新型コロナウイルスの緊急事態宣言が6月20日まで延長され、感染力が強いとされる変異ウイルスも広がる中、感染拡大防止策の一つとして、商業施設入り口などでの検温が日常的になり、「体温」に関心を持つ人が増えているようです。

 新型コロナの受診目安の一つとされていたのが、体温が「37.5度」以上の場合ですが、健康計測機器メーカーのタニタ(東京都板橋区)が実施した調査によると、体温が37.5度ある場合でも「学校や仕事を休もうと思わない」人が3割超に上ることが分かりました。施設入り口の検温を巡っても「検温器があるのに測定せずに入店する人を見たこと」がある人が4割を超えるなど“セレモニー化”してしまっている可能性も浮上しています。

 調査結果の一部を紹介するとともに、結果について医師に見解を聞きました。

「検温器スルーを見た」4割

 調査は「体温計に関する意識・実態調査2021」で、3月11〜15日、インターネットで実施。全国の15〜69歳の男女を対象に行われ、1000人が回答したとのことです。体温に関する意識・実態を知るため、体温をどのくらいの頻度で測っているか聞いたところ、「ほぼ毎日」が20.6%、「週に4〜5日」が11.5%いる一方、「月に1日以下」の人も39.1%いました。

「学校や仕事を休もうと思うのは何度以上のときか」聞いたところ、「37.5度」が30.0%と最も多く、「37.0度」が20.4%で続き、37.5度までが計63.5%を占めました。一方で、「37.6度〜38.0度以上」も計32.9%いました。つまり、「体温が37.5度あっても、学校や仕事を休もうと思わない」と答えた人が3割超いるということです。

 百貨店や公共施設への設置が増えた検温器(非接触式の体温計)についての質問では、「検温器があるのに測定せずに入店したことがある」は22.2%、「検温器があるのに測定せずに入店する人を見たことがある」は41.1%に上りました。

 また、多くの施設では「37.5度」などと基準を設定し、それを上回ると入店を断ることになっています。「入店お断りの体温で、入店を断られた」経験を持つ人が3.0%いるものの、「入店お断りの体温だったのに店員さんがお店に入れてくれた」経験のある人が2.8%、「入店お断りの体温だったときに、体温が低くなるまで店員さんが測ってくれた」(低くなるまで繰り返し測る、あるいは涼しい場所などで時間を置いてから測る)経験のある人も6.7%と、検温による感染対策を無駄にしかねない状況が存在することも分かりました。

 また、タニタによると、非接触式体温計を使う際は「前髪がおでこにかかっている状態」や「メークをしたままの状態」だと、人体から放射される赤外線の妨げになり、体温が低く出る可能性があるそうですが、調査回答者のうち、家庭に非接触的体温計がある人(95人)に聞いたところ、「前髪がおでこにかかっている状態で測定」したことのある人が62.1%、95人のうち女性44人に聞くと、「メークをしたままの状態」で測ったことがある人も54.5%と、正しい測り方が浸透していない現状が分かりました。

医師の見解は?

 調査結果に対する見解や正しい体温の測り方について、内科医の市原由美江さんに聞きました。

Q.調査では「体温が37.5度あっても、学校や仕事を休もうと思わない人が3割超」という結果が出ました。どのように思われますか。

市原さん「新型コロナウイルスがまん延している現状では、発熱があれば自宅で休み、必要に応じて、PCR検査を受けることが望ましいです。感染拡大防止のためにも、自分の体調管理のためにもまずは無理せず、学校や仕事を休むことがとても大切だと思います」

Q.新型コロナの流行前は「多少の熱があっても仕事に行く」という風潮もあったように思います。「発熱」について、コロナ禍で意識が変わったと感じますか。

市原さん「確かに新型コロナの前は『少し熱があっても、体調が悪くても仕事に行く』という風潮がありました。これは日本人の真面目な性格を表していると思います。しかし、現在は少しの熱や風邪症状があれば、会社を休むという人が増えてきていると思います。会社側や職場の仲間も体調不良で休むことへの抵抗が薄くなっていると感じます」

Q.新型コロナの受診目安について、かつては「37.5度以上4日間」とされていましたが、昨年5月8日に厚生労働省がその基準を削除しました。しかし、今でも「37.5度以上」が入店お断りなどの基準としてよく使われます。なぜでしょうか。

市原さん「平熱には個人差があり、発熱時もある程度の差があります。また、暑い環境にいた場合や女性で基礎体温が高温期であれば、発熱状態ではないのに、体温を測ってみると37度を超すことも珍しくありません。個人の事情や環境はさまざまで、一律の適正な基準はなかなか決められないたため、以前までの基準であった37.5度が区切りになっているのではないでしょうか」

Q.商業施設などの検温について、「検温器があるのに測定せずに入店する人を見た」という回答が4割、自分自身が検温せずに入店した経験のある人が2割という結果が出ました。検温が“セレモニー化”していないでしょうか。

市原さん「一部の人にとって、セレモニー化している可能性は確かに否定できません。しかし、外出先での検温も大切です。

例えば、毎朝自宅で体温を測る人が『発熱なし』と判断して外出したとしても、その日のうちに発熱しないとは限りません。発熱している自覚がないまま過ごすことも考えられるので、検温器があれば、積極的に利用することをおすすめします。体温だけで判断しても無症状感染者もいるので、感染拡大を完全に防ぐことはできませんが、検温によって発熱者に帰宅を促すことができれば、感染拡大の可能性を減らすことはできます」

Q.調査では、体温を「ほぼ毎日」測っている人が2割いる一方、「月に1日以下」の人も39.1%いました。

市原さん「新型コロナウイルスがまん延している現状では、毎日、体温を測ることはとても大切です。体温の変化があれば、少しの体調の変化に気付きやすくなります。毎日、検温して、もし37.5度以上あれば、積極的に休むことが大事です。微熱であっても風邪症状を少しでも伴っていれば、積極的に休みましょう」

Q.体温の正しい測り方を改めてお願いします。

市原さん「体温は脇の下で測るのがよいでしょう。汗をかいていると正確に測れないので、きれいにしてから、体温計を脇の奥まで当て、脇をしっかり締めて動かないように固定します。これは動くことによる摩擦熱の影響や、体温計がずれて測定部位が変わることによる温度変化を避けるためです。検温中に動くと正確に測れないことがあるので、安静にした状態で測りましょう。

普通の体温計であれば、数秒から数分で測れるものなどさまざまなので、それぞれに定められた時間まで待つことが基本です」

 なお、タニタによると、体温計は脇の下で測るタイプのほか、非接触(額)、耳式、口で測るものなどもあり、 それぞれに特徴があるので、測定する人の年齢や場面に合わせて使い分けてほしいとのことです。調査結果の詳細は、タニタホームぺージ(プレスリリース「体温計に関する意識・実態調査2021」)で見ることができます。