圧迫したりすることが挙げられます。

『指を切った後、指の付け根を輪ゴムなどできつく締めたにもかかわらず、血が止まらない』という理由で当院を受診する患者さんが多いのですが、この場合、うっ血してしまい、かえって血が止まらないのです。この方法でどうしても処置したい場合は、指がちぎれるくらいの痛さで付け根を縛らないと血が止まりません。止血には、先述の直接圧迫止血法が有効です。

止血後であれば、ばんそうこうを直接、傷口部分に貼っても問題ありませんが、傷口を乾かしてしまうと、傷の治りが遅くなります。そこで、傷口を乾かさないためには、ポリウレタン性の被覆材の使用をお勧めします」

Q.指を切ったときに適切な応急処置をしなかった場合、どのようなリスクが想定されますか。医療機関を受診する目安はありますか。

樋口さん「適切な処置をしなかった場合、感染症のリスクが高まるほか、傷口がうまく癒合しない可能性があります。直接圧迫止血法でも指の出血がなかなか止まらない場合や明らかに傷が深い場合は、すぐに医療機関を受診することが重要です」

Q.指の止血後、数日は料理や洗濯など、手を使う作業を控えた方がよいのでしょうか。

樋口さん「指を切ってからの回復期間は個人差がありますが、傷口が完全に癒合するまでは手を使う作業を控えることが重要です」