体のどこかを硬い物に強くぶつけたときは通常、痛みを感じます。しかし、ほとんどの人は肘をぶつけたとき、痛みよりも「しびれ」を感じることが多いのではないでしょうか。通常であれば、痛みを感じるのに、肘を強くぶつけたときはなぜ、痛みではなく、しびれを感じるのでしょうか。お茶の水セルクリニックの寺尾友宏院長(整形外科)に聞きました。

神経のまひが「しびれ」の正体

Q.そもそも、体のどこかを硬い物に強くぶつけたとき、痛みを感じるのはなぜでしょうか。

寺尾さん「体を硬い物にぶつけると、末梢(まっしょう)神経の先端にある『侵害受容器』で刺激を感知します。その刺激が痛みの信号として、神経線維を通り、脊髄へ伝わって脳に至り、ぶつけた部分に痛みが生じます」

Q.では、肘を強くぶつけたとき、なぜ、痛みではなく、しびれを感じるのでしょうか。

寺尾さん「肘の内側には『尺骨(しゃっこつ)神経』という神経が通っているのですが、この神経は皮膚のすぐ下の浅い部分にあり、肘の骨の内側にあるへこみの『尺骨神経溝』という部分を通っています。この溝は肘を曲げ伸ばしした際、神経があちらこちらに動いてしまわないように固定するためのものです。

尺骨神経が溝の中に固定されているため、肘を曲げた際に固定された部分で神経が曲がり、引っ張られてしまいます。その状態で神経を刺激すると、一時的なまひのような状態が起こります。そのまひを、しびれとして感じるのです」

Q.体の部位で、強くぶつけたときにしびれを感じるのは肘だけでしょうか。

寺尾さん「肘だけではありません。神経が皮膚のすぐ下の浅い部分にあれば、硬い物にぶつかるなどすると、しびれを感じる可能性があります。例えば、ケースとしては比較的少ないかもしれませんが、腕の肘以外の部分が硬い物にぶつかって、しびれが出ることもあります」

Q.長時間、正座をしたときに足がしびれる人がいますが、このしびれと肘をぶつけたときのしびれは性質に違いがあるのでしょうか。

寺尾さん「長時間、正座をしたときのしびれと、肘をぶつけたときのしびれはどちらも神経による症状ですが、正座のしびれは膝の下の部位で血管が圧迫され、血流が障害されたことで起きる神経のしびれです。一方、肘をぶつけたときのしびれは直接、外からの衝撃が加わったことによるしびれのため、しびれが起こるメカニズムが異なります」

Q.痛みを感じたときは鎮痛薬などで、自宅でも治療できますが、肘をぶつけてしびれを感じたときは、しばらくすると、しびれを感じなくなります。特に治療をしなくても大丈夫でしょうか。

寺尾さん「基本的には治療をする必要はありません。ただし、肘をぶつけた部分のしびれが数日間続く場合、神経に傷が入ってしまった可能性があります。医療機関を受診して、しびれの原因と状態を診察してもらい、ビタミンB12などの投与で治療を行う必要性がある場合もあります」