「障害のある子は家族を照らす天使。この子が家族の絆になる」。そう伝えるテレビ番組はよく目にしますが、反対に「障害児がいて、家族にいさかいが絶えません」「子どもの障害が争いの原因」と放送される番組はあまり見たことがありません。

 実際、母親が子どもの発達障害を疑ったとき、夫から、「似たような子はたくさんいるじゃないか。個性の一つなんだから」と言われてしまい、家族間で見解の違いが起こるケースもあります。福祉とつながりたくても、療育を受けさせたくても家族に反対されてできず、悩んでいる人もいるのです。

専門家のアドバイスも検討を

 私が相談を受けた例です。

「夫やしゅうとめから、『ちゃんと、しつけをしていないのが原因。もっとしっかり、子育てをすべきだ』『(障害福祉サービス)受給者証や療育手帳を取るなんて…こんなに小さいうちから、『わが子に障害がある』と決め付けると伸びるものも伸びなくなる』と言われてしまいます。

(母親である)自分は子どもと接する時間が長いので、わが子の行動が単に性格や個性で片付けられるものではないことにうすうす、気が付いています。だから、相談機関や発達支援(療育)を利用したいです。でも、家族にどうしても納得してもらえません。家族と争う姿を子どもに見せたくないですし、日々のいさかいで自分の心が折れてしまいそうです」

 私はこう答えました。

「いったん、家族の説得は諦めて、お母さまだけで行動に移したらどうでしょう。子どものことだけで大変なのに、意見の相違で夫婦げんかが絶えず、疲弊して心労を患い、離婚に至ってしまうケースもあります。そうなるよりも、1人で行動を始めた方がよいと私は思います。

しゅうとめから反対される場合は特に、理解してもらうのは難しいでしょう。しゅうとめが子育てをしていた1970年代ごろまでは、子どもが自閉症になるのは『冷蔵庫マザー』(=愛情をかけない親)が育てたからだとまで言われていたこともあるからです。もし、相手が長年、そのように信じていたとしたら、今すぐ理解してもらうのはなかなか難しいのではないでしょうか。

受給者証を所持していることも、療育手帳を持っていることも戸籍や住民票に記載されることはありません。障害児の扶養による控除を申請しない限り、源泉徴収票にも記載されることはありません」

 療育に通っていることも、手帳や受給者証を取ったことも秘密にしておくことができます。しかし、進級先については、通常学級・特別支援学級・特別支援学校のどれを選択するのか、意見の相違があった場合は黙って行動するわけにはいきません。家族が入学式や授業参観に参加したら、分かってしまうからです。

 こんなときは、家族間だけで相談すると感情のぶつかり合いになってしまいます。第三者である専門家に入ってもらい、話し合いの場を設けましょう。各自治体には、発達障害児を育てる家族に専門的なアドバイスやサポートを行う支援センターが設置されています。専門家による意見であれば、納得できる人もいるからです。

受容できない人の心理

 ではなぜ、子どもの発達障害を受け入れられない親がいるのでしょうか。

 まず、知的障害が軽度だったり、知的障害がなかったりする場合は「うちの子に障害があるはずがない」と思ってしまうことがあります。また、親自身の人生において、障害のある人と接する機会が全くなく、「初めて出会った障害者がわが子だった」ということもあるでしょう。障害者のことがよく分からないために、親自身が「障害があることは不幸なことだ。周りにも知られたくない」と思っているケースもあります。

 そして、親自身が「人並みであること」「普通であること」を強いられて育ってきた場合、「わが子が社会の“枠”から外れてしまったら、どうしたらいいか分からない」と感じることもあると思います。このように、今までの価値観がガラガラと崩れていくことに耐え切れない人もいます。

 しかし、迷い、争っている間にも、子どもの人生は先へ先へと進んでいきます。後になって、子どもが不適応を起こしたとき、「あのとき、もっと向き合ってやればよかった」と悔やんでも時間の巻き戻しはできないのです。

 母親が1人で判断し、行動することにはためらいがあるかもしれません。しかし、将来、家族から、「あのときは反対したけれど、今思えば動いてくれてよかった」と感謝される日が来るかもしれません。子どもの幸せを第一に、最善の方法を考え、行動してほしいと思います。