主に乳幼児が感染する「RSウイルス感染症」が全国的に流行しています。国立感染症研究所によると、全国およそ3000の医療機関の小児科で、6月28日から7月4日までの間にRSウイルス感染症と診断された患者は1万3024人に上り、大流行した一昨年の同時期と比べても、およそ13倍に該当します。感染するとせきや発熱など風邪に似た症状が出て、重症化するケースもあります。

 子どもがRSウイルス感染症になった場合、親はどのように対処すればいいのでしょうか。病院で診療を受ける目安などについて、内科医の市原由美江さんに聞きました。

基礎疾患のある子は要注意

Q.まず、RSウイルスの主な症状や注意点について教えてください。

市原さん「RSウイルスは風邪症状を起こすウイルスの一種で、鼻水やせき、咽頭痛、発熱などの症状を引き起こします。RSウイルス感染症は、軽症の場合は風邪で済みますが、重症化すると細気管支炎や肺炎、呼吸困難などの症状が出て、入院が必要になることもあります。ウイルスの潜伏期間は2〜8日とされています。

RSウイルス感染症は近年、7月ごろから流行が始まっており、感染者の飛沫(ひまつ)や、ウイルスが付着した手指や物に触れることで感染します。非常に感染力が強く、保育園や幼稚園などの施設内で感染が広がりやすいのが特徴です。1歳までに半数以上の子どもが、2歳までにほぼすべての子どもが一度は感染するとされています。再度感染することもありますが、症状は、一般的に初めてかかったときよりも軽いことが多いです。

ただし、早産児や生後6カ月未満の乳児、生まれつき、肺や心臓に病気のある子、ぜんそくなどの基礎疾患のある子が感染すると重症化しやすいといわれているので、注意が必要です」

Q.コロナ禍で消毒や手洗いを徹底している保育園や幼稚園は多いかと思いますが、それでも、今年は全国的に感染者が急増しています。なぜなのでしょうか。

市原さん「昨年はコロナ禍による感染対策や休園の影響で、多くの子どもがウイルスに感染する機会が減り、ウイルスに対する免疫を持たないまま成長した可能性があります。そのことが今年の大規模な流行につながったのではないでしょうか。

コロナ禍での消毒や手洗いによって、保育園や幼稚園での感染が拡大しにくいように見えますが、施設の方針で子どもにマスクをさせない保育園や幼稚園もありますし、特に乳児はマスクができません。そのため、子ども同士の感染を完全に予防することは困難です」

Q.子どもにRSウイルスと見られる症状が出た場合、すぐに病院に連れて行くべきなのでしょうか。それとも、病院で別の患者から病気をもらわないためにも、安易に病院に行くのは避けた方がよいのでしょうか。治療法も含めて、教えてください。

市原さん「『風邪のような症状がある』『熱が出ている』といった状態でも、本人に元気があり、食事や水分摂取ができているようであれば、急いで病院に行く必要はありません。しかし、コロナ禍なので、保育園や幼稚園の方針で小児科の受診が必要になることもあります。

また、先述のように、肺炎をきたすこともあるため、『高熱が続くとき』『息苦しそうなとき』『息をするときにヒューヒュー、ゼーゼーと音がするとき』『顔色が悪いとき』『元気がないとき』といった症状が見られる場合は、すぐに病院で診療を受けましょう。

なお、RSウイルスには治療薬やワクチンがなく、高熱が出れば解熱剤を、せきが出ればせき止めを服用するといった対症療法を行い、感染者本人の免疫力によって症状が改善するのを待つしかありません。そのため、RSウイルスの感染の有無を検査するかどうかは、医師が患者の症状の程度を見て判断すると思います。症状が比較的軽い場合、検査を行わない場合もあります。

なお、検査時は『1歳未満』『入院中』などの例外を除いて保険が適用されないため、検査費用は基本的に実費負担です」

Q.症状がよくなった段階で、すぐに保育園や幼稚園に行かせてもよいのでしょうか。登園可能な目安について教えてください。

市原さん「RSウイルス感染症には休むべき日数が決められていませんが、厚生労働省の感染症対策ガイドラインでは、呼吸器の症状がなくなり、全身の状態がよくなったときを登園の目安としています。ただし、熱が下がって、子どもが元気よく動けるようになっても、せきや鼻水といった症状が続いている状態で登園させると、他の子どもに感染させてしまう可能性もあります。登園するタイミングは事前に園とよく相談した方がよいでしょう」

Q.RSウイルスの感染を防ぐための対策について教えてください。大人も感染することがあるのでしょうか。

市原さん「先述のように、感染者の飛沫や、ウイルスが付着した手指や物を介して感染するので、手洗いやうがい、アルコール消毒の徹底が重要です。また、子どもの体調に異変を感じたら、無理をさせずにしっかり休ませましょう。大人もRSウイルスに感染することがあり、親から子どもへ感染する可能性もあるので、何らかの症状が出始めた段階でできるだけ、子どもと接触する機会を減らしてください」