朝晩の気温が下がり、ようやく、秋らしい気候になりました。肌寒い季節になってくると、腰に痛みを感じたり、「ぎっくり腰」になったりするなど腰の不調を訴える人が増えるようです。ネット上でも「冬場の朝にぎっくり腰になったことがある」「秋冬は毎年、腰の調子がよくないです」「夏から秋への変わり目のときはいつも注意している」など季節の変化に合わせて、特に腰をいたわる意識を持つ人が少なくありません。

 気温が低下する秋冬の時期、ぎっくり腰のリスクが上がるというのは本当なのでしょうか。お茶の水セルクリニックの寺尾友宏院長(整形外科)に聞きました。

「急性腰痛症」、原因はさまざま

Q.そもそも、ぎっくり腰とは何でしょうか。

寺尾さん「体を動かしたときに急激な強い痛みが腰に生じ、その痛みがしばらく続くものがぎっくり腰で、正式には『急性腰痛症』といいます。原因はさまざまで、筋肉の痛みや『椎間関節』という背骨の関節に由来するものなどもありますが、椎間板に傷が入ることで生じるケースが多いと思います。

椎間板には『線維輪(せんいりん)』という硬い部分と『髄核(ずいかく)』という軟らかい部分とがあり、線維輪に傷が入ると強い痛みが出ます。動作によって髄核の圧が上がると、その影響で線維輪に亀裂が入り、強い痛みが生じるのです。外からは見えない傷が体内にできるイメージです。亀裂が入った瞬間、ぎっくり腰として痛みを感じる場合が多いです」

Q.夏から秋への変わり目、冬場など気温が低くなる時期にぎっくり腰を起こしやすくなるのは事実でしょうか。

寺尾さん「統計的なデータは不明ですが、寒くなってくると、ぎっくり腰が多くなるように思います。寒くなると筋肉も硬くなるため、背骨の動きが悪くなる可能性があります。そして、背骨の動きが悪くなると椎間板などにかかる負担も大きくなるため、ぎっくり腰になりやすいのではないでしょうか。

また、寒いために腰を屈(かが)めた姿勢になりがちだと、その結果として、椎間板の圧力が上がり、ぎっくり腰になることも考えられます」

Q.ぎっくり腰に限らず、「毎年、寒い時期になると腰の調子が悪くなる」という人もいるようですが、実際のところはどうでしょうか。

寺尾さん「寒くなると、腰も関節も調子が悪くなる人は実際に多いです。寒くなりきったときより、寒くなりつつあるタイミングの方が痛みが出やすいように感じます。寒いと痛みのセンサーも敏感になる傾向にあるため、痛みが強くなる可能性もあるでしょう。

また、多少の痛みがあっても、明るい気分のときはあまり気にならない面があります。一方で、寒い時期は気分が落ち込みやすくなり、気分が落ち込むと痛みを強く感じやすくなるため、『調子が悪い』と感じやすい側面もあると思います」

Q.ぎっくり腰を起こしてしまったときの注意点や対処法はありますか。医療機関を受診した方がよい目安も教えてください。

寺尾さん「初期は安静にするのがよいです。ただし、その時期は3日程度までで、それ以降は痛みが我慢できる範囲で動いていた方が早く治るといわれています。秋冬に限らず、痛みのない時期にストレッチ用のポールなどを使って、しっかりと背骨をストレッチしておくのがよいと思います。

ただし、腰痛に伴って、座骨神経痛やまひのような症状(足の指が動かしづらく、力が入りにくいなど)が出た場合は、すぐに医療機関を受診してください。神経にダメージが加わっている可能性があります。神経のダメージは深くなり過ぎると治らなくなってしまうことがあるため、早急に対処が必要です」

Q.ぎっくり腰は再発しやすいのですか。また実際、秋冬に再発する患者さんは多いのでしょうか。

寺尾さん「線維輪にできた傷が完全に修復できずに残ってしまうことがあり、そのような場合は傷が広がりやすいため、再発しやすいです。ぎっくり腰は体の使い方の影響で発症するため、猫背になっていたり、腹筋に力が入らない状態で立っていたりといった、姿勢に悪い癖がある人は再発しやすいでしょう。

また、長時間座ったままでいるのもよくありません。立っている姿勢よりも、座っている姿勢の方が背骨への負担が大きくなる傾向にあるため、長時間、同じ姿勢で座っていると腰への悪影響が生じやすくなります。基本的に、20分以上同じ姿勢でいると悪影響が大きいといわれているので、時々、姿勢を変えたり、伸びをしたりすることが大切です。

なお、秋冬に再発する人が実際に多いかどうかは不明ですが、寒さの影響で動作が悪くなった結果、繰り返し、症状が出てしまう可能性はあると思います」

Q.気温が低い時期、ぎっくり腰を起こさないために望まれる意識・行動とは。

寺尾さん「普段以上にストレッチを心掛けることです。基本的に体は動かしていた方が調子がよくなります。寒い季節になると活動レベルが下がりやすいため、普段以上に体をしっかり動かしていくのが望ましいでしょう。寒いからといって、部屋に閉じこもり過ぎるのはNGです」