芸能人がSNSで「円形脱毛症になった」とカミングアウトし、ネットニュースで話題になることがあります。円形脱毛症は、脱毛症の代表的な症状の一つで他人事ではありませんが、不思議なのは、ほぼ“真ん丸”に、きれいに髪が抜ける症例があることです。なぜ、髪が真ん丸に抜けるのでしょうか。美容皮膚科・形成外科のアヴェニュー表参道クリニック・佐藤卓士医師に聞きました。

免疫細胞が毛根を攻撃して発症

Q.円形脱毛症では、なぜ真ん丸に、きれいに髪が抜けるのでしょうか。

佐藤さん「円形脱毛症とは、異物から体を守る免疫細胞が自分の毛根を異物とみなし、攻撃することで発症する病気です。毛根が攻撃を受けると炎症が起こり、その部分の毛が抜けます。そして、攻撃を受けた毛根の周囲にも炎症が広がり、さらに周囲の毛が抜けます。

その際、攻撃を受けた毛根を中心として同心円状に炎症が広がるため、円形に脱毛します。全てが真ん丸に脱毛しているわけではなく、楕円(だえん)形や地図状にいびつに広がっていたり、複数の脱毛部が重なって蛇行状になったりとさまざまです」

Q.ある日突然、髪が円形に抜けるのですか。

佐藤さん「突然、円形に全部の毛が抜けるのではなく、少しずつ毛が抜けていって範囲が広がり、ある程度円形に広がった状態になって初めて円形脱毛症に気付きます。円形脱毛症には、1カ所だけの『単発型』、2カ所以上同時にできる『多発型』、数カ所の脱毛部が重なって蛇行状に伸びる『蛇行型』、頭髪全体が抜けてしまう『全頭脱毛症』、頭髪のみでなく全身の毛が抜ける『汎発性脱毛症』があります」

Q.円形脱毛症になる原因として、よく精神的ストレスが挙げられますが、ネット上には「遺伝が関係するのでは」という声もあります。原因は何なのでしょうか。

佐藤さん「なぜ毛根組織の免疫機能に異常が生じるかは分かっていません。海外の研究で、円形脱毛症は患者の家族内発症が多く、患者との関係が近いほど発症率が高いというデータがあり、遺伝的要素はあるとされています。

また、病気に関係する遺伝子も複数報告されており、円形脱毛症を発症しやすい『遺伝子多型』(遺伝子のバリエーション)が存在するといわれています。免疫に関係する遺伝子多型を背景にして、疲労や感染症などの肉体的・精神的ストレスが引き金になるとされています。つまり、精神的ストレスは原因ではなく、誘因の一つであると思われます。ただし、実際には、精神的ストレスの誘因がなくても発症するケースは多く、医学的に証明されていないのが現状です」

Q.脱毛症には、円形脱毛症の他にもいくつか種類があると思います。円形脱毛症になる場合と他の脱毛症になる場合で、原因にはどのような違いがあるのでしょうか。

佐藤さん「円形脱毛症のほかに、男性型脱毛症や、全体的に髪の密度が低くなる『びまん性脱毛症』、頭皮の皮脂が多いためにできる『脂漏性脱毛』、フケが多い『粃糠(ひこう)性脱毛』、髪の毛を引っ張るヘアスタイルで生じる『牽引(けんいん)性脱毛』、出産後の『分娩後脱毛』などがあります。

円形脱毛症が通常、部分的にできるのに対し、それ以外の脱毛症は抜けやすい箇所はあるものの頭髪部全体で毛髪の量が減ってきます。男性型脱毛症やびまん性脱毛症は加齢性変化が主ですが、肉体的・精神的ストレスが持続することで抜け毛が増えたり、寝不足や偏った食事などで進行していきます」

Q.円形脱毛症を予防する方法はあるのでしょうか。

佐藤さん「円形脱毛症は免疫異常から発症する病気で、遺伝的要素もあるといわれていますが、なぜ発症するかは分かっていません。ただし、精神的ストレスが誘因となって発症する可能性があるので、過剰なストレスのない生活をすることが大切です。アトピー性皮膚炎の人や、家族が円形脱毛症で悩んだことのある人は、円形脱毛症にかかるリスクが通常よりも高いため、日頃から注意し、症状があったら早めに皮膚科を受診して治療を受けるとよいでしょう。

また、ストレスや不規則な生活、偏った食事などで抜け毛が増えることがあります。脱毛症が進行しないように生活習慣を見直すことも大事です。抜け毛が増えて薄毛が気になる場合も皮膚科受診をお勧めします」