東京都の小池百合子知事の任期満了に伴う都知事選が6月20日、告示されました。立候補者数は56人に上り、過去最多だった2020年の22人を大きく上回りました。投票日は7月7日です。

 ところで、選挙の際は候補者を紹介するチラシが配られます。学歴や職歴などの経歴が詳しく書かれていることが多いのですが、中には経歴詐称の疑惑を指摘される候補者がいて、問題となることがあります。

 例えば、大学中退なのに卒業と公表したり、入学していない大学を卒業したと公表したりした場合、どのような法的問題を問われる可能性があるのでしょうか。当選後に学歴詐称が発覚した場合はどうなるのでしょうか。芝綜合法律事務所の牧野和夫弁護士が解説します。

「虚偽事項公表罪」に該当する可能性

 選挙の際に候補者が、大学中退なのに大学卒業と公表したり、入学していない大学を卒業と公表したりするなど、学歴を偽って公表した場合、公職選挙法235条の「虚偽事項公表罪」に当たる可能性があります。

 同法235条には、「当選を得または得させる目的をもって公職の候補者もしくは公職の候補者となろうとする者の身分、職業もしくは経歴(中略)に関し虚偽の事項を公にした者は、2年以下の禁錮または30万円以下の罰金に処する」と記載されています。

 この条文にある「公職」とは「衆議院議員」「参議院議員」「地方公共団体の議会の議員」「地方公共団体の長(=都道府県知事・市町村長・東京23区の区長)」のことです(公職選挙法3条)。虚偽事項公表罪で禁錮刑か罰金刑が確定した場合、その選挙で当選していても当選は無効となり、議員や知事、市長などの職を失います。

 ただし、虚偽事項公表罪の成立には「当選を得または得させる目的をもって」虚偽事項を公表することが必要です。

 一方、「当選を得させない目的をもって」虚偽事項を公表した場合は、4年以下の懲役もしくは禁錮または100万円以下の罰金(公職選挙法235条2項)という、もっと厳しい罰則を科される可能性があります。これは、相手候補を落選させる目的で虚偽事項を公表することなどを想定しています。

 もし議員や知事になってしばらくしてから詐称が発覚した場合、公訴時効(虚偽事項公表罪の場合は3年)が経過していない場合は、先述の公職選挙法235条の虚偽事項公表罪に当たり、起訴される可能性があります。他方で、候補者が今回立候補するにあたって、学歴や職歴などで虚偽と疑われる記載を公表しなければ、虚偽事項公表罪が成立する可能性はなくなるでしょう。

 さらに、役所に提出するために卒業証明書などを偽造していれば、公文書偽造(公訴時効は7年)や私文書偽造(公訴時効は5年)に当たり、起訴される可能性があるのです。

 なお、学歴を偽った候補者に投票した有権者が「だまされて投票してしまった。詐欺だ」などと主張しても、詐欺罪は成立しません。刑法246条1項には「人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する」とありますが、「学歴を偽った候補者に投票した」場合は「人を欺いて財物を交付させた」とはいえないからです。