全国農業協同組合中央会(JA全中)と東京農業大、株式会社共同通信社は10月14日、持続可能な食料生産の在り方を議論するオンラインシンポジウム「SDGs『国消国産の日』を契機に、持続可能な食料生産・暮らしやすい地域社会について考え、行動する」を都内で開いた。

 世界的に相次ぐ災害やコロナ禍で食料安全保障の重要性が高まる中、食品ロスの削減や昆虫食の普及に取り組む大学生の活動を紹介。若者に向け、食や農林水産業の現状を理解することや、持続可能な開発目標(SDGs)達成に向け行動する重要性を訴えた。

 JAグループは、国民が消費する食料はできるだけ輸入に頼らず、その国で生産するという「国消国産」を提唱している。JA全中の中家徹会長は、国連が制定した「世界食料デー」の10月16日を「国消国産の日」に制定したと宣言。「食料安保の向上へ情報発信を進める」と意欲を示した。

 特別ゲストして参加した「JAグループお米消費拡大アンバサダー」を務めるタレントの松村沙友理さんは、「日本の作物やお米の魅力を伝えられるように頑張りたい。国消国産の主役はお米です。全国の農家の皆さんが汗を流して作ったお米をもっと食べて、国消国産を実践しましょう」と呼び掛けた。

 この日のシンポジウムは、JA全中と東農大が結んでいる包括連携協定に基づいて開催した。江口文陽・同大学長は「国消国産の大応援団として、研究や生産振興をサポートする」と述べた。

食品ロスを知る、伝える

 リレートーク「動け!SDGsは行動だ!」では、ラインをつないで3大学の学生が登場。SDGs達成に向けた食・農の取り組みを発表した。

 近畿大の「食品ロス削減推進プロジェクト」は、農園を手伝った見返りとして出荷できない規格外野菜を提供してもらい、子ども食堂に届ける活動を行っている。国際学部国際学科3年の藤居舞さんは、「現状を知らないと自分たちが何をするべきかが分からないので、実際に農家に行って『規格外野菜』という食品ロスを見せてもらった」という。

 月1回程度、農作業にも携わっている。「農学部でないメンバーも多いので、食がどのようにできて、どのように私たちに届いているのかを学ぶことができて、活動にプラスの影響がたくさんある」とした。子ども食堂に提供した後も、コロナ前には一緒に調理するなど交流時間を持ち、「単に届けるのではなく、子どもたちや地域の人に規格外野菜を知ってもらい、そこから食品ロスについて知ってもらうことを工夫している」と話した。

 フードバンクや学生団体、企業と連携した活動も展開している。文芸学部文学科英語英米文化学科2年の三好なぎささんは、「私たちの団体に今何が必要なのか、この問題解決にはどの企業の協力が必要なのか」を考えながら活動を進めていると説明。自ら考える力とスピード感のある行動力で、関西一の食品ロス削減推進学生団体を目指す。

規格外野菜・加工後のカスを製品に

 九州産業大のプロジェクト型教育である「食品開発研究会」は、学部の知見を集めて、規格外野菜やバイプロ(加工後に廃棄されるカスなど)を使った製品化に取り組んでいる。

 「食べるネギ油」は、自治体のふるさと納税の返礼品にも出品した。九州産業大生命科学部生命科学科3年食品科学コースの奥野鈴奈さんは、加工工場に出荷できない野菜を扱うことについて、「規格外のねぎなので、大きさや水分の量が違う。加熱する時間を変えたり、一定の品質にしたりすることが難しかった」と困難さを明かした。

 現在は、果汁を絞った後のゆずの皮を使った「ゆずチョコスティック」を開発中だ。同学科3年同コースの川平悠莉さんは、「授業で習ったことを実際にやってみると、カビが生えてしまったりして、どこが原因になったのかを突き止めるのが大変だった。苦労したが、やはり座学だけでは分からないと実感した」と開発過程を振り返った。

 生産から加工、販売までを融合した食の「6次産業化」を意識したアクションも展開。開発した製品のパッケージを同大デザイン学科の学生がデザインし、道の駅で試食会を開催したり、百貨店での販売体験などに取り組んでいる。

「タンパク質クライシス」を解決する昆虫食

 東農大からは、地域環境学部生産環境工学科4年バイオロボティクス研究室の秋山大知さんが登壇した。「もともとロボットを専門とする大学にいて、農業をロボットで解決しようと思っていた。だが、東農大に入学してみて、農業問題はいっぱいあって、多種多様なアプローチで解決すべきだ」と気づき、学生ベンチャー企業「うつせみテクノ」を立ち上げたという。

 タンパク質の供給が需要に追いつかなくなる「タンパク質クライシス」を解決するために注目したのが、昆虫食。製品が市場に出始めているが、知らない人や抵抗を感じる人もまだまだ多い。味について、「えびなどの甲殻類や大豆に近いという人もいるが、実際にはコオロギはコオロギの味。食べて感じていただきたい」と話した。

 栄養価は、タンパク質に必須アミノ酸がバランス良く含まれているかどうかの指標である「アミノ酸スコア」で示す。「コオロギは70%程度がタンパク質だと言われている。食べるエサや生産環境、品種によって違うが、必須アミノ酸をすべて含むので『アミノ酸スコア』も非常に高い」と指摘。摂取効率については、「ステーキなら200グラム摂らなければならないが、コオロギは粉末化してパンやご飯に練り込め」て、日常的な摂取が可能だという。コオロギの粉末をかりんとうに練り込んだ「エナジースナック!かりんとうP-みたらし団子味-」など商品開発も進めている。

「自然のおかげ」

 パネルディスカッション「持続可能な食と農、地域を考える」には、上岡美保・東農大副学長、俳優の工藤阿須加さん、全国大学生活協同組合連合会の安井大幸・全国学生委員長の3人がパネラーとして参加。共同通信アグリラボの石井勇人所長がコーディネーターを務め、リレートークで紹介された大学生の取り組みも踏まえ、国消国産の意義や、国消国産を図ることがSDGs達成への貢献につながるとの認識について意見交換した。

 工藤さんは山梨県北杜市で有機農業を始めたことで、「僕らが農作物を育てているのではなく、自然のおかげでここでやらせてもらっていると感じている」と説明。大学生ら若者に向けては、「農業や食べ物について、疑問を持って深く考えてみてほしい」と訴えた。

 この日のシンポジウムは東京新聞、中日新聞、産経新聞社、西日本新聞社が後援した。