政府は新型コロナウイルスの新規感染者数が増加している東京、大阪、京都、兵庫の4都府県を対象に3度目の緊急事態宣言を発令する方針を固めました。そんな中、「マスクを着けずにピクニックを楽しもう」とうたうイベント「全国同時ノーマスクピクニックデー」を5月1日、2日に地方自治体管理の公園を中心にした全国17カ所で開催すると何者かがネット上で告知し、批判が殺到しました。結局、主催者とみられる人物がイベント中止を告知しましたが、昨年は東京・渋谷の公共の広場で「ノーマスク集会」が開催された事例もあります。

 もし、「ノーマスクピクニック」のような、新型コロナウイルスの感染拡大の危険性が高い集会やイベントを不特定多数の人が利用する公共の場所で実施した場合、主催者側は法的責任を問われるのでしょうか。芝綜合法律事務所の牧野和夫弁護士に聞きました。

無許可開催がそもそも問題

Q.そもそも、地方自治体管理の公園や広場、歩行者天国などの公共の場所で集会やイベントを行う場合、事前に自治体や警察に届ける、もしくは許可を得る必要があるのでしょうか。無届けや無許可で集会やイベントを行った場合、主催者側は法的責任を問われるのでしょうか。

牧野さん「東京都の『集会、集団行進および集団示威運動に関する条例』1条では『道路その他公共の場所で集会もしくは集団行進を行おうとするとき、または場所のいかんを問わず集団示威運動を行おうとするときは、東京都公安委員会の許可を受けなければならない』とされています。無許可で集会やイベントを行った場合、主催者側は1年以下の懲役、もしくは禁錮または30万円以下の罰金に処される可能性があります(5条)。

新型コロナ流行下での、集会を含むイベント開催はさらに厳しく規制されています。例えば、4月12日から、まん延防止等重点措置の対象地域となった東京都では都から事業者に対し、催し物の開催制限(人数上限・収容率など)などの要請が出されています」

Q.「ノーマスクピクニック」は中止が決まりましたが、昨年は渋谷の公共の広場で「ノーマスク集会」が開催された事例もあります。もし、このような、新型コロナウイルスの感染拡大の危険性が高い集会やイベントが無届け、無許可で実施された場合、自治体や警察が集会やイベントを強制的にやめさせることはできるのでしょうか。

牧野さん「先述の東京都の『集会、集団行進および集団示威運動に関する条例』4条では『警視総監は、(条例に反して、無許可で行われた集会の参加者に対して)公共の秩序を保持するため、警告を発しその行為を制止しその他その違反行為を是正するにつき必要な限度において所要の措置をとることができる』と定められています。『強制的にやめさせることができる』とまでは明記していませんが、罰則付きで中止を命令できるのではないかと思います」

Q.新型コロナ流行下で「ノーマスク集会」のような、感染拡大の危険性が高い集会やイベントを公園などの公共の場所で実施した場合、主催者側が感染拡大に関する部分や公衆衛生に関する部分で法的責任を問われる可能性はありますか。

牧野さん「イベントの主催者には、イベント参加者の健康や安全に配慮してイベントを実施すべき『安全配慮義務』があります。例えば、換気を十分したり、発熱した参加者の入場を拒否したりするなど主催者側の十分な感染予防措置を取らなければ、イベント参加者が感染した場合、参加者から、安全配慮義務を怠ったとして損害賠償を請求される可能性があります。ただし、感染した参加者は『イベントに参加したために感染した』という因果関係を証明しなければなりません」

Q.では、感染拡大の危険性が高い集会やイベントを開催後、参加者だけでなく、会場付近の通行人や会場周辺の住民の感染も判明した場合はどうでしょうか。主催者側に賠償責任が生じる可能性はありますか。

牧野さん「民法709条の『不法行為による損害賠償責任』が発生する可能性がありますが、先述した集会やイベントの参加者のケースと同様、主催者の『安全配慮義務』違反や過失(十分な感染防止措置を講じなかった)と発生した損害(感染)との間の因果関係を証明する必要があります。

ただ、新型コロナウイルスは流行がまた拡大しており、感染経路が不明なケースが増えているのが現状です。感染対策をまったく行っていない、あるいは感染対策が不十分な集会やイベントが公共の場所で行われたとき、会場周辺に住んでいたり、会場付近を通り掛かったりして、その後、感染が判明した場合であっても、そのことだけで『集会やイベントが原因で感染した』と証明することは非常に難しいと思います」