10月1日、たばこ税の増税に伴って、多くのたばこが値上げされます。「これを機会に禁煙しよう」と思っている人も多いのではないでしょうか。禁煙すると、家計の面以上に体によい影響があるといわれ、「食べ物をおいしく感じるようになる」「疲れにくくなる」といった変化があるとされます。実際、禁煙の効果とは、どのようなものでしょうか。医師の市原由美江さんに聞きました。

目覚めよく、味覚も改善

Q.禁煙することで、食べ物をおいしく感じるようになるのは事実でしょうか。

市原さん「事実です。喫煙すると、ニコチンが脳の『ニコチン受容体』に結合し、ドーパミンが放出されることで快感を得ます。30分もするとニコチンが減ってくるため、イライラしたり、落ち着かなかったりと離脱症状が出現します。禁煙して、この離脱症状を乗り越えて48時間ほど経過すると、体内のニコチンが消失します。すると、徐々に味覚や嗅覚が改善し、胃腸の調子もよくなるため、食事をおいしく感じられるようになるのです」

Q.禁煙によって見られる「よい変化」とはどのようなものでしょうか。

市原さん「喫煙すると血管が収縮して、血圧の上昇や脈拍数の増加が起こりますが、吸い終わってからの時間経過とともに次のような変化が見られるようになります」

・20分後…血圧や脈拍数が正常化する
・8時間後…血中の一酸化炭素濃度が下がり、酸素濃度が上がる
・24時間後…心臓発作のリスクが低下する
・48時間後…体内のニコチンが消失し、2日目以降には味覚や嗅覚が改善する。この頃から、「食事をおいしく感じるようになる」「朝の目覚めがよくなる」「肌の調子がよくなる」といったよい変化を感じ始める
・2週間〜3カ月後…心臓や全身の血管の循環が改善される
・1〜9カ月後…せきや喘鳴(ぜんめい。呼吸をするときに、ヒューヒュー、ゼーゼーといった音がすること)が改善し、疲れにくくなる
・1年後…肺の機能が改善する
・2〜4年後…虚血性心疾患や脳梗塞のリスクが低下する
・5〜9年後…肺がんのリスクが低下する
・10〜15年後…喫煙による、さまざまな病気の可能性が非喫煙者と同じレベルになる

Q.逆に禁煙によって、「悪い変化」が見られるケースもあるのでしょうか。

市原さん「食事をおいしく感じるようになることで過食傾向になったり、間食が増えたりして、体重が増えることがあります。しかし、喫煙のさまざまなリスクに比べると体重増加によるリスクは軽度で、禁煙後の生活に慣れてきたら、自分で体重をコントロールできる可能性が高いので、体重増加を恐れて禁煙しないのはナンセンスです。

また、ニコチンは腸を刺激する働きがあるため、禁煙すると便秘傾向になることがありますが、これも喫煙よりリスクは軽微です」

Q.禁煙による体の変化・効果が特に出やすい人の特徴はありますか。

市原さん「喫煙年数が長いほど効果を感じやすいと言われていますが、はっきりとは分かっていません」

Q.その他、禁煙がもたらす体へのメリットはありますか。

市原さん「喫煙により起こる病気には、脳梗塞、狭心症、心筋梗塞、腹部大動脈瘤(りゅう)などの血管の病気、慢性閉塞(へいそく)性肺疾患(COPD)などの肺自体の病気、その他、さまざまながんもあります。具体的には、鼻腔(びくう)・副鼻腔がん、口腔(こうくう)・咽頭がん、喉頭がん、食道がん、肺がん、肝臓がん、膵臓(すいぞう)がん、ぼうこうがん、子宮頸(けい)がんです。2型糖尿病の発症率を上げることも分かっています。

禁煙すると、これらの病気にかかる可能性が喫煙者よりも減ることになります」